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人間関係から、人AI関係(じんあいかんけい)の時代に〜ストレスゼロ社会の到来

心理学者のアドラーは、「人間が抱える問題は、すべて対人関係上の問題である」と考えたという。つまり、人の悩みはすべて人間関係だということである。現代の私たちは、自然との対峙のなかで悩むことよりも、組織のなかでの対立や競争、評価や承認を求めて悩みを抱えることが多い。この人間関係にAI(人工知能)が割って入ってくるわけだが、今後、人間関係や「人とAIの関係」はどうなっていくのだろうか。妄想を膨らましてみた。


生成AIによる傾聴

次の記事は、丸亀製麺の店舗で行われた、人事面談のAI化の事例を報じている。「あなたの一番好きな商品は?」「何のために仕事をしてる?」といった突っ込んだ質問をAIが行うという。生成AIなので、チャットで交わされる会話は自然で、愛嬌もあるようだ。

この記事によると、面白いことに「生成AIとの面談に臨んだ女性従業員は『本社がここまでスタッフのことを気にかけてくれているのは驚きだ』と話した」と伝えている。つまり、社員はAIインタビューの取り組みをとても前向きに受け止めているのだ。

この記事は、これからの組織におけるAIの役割の視野を大きく広げてくれる。これまでAIやロボットは、目に見えないところで効率化を図る役割にとじこもっていたが、この取り組みは「人間よりAIの方が人の話をうまく聴ける」という可能性を示しているのだ。

自律的に仕事をするAIたち

次の記事では、「エージェントAI」という技術への注目が高まっていることを報じている。「具体的な指示を出さなくても、AIが自らの判断で仕事をする仕組み」という。たとえば、「野菜を多く摂りたい」「塩分は控えめにしたい」という抽象的なリクエストに対して、最大8日分の献立を提案する「未来献立」というウェブサービスを味の素が始めたという。これに使われた「献立作成エンジン」は、「最適な献立を作るのに必要なデータをAIが自ら見つけて提案する。エージェントAIに近い機能を実現した」という。

この記事で、「生成AIによる汎用的な能力とエージェントAIによる自律的な能力の掛け算でAIが急速な進化を遂げる」という専門家の意見も紹介している。

傾聴して自律的に動くAI、最強説

これら二つの記事をつなげて見ていくと、「AIが人間の傾聴相手になり、そこでキャッチした潜在的なニーズを自律的に動いて実現する」というような、なんともすてきな未来像が目に浮かぶ。

家に帰ると、AIロボットが待っていて、「おかえりー」と声をかける。「あー、ただいま」と言うと、「なんか声のトーンが暗くない?話、聴こうか」と声をかけてくれる。「わかる?いや、それがさー」と、ついつい話が長くなる。AIはもちろん、疲れることなく、朝まででも話をうんうんと聴いてくれる。そして裏ではエージェントAIが動いて、いつの間にか私の悩み事の解決をしてくれている。あー、なんて幸せなんだ。

自作ショートショート

こんなストーリーだ。こうなってくると、自分で人との交渉ごとをしたりしなくなるのではないか。「隣の家の木が、うちの庭に葉っぱを落としているんだよね。もやっとするわー」と愚痴れば、AIは「それはたいへんねー」と聴いてくれる。そして、いつの間にか葉っぱの掃除と、隣の家のAIとの交渉を進めてくれる。もしかすると、この記事のトップのイラストのように、うちのAIロボットと隣のAIロボットが、「まー、まー、飲みながら話そう」みたいになったりもするのだろうか。

このような世界では、人間関係はなくなっていくのが必然である。めんどくさい人間関係をすべて排除して、すべてを「人AI関係(じんあいかんけい)」を通すようになるのだ。こんな世界は、バラ色だろうか、それとも彩りのない寂しい世界だろうか。


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