”急激<淡々”を選好するECB
10月利下げに含みを持たせた、というが、我々はECBが10月17日の会合にて、リスク管理上の理由から政策金利を25bp引き下げと見ている。なぜか。三つ指摘する。
第一に成長に対するリスクが顕在化していることである。ECBラガルド総裁は政策理事会の決定がデータポイントに依存しないことを明確にしているが、9月のPMIはGDPの前期比0.2%ポイント前後の縮小に相当しており、ユーロ圏の景気回復には腰折れリスクとなる。もっともPMIはパンデミック以降、GDP成長率を予測する最適な指標とはなっていない。加えて、景気回復の根本的要因、すなわち実質所得の増加や金融政策の緩和は維持されていることもあり、過度な懸念は外れているのかもしれないのだが、それでも家計の貯蓄率が急上昇するなど、懸念すべき点は出て来ている。
第二に目先のインフレ見通しには問題がないことである。サービスのインフレが今年の大半、概ね横這いだったことを踏まえると、総合インフレ率の低下があれば重要な兆しとなる。市場の
基準値に示される通しは、インフレ率が来年の大半を通じECBの予想を下回る可能性が高いことを伺わせるものである。
第三に、政策理事会のタカ派とハト派が妥協すべき理由を見出せることである。仮にタカ派が金利低下を渋ったとしても、12月の会合は遠い先の話であり、今行動しなければECBがデータ
基づき12月の会合で50bpの大幅利下げを余儀なくされるリスクが高まりかねない。大幅利下げがもたらしうる相当なシグナル効果を踏まえると、タカ派は10月の追加利下げよりも50bpの利下げに強い抵抗を示すと考えられる。
以上より、ECBは10月と12月に利下げを実施すると予想する。実質所得の増加やエネルギー価格動向の改善により、堅調な景況感をもたらすとの基本的な見方を変えない。さらには、金融政策の順当な緩和により、それを確かなものにしていく、と見ている。