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あなたの人生に影響を与えた文化は? ーコロナ禍の文化支援を考える

あなたの人生に影響を与えた文化は、どのようなものですか?

映画でも、小説でも、アニメでも、音楽でも、お祭りでもかまいません。幼少期、青年期、仕事をするようになってから、人生の様々なフェーズで出会った作品やイベントを思い出してみてください。

今、その文化が経済的な危機を迎えています。あなたなりの仕方で、今このコロナ禍でできる方法で、文化に参加してください。

「#WeNeedCulture​ at #DOMMUNE ​」を視聴して、こんな問いかけを受け取りました。

#WeNeedCultureでは 、国に対して文化芸術復興基金の設立を求めています。「助成金」ではなく「給付金」のかたちで芸術文化の担い手に対する補償を、という要望が綴られています。

助成金とは、実施された事業の経費に対して補填されるお金です。規定によっては、イベント運営の事務局の人件費が含まれないケースもあります。一方給付金は対象経費はありません。文化事業を支える人たちの生活自体への補償です。

あなたは、これまでどのような文化に支えられてきましたか?

ぼくは、高校生のころに、自分のアイデンティティを支えられてきました。

子どもの頃から漠然と映画が好きで、映画の世界にあこがれていたぼくは、高校3年生のころにTSUTAYAで借りて観た是枝裕和監督の「誰も知らない」という作品に衝撃を受けました。柳楽優弥さんをはじめとする子役たちの演技とよんでいいのかわからない会話のありように、映画を見ているあいだじゅう鳥肌がとまらなかったことを覚えています。

はじめて行った展覧会は、2005年の横浜トリエンナーレでした。「アート・サーカス」をコンセプトにしたこの展示では、巨大なサッカーゲームがあったり、列をなしてふんどし姿でビンタをするパフォーマーが歩いていたり、電線のうえを行進する動物たちがいたり、会場の中でのさまざまな経験がぼくを深く揺さぶりました。

美大を受験して落ち、浪人していた2006年にはじめていった森美術館でビル・ビオラというアーティストの「はつゆめ」という展覧会を訪れました。絶叫する人や、プールに飛び込む人をスーパースローで撮影した作品のなかにあふれる感情の渦から逃れられず、ほぼ丸一日展覧会場にいてしまいました。

アートがつくりだす新しい現実は、ぼくが囚われていた常識に穴をうがち、風を吹き込んでくれました。そうして生み出された思考や感覚がぼくの人生をつくっているといっても過言ではありません。

これらの作品や場に対しては、国や自治体からの出資があります。こうした場が全く無かったとしたら、ぼくは人生を楽しく生きることができていたかどうかわかりません。それだけぼくにとって文化は人生を形作り、命を支えているものなのだということを、このコロナ禍に思い知ります。この文化を潰えさせないためにも、国からの健全な政策的支援をしてほしいです。

ドイツのモニカ・グリュッタース文化相の「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」という言葉を引用するまでもなく、文化はぼくたちの人生を支えているものなのです。ぼくにとっては映画や美術がそれにあたりました。人によっては漫画や音楽かもしれません。あるいはもっと別のものかもしれません。でも、なにか影響を受けた作品があるはずです。そのことを思い出しながら、今できる、文化への支援を考え、行っていきましょうよ。

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臼井 隆志|Art Educator
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