相手のことを理解したければ「なぜ(Why?)」を我慢する
マーケティングの仕事をしていると、人を見に行かずに、データやフレームワークで考え、勝手に解釈してしまい判断を誤ることが多い。
特にデジタルマーケティングの世界は、インプレッション、クリック数、コンバージョン、ターゲット属性など、全てがデータになって結果が出てくるため、「とりあえずデータをみて判断する」となってしまいがちです。
なので、1次情報に当たる(ユーザーと直接会ったり、現場に出て観察したりする)ことが重要になります。
まずは1次情報に当たること(半強制的に)の重要性はこちらのnoteで書きました。
さらに注意が必要なのが、人を見に行っても、人を理解した"つもり"になってしまうことが多いことだと考えています。
そんなことを考えている際に、大きなヒントをもらえる書籍と出会ったので紹介させてください。
途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法
マーケティングの本ではないのですが、相手を理解したつもりにならないための質問、広くはファシリテーションの技法についてがまとまっている書籍です。
消費者やユーザー理解といった言葉が使われますが、要は「自分以外の他者(人間)を理解する」ことです。
人間理解をするためには、マーケティングの書籍よりも文化人類学や国際協力の実践系書籍からヒントを得られることが多いと思っています。
「途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法」に書かれている内容で、マーケティングリサーチに活かせるポイントをまとめていきます。
相手のことを理解したければ「なぜ(Why?)」を我慢する
ユーザーインタビューをしていて、「なぜそのように考えたのですか?」と質問することは多いです。
そして、ビジネス本では積極的になぜWhy?を問うことが推奨されていると思います(決して悪いことではないです)
書籍に書かれている内容で新たな発見だったのは、インタビューで相手のことを理解したければ「なぜ(Why?)」を我慢するということです。
書籍から引用します。
相手が問題について語り始めるや否や、「それはなぜですか」「どうしてですか」とつい聞いてしまう。すると相手は、自分勝手な安易な原因分析をその場で始めてしまう。あるいは、自分ひとりですでに分析している答えをもう一度その場で語り始める。
私は、自己訓練の方法として、先ほどの自分の質問の観察と併せて、「なぜ?」という疑問詞の使用を自らに堅く封印してみた。そう聞きたくなった時には、喉まで出かかった「なぜ?」を一度飲み込んで咀嚼しなおし、事実を尋ねるための他の疑問詞を使って質問を立てなおすよう努めた。これを数ヶ月続けるうちに、WhyやHowを使わなくても、たいがいのことは尋ねられるようになった。
引用:P51 第一章 「なぜ?」と聞かない対人援助コミュニケーション手法
事実(FACT)を掘り下げる質問を意識する
再確認させてもらったのは、意識的に質問を使い分けることの大切さです。
例えば、朝ご飯に何を食べているかを質問する場合として、下記の3つの質問が紹介されている。
※書籍では、発展途上国の人々の生活スタイルを理解するためインタビュー例として紹介されています。
①事実(Fact)朝ご飯は今日は何を食べましたか
②観念/考え(Perception)朝ご飯はいつも何を食べますか
③感情/気持ち(Feeling/emotion)朝ご飯は何が好きですか
②観念/考え(Perception)や③感情/気持ち(Feeling/emotion)を聞くと"事実を聞いているつもり=相手の行動を理解したつもりになってしまいがち"になってしまうとのこと。
「考えさせるな、思い出させろ」
これはマーケティングリサーチをする際に覚えておきたい言葉。
相手に質問をする際には、考え(Perception)を聞くのではなく、相手の記憶(事実FACTの束)の再整理を手伝う意識をもつことが重要。
相手が今考えていることではなく、相手の取っている、もしくは取ってきた行動を正しく答えてもらうための質問をするようにしたい。
質問の選び方を間違えてしまうと、間違った答えを誘導し、相手をわかったつもりになり、曖昧なデータをもとに意思決定していく過ちにつながる。
リサーチ手法を探すのではなく
ユーザーリサーチは新しい手法が次々と出てきています。
時には顧客インタビューの限界と言われたりします。
しかし、大切なのは手法より「相手を正しく理解する姿勢」と「正しい質問」なのだと考えています。
新しいリサーチ手法をたくさん試すことより「質問力」を磨きたい。ユーザーインタビューの質を高める努力を怠らないようにしたい。
ユーザーリサーチ、消費者理解などに興味ある方はぜひ読んでみてください。
マーケティングリサーチは、人間力が試される仕事であり、人間そのものを理解できる面白い仕事だと感じる今日この頃です。
最後まで読んでくださりありがとうございました!