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『プラネタリウムでアート?』 飯田将茂|《double》|さいたま国際芸術祭2020

遂に開催の運びとなった『さいたま国際芸術祭2020』。

どんな背景で僕がキュレーターになり、そしてどんな考えでキュレーションしてきたかについて、下記にまとめました。

本エントリーから、参加頂いた担当アーティストについて、ご紹介していきたいと思います。今回は、飯田将茂|《double》についてご紹介します。

プラネタリウムでアート?

私が始めて飯田将茂さんの作品を見たときにびっくりしたのを今でも覚えています。

もともと僕が飯田将茂さんの活動を知ったのは、MOTIONGALLERYでクラウドファンディングをして頂いていたことがきっかけでした。

プラネタリウムの全天に広がるダンス映像作品!

ということで、ただものではない感をすごく感じました。
プラネタリウムといえば小学生とかのときに遠足かなんかで見に行って以来行った事もなく、お星さまがきれいだなあという思いになれるくらいの認識しかなく、大人になればなるほど、意識から消えていました。もちろん、最近大人のデート向けに人気を博して来ているのは耳にしてましたが、それでもそんなおしゃれな人生を送っていないからか、自分の意識の範囲外の存在だった「プラネタリウム」。

そんな「プラネタリウム」に、どうやら本域の身体表現の映像を投射して、アートのスクリーンにしてしまうという発想だにしなかった取り組みをやっていると知り、クラウドファンディングが完了し、実現した暁には、絶対に見ておかねばと思い、リターンを買い、作品を見に行きました。

もう感想として圧倒されたの一言に尽きました。
想像以上でした。単純に映像としても素晴らしいし、またそこで繰り広げられているコンテンポラリーダンスも素晴らしい。作品としてのテーマとしても3.11を起点に人間の身体性への言及に広がりをもたせ、且つ、統合していくそのストーリーテリングになんと素晴らしい表現であるかと感嘆しました。正直そこまで感激するとまでは思って見に行って無かったので、驚きでした。

でも、それ以上に何より驚いたのは、「プラネタリウム」でやる意味がある映像作品になっていた事でした。映画館のスクリーンでやるのと何が違うんだろう?みたいな感想には少しはなるだろうなあとか思って見に行こうとしていた気持ちも少しはありました。その違いは自分の視界が360度覆われた上での映像だから迫力が違うということなんだろうなあという感じ。

でも全然違った。作品が人間の身体性を描いていることに連動するかの様に、観る側の身体性をも拘束・規定されているような強い衝撃を”体感”しました。それは、映画館の4DXとかの体感なんてものを凌駕する息詰まる体感。別に椅子が揺れたり動いたりするわけじゃないのに。

デジタルシフトが進む中で、身体性が薄らいでいくのは「自然」なわけですが、その「自然」から、人間の「ネイチャー」を思い起こさせる様な飯田さんの作品は、

こちらでも書かせて頂いた様に、僕のキュレーションの軸として持った

・世代交代を意識されたキュレーターの人選と合致するようなエマージングなキャリアで、
・各地のトリエンナーレで行われている展示とはまた違った展示になるようなオルタナティブな視点や作品を生み出す
・「共同幻想」というアイデアが想起できる

にまさに合致します。大宮区役所というメイン会場を飛び出て、宇宙劇場という大宮駅の反対側の、これまでアートの舞台してあまり聞いたことがないプラネタリウムを会場にする。そんな彼に、是非さいたま国際芸術祭に参加して頂きたいと思いお声掛けしました。

今回、さいたま国際芸術祭で、飯田さんに新作を制作していただき公開できるのは本当に嬉しいです。

《double》

人形も花も、強く先行するイメージがある。それらを剥いでゼロから関係を結ぶとき、受肉したばかりのイメージに何を見るのか。

作品の概要はこちらの芸術祭のHPにまとめてありますが、
キュレーターとして書かせて頂いたキャプションはこちら。

飯田将茂は、身体をテーマに、プラネタリウムの圧倒的な没入感を利用し、舞踏家とタッグを組んだ映像作品を制作発表しています。
360 度を映像で包み込むプラネタリウムの圧倒的な没入感に、これまでにない映像表現の可能性を感じ、2011年より、プラネタリウムをはじめとするドーム空間で、一貫してアートの立場から映像作品の発表を続けているアーティストです。
本芸術祭では、大宮駅近くの「宇宙劇場」を舞台に、原初舞踏を提唱し身体の探究を続ける舞踏家の最上和子とタッグを組み、舞台や映画のフレームを超えた全く新しい視点で身体映像表現に挑みます。人と人形が織りなす舞踏から眼前に立ち上る“ 花 ”とは何なのでしょうか。ぜひ目撃してください。

「花」や「共同幻想」をテーマに新作をお願いしたいと飯田さんに相談し、この作品のアイデアを聞いたとき、僕は『攻殻機動隊』を思い出しました。人形とはなんなのか、人とはなんなのか。これは当然AIが進んだ先にある社会により具体的に突きつけられる問題となるでしょう。それこそ『攻殻機動隊』が描いたように。
なにかそう考えると主演を務めて頂いたのが舞踏家の最上和子さんであることも必然だったような気がしてしまいます。

作品中の最上和子さんのパートナーとなるのは球体関節人形ですが、人形と言えばさいたま岩槻だったりと、いろんなリファレンスがはられつつも、そんな話を抜きにしつつ圧倒的な、プリミティブで、それでいて未来言及的な本作は、体感していただくに限る、そう思います。見た人のなかで一体どんな幻想が立ち上がるのか。とても楽しみです。

見ていただける機会は、今日を含めてあと2回!

日程:10/31(土)、11/7(土)
18:45受付開始 19:30上映開始
場所:宇宙劇場プラネタリウム
料金:無料

10/31(土)
https://peatix.com/event/1671728

11/7(土)
https://peatix.com/event/1671732

是非お越しください!

飯田将茂

映像作家。主に国内外のプラネタリウムでイメージと身体をテーマにしたドーム映像作品の発表を続ける。美術家の北川貴好らとともにアップデートアーキテクツのメンバーとしても活動。世界的にも日本はプラネタリウムが多い国だといわれている。そんなプラネタリウムを映像鑑賞の場所に変え、その特性を利用して身体と向き合う作品を多数上映し、見るものに強い印象を与え続けている。
過去の上映会として、自主上映会「HIRUKO」ギャラクシティ(東京、2019)、自主上映会「AFTER CHERENKOV」ギャラクシティ(東京、2016)。 
http://masashige.com

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〜他の担当作品ご紹介〜


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大高健志@MOTION GALLERY
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