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手段と目的の「ふるさと納税」を考える。

今や8000億円市場というとても大きな規模となった「ふるさと納税」。
ものすごいもりあがりを経て、最近ふるさと納税に対しての違和感や問題点を提起する声が広がっている様に感じる。

ふるさと納税を受け付けているほとんどの自治体は、何らかのポータルサイトと契約をしている。自治体の公式ホームページで直接募集する場合と比べ、さまざまな自治体とその返礼品を一覧比較できるポータルサイトのほうが集客効果も高いためだ。
市場拡大に伴いポータルサイトの数は約20にまで増え、利用者の争奪戦は年々白熱。各サイトは、寄付額に対し自社グループの電子マネーやポイントで10%近い還元をしたり、サイト名だけを連呼するようなテレビCMを繰り返したりしている。
これが一般的な商品の販売ならば大きな問題はないだろう。しかし、ふるさと納税に関しては見過ごせない事情がある。ポイント還元やCMにかかるコストの実質的なツケは、サイトの運営会社だけでなく、自治体や寄付者本人以外の第三者に回ってくるからだ。

ふるさと納税の本来の趣旨は、豊かな都会の税収を財源の乏しい地方に振り向け、活動を応援するというものだ。都会の住民がそれに共鳴し、自分が受ける公共サービスを減らしてでも応援したいというなら、納得がいく。それなら選択基準は各地方の提示する使い道の中身のはずだが、現実には、返礼品の中身で選ばれる。

そういえば、自分は「ふるさと納税」を全くやったことがなくて、いまいち興味が持てず距離を取ってきた。「納税」と「控除になってお得」という僕の中では相反する2つの言葉が内在する事に違和感があったので、考えるのを辞めてしまっていたからだ。だから「ふるさと納税」を全く知らないというのが自分の現在地。

だけれども一方で、MOTION GALLERY では「ガバメント・クラウドファンディング」の提供をはじめていて、和歌山県、奈良県、広島県呉市など多くの自治体とご一緒させて頂いている。

最近とみに、多く聞かれることになった「ふるさと納税」の問題点や嫌煙される声に耳を傾けると、なにか「昔グルーポンってあったよなあ」という思いが去来する。それこそ「お得になる」「安い」を訴求ポイントにしてガンガン売りさばくという点や、その中で結局パイの奪い合いになって過当競争になってしまうところなどすごく似ているなあと思うのだが、一方で殆ど機能やフローなどが同じはずだが、「ガバメント・クラウドファンディング」では、「ふるさと納税」の問題点は見いだせない状況である。これは根本的に何が横たわっているのかに興味を持ち、今月の『MOTION GALLERY CROSSING』の特集テーマとして取り上げた。

「ふるさと納税」きほんの”き”

和歌山県のふるさと納税型クラウドファンディングをサポートしてきた小泉さん、ふるさと納税を利用したことのある武田さん、ふるさと納税未経験の長井さんという3人でお送りする特集の初回。まずは小泉さんにふるさと納税の仕組みについて解説いただきながら、その小泉さんが和歌山に移住し地域の場づくりを手がけ、そしてクラウドファンディングをサポートするようになった経緯を軸にトークは繰り広げられた。

政治参加としてのふるさと納税

MOTION GALLERYの特徴を「文学的な色合いがある。実用書と小説くらいの違いがある。」と表現する小泉さん。数多ある社会課題の中から自分の課題を見つけ、その解決のためにクラウドファンディングに挑むプレゼンターの物語に相乗りできるという「ふるさと納税型クラウドファンディング」の本質とMOTION GALLERYの特性をつく展開に一同も納得。また、自分の納税先を自分で決められるというその本来の仕組みから、商品購入のような形態の台頭で見失いがちだった意思表示としてのふるさと納税の意義に改めて気付かされるトークとなった。

どちらも楽しめる自分であること

大型ショッピングモールと地域の商店街との例に触れながら、新しさと古さそれぞれの面白さをバランスよく楽しめること、それを自分に許すこと、そして商店街が独自のECを立ち上げるなど、対立しない道があることを見出すトークに。
そこから、番組通してゲストにお聞きしている”お金”と”クリエイティビティ”の関係についてのトピックに移り、社会貢献と資金調達の両立について、クラウドファンディングにおける自己推薦と他己推薦や広義でのファシリテーションなど、志と”そろばん”について掘り下げた。

必要なものと不要なもの

今回のゲストには、小泉博史さん(株式会社ルーカル 代表)をお迎えした。和歌山県をメインフィールドにまちづくりに取り組んでいる小泉さんには、和歌山県のふるさと納税型クラウドファンディング(ガバメント・クラウドファンディング)をサポート頂いている。

知っているようで知らなかった「ふるさと納税」の仕組みと意図、そしてその小泉さんにサポートいただいている「ガバメント・クラウドファンディング」についてお話いただくのはまさに適任だと思ったのだけども、本当に改めて理解が深まる内容となったと思う。

いまでも「ふるさと納税」のポータルサイトを見てみると、核シェルター(なんと金額は数千万円!!)やタイニーハウスまでなんでもござれであり「ふるさと」はどこに行ったのか感が否めないけれども、お話を聞いて調べてみると、もともとの「ふるさと納税」のパーパスは、「自分が選んだふるさとに愛着をもって納税をし、その見返りにその土地ならではの特産品を受け取れる」という一つの投票行動の様なものであったと分かった。それを聞いてとっても良いじゃん!と
思ったし、一方でふと自分が思った「でも自分の生まれた地元でないところを選べるのも変なのでは?」という疑問に対しても、『MOTION GALLERY CROSSING』の配信後に、番組のBASIC会員「もしもし文化センター」のオンライン飲み会で色々話してみると、「住民票とか生まれとか関係なく、自分が仕事とか遊びに行くとかで、縁や愛着を感じた場所に自由意志で納税し、つながりを感じられることはとても良い体験である」という話しを聞いてそれもまた腹落ちした。

なんだ、とっても良いじゃん「ふるさと納税」!と思うように変化してしまったが、とはいえそのパーパスとかけ離れている現実もある。我々がやっているガバメントクラウドファンディングとほぼ同じ仕組みであるにも関わらず、

ふるさと納税:商品の魅力と(節税効果を含めた上での)価格訴求
ガバメントクラウドファンディング:背景にある物語(値段は安くない)

ということが大きな違いでもあり、こう整理してみると、後発でふるさと納税の仕組みを転用しつつクラウドファンディングのプロジェクトにアジャストして掲載しているガバメントクラウドファンディングの方が、本来思い描かれていた「ふるさと納税」のパーパスを実現しているのは不思議である。

最後にその理由を考えてみたのだけど、その理由は「常設」だからなのではないかと僕なりに考えた。商品とその価格を全面に訴求するというグルーポンの様な形になってしまっているのは、「常設型EC」の形を前提として運用する「ふるさと納税」では常に継続的に自分たちの自治体のページのユーザーを積み上げていかなくてはならないわけで、商品点数に制限もないとすれば、文脈よりも物量、共感よりも取扱高が指標になるのはやむを得ないと思う。クラウドファンディングの様にプロジェクト型であれば、そもそもオリジナルな挑戦が求められう分組成するハードルが高いので、売上高とか取扱高としてはふるさと納税ほどは伸びにくいけれども、それによって「やらなくてはいけないこと」が大きく変わってくるので、パーパスが実現できるのではないだろうか。

どうしてもIT業界にいるとテクノロジードリブンで考えるので、テクノロジー=実現されることの、の様な前提で考えるけれども、インターネットサービスで、殆ど同じ様なシステムや仕組みであっても、「常設型」なのか「プロジェクト型」なのかという、運用の規定によってUXが全く変わってくるというのはとても面白い示唆に感じた。


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大高健志@MOTION GALLERY
頂いたサポートは、積み立てた上で「これは社会をより面白い場所にしそう!」と感じたプロジェクトに理由付きでクラウドファンディングさせて頂くつもりです!