選挙の経済学~投票を巡る4つのバイアス~
みなさま、こんばんは!エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。おかげさまで、新刊「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」も3刷となり、いろんな方々のご縁で活かされているのを日々感じています。
*最近、選挙の経済ニュースが多い
今回は、経済ニュースの中でも話題の選挙に焦点をあてます。というのも、日本では衆参同時?なんて噂が出ていたり、アメリカでは大統領選挙を巡りトランプ大統領の行動が注目されています。実際、国内ではこんな経済ニュースも。株式市場には、「政策に売りなし」という格言が存在します。これは財政出動が行われた際は、相場は持ち上がるのが常だということを意味しています。政治家がどう行動するか次第で、株式市場も経済にも影響が大きいく、政治と経済は切り離せない関係なことを示しています。
*選挙を巡る「合理的無関心」の罠
そして、私達は選挙に関連する経済ニュースをただ見ているだけでなく、まずは夏の参議院選挙に向けて投票行動をどうとるべきかを考える必要があります。しかし、そこにはある罠が存在します。それは「合理的無関心」というタダ乗り減少です。投票にわざわざ行き調べるコストと、投票から得られる短期的な影響力やメリットでは、前者が大きいと考えてしまう現象です。つまり、短期的な一個人の目線では、投票に行かない方が合理的になり、マクロでは相当な非合理が生まれてしまう現象です。
(出所 崔真淑著「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」のイラストより)
私の研究領域は「株主による議決権行使」が、当該企業の取締役や株主価値にどのような影響を及ぼすかを検証しています。なので、領域は違っても「選挙」に関する知見は蓄積中なのです。そこで得られら先行研究をベースに、「合理的無関心」だけでなく選挙前に知ってほしい投票で起きがちなバイアス現象を紹介します!
*選挙を巡る4つの非合理
森田(2012)では、多数の人による合意経営や、その社会システムを経済学と政治学の視点で整理しています。ここには株主議決権だけでなく、政治投票についてCaplan (2007)を引用しつつ、 政治における投票者には、次の 4 つのバイアスが存在すると紹介しています。Caplan氏は、「選挙の経済学」でも有名な投票に起きがちな現象を経済学的に実証している著名経済学者です。
①「アンチ市場」バイアス:
市場がもたらす経済的便益を過小評価や感情的に判断する傾向があることを報告。具体的には金銭消費貸借によって利息を稼ぐことは不当な利潤であり借り手がかわいそうと、貸金業をとにかく規制する方向に投票が動くなどです。規制をかけすぎると、借りたくても借りれない人も出てくる懸念も‥
③「アンチ外国」バイアス:
外国との貿易などによる経済的便益を過小評価し、保護主義的な流れに投票が向かう事です。まさに世界で起きていることですね。
③「雇用創出」バイアス:
技術革新で減る雇用者と、技術革新で受けられる経済的利益や長期的な雇用創出の可能性では前者が投票で選ばれやすいバイアスです。まさに、これも世界で起きていることですね‥。
④「悲観的」バイアス:
実際の経済問題の深刻さを過大評価しがちであると同時に、未来を過小評価しがちである傾向を投票者は持つことを示しています。
ちなみに、Caplan(2007)では上記バイアスが現実社会で起きているかを米国データを用いて検証し、起きていることを実証しました。でも、よーく考えてください。これ2007年に発表された論文なんです。つまり、いつの時代も上記のバイアスは起きがちだし、濃淡が時代で違うだけなのかもしれません。世界で起きている保護主義的な流れも、突然起きたわけではないねすね。
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崔真淑(さいますみ)
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