大統領選に重要なのは株価より失業率
11月3日に、アメリカは大統領選挙を控えています。そして、直近6回の大統領選で再選を目指した大統領候補者が、再選に成功したか失敗したかを見ると、4勝2敗ですので通常再選は有利だといえます。
それでも過去6回のうち2回は再選に失敗しています。1976年に初回当選したカーター大統領と、1988年に初回当選したブッシュ大統領です。一般には、大統領選の勝敗を左右するのは選挙直前の経済動向だとよくいわれています。
トランプ大統領再選のためには株価が重要だとする向きもありますが、実は必ずしもそうではないのです。例えば、1980年に初回当選したレーガン大統領の場合、二期目の選挙時にはその1年前と比べて、株価は1.5パーセント下げているのに再選されています。一方、カーター大統領は、二期目の選挙の直近1年間の株価は13パーセント以上も上げているのに、再選に失敗しているのです。
しかし、再選に失敗したカーター大統領もブッシュ大統領も、いずれも直近1年間の失業率が上がっていました。逆に、再選を成功させた4人の場合、直近1年間の失業率は下がっています。となると、少なくとも経験則的には、直近1年間の失業率が非常に重要だということがいえると思います。
アメリカ経済というのは、特に個人消費の経済といわれます。アメリカのGDPは世界のGDPの4分の1を占めていますが、そのアメリカのGDPの中の4分の3が個人消費なのです。
では、アメリカの個人消費は何に左右されるのかというと、やはり雇用環境が非常に重要なわけです。アメリカでは賃金よりも一時解雇などの雇用調整によって人件費を調整しますので、雇用環境のよい悪いがそのままアメリカ人の収入、個人消費に直結して、アメリカ経済を左右するのです。
だからこそ、アメリカの雇用統計というのは、マーケットで最も注目されるのです。ところが、今回のコロナ・ショックによって雇用環境が一気に悪化してしまいました。
ただし、ここまで劇的に失業率が動くということは過去にはありませんでしたので、大統領選直近までにかなり下がったことが、それはそれで追い風になるかもしれません。
アメリカの場合は、これでもかというくらいお金を使って景気対策をやって、安心して失業できるような状況だったからこそ、ここまで失業者が増えたという見方もできます。ですから、失業率が1年前より高いからトランプ大統領が再選される可能性が低くなったとは単純には読めないでしょう。
コロナ・ショックが起きる前に比べればピンチになっていますが、こういう難局を乗り越えて改善の方向に向かっていけば、それこそ世界恐慌以来の100年に一度の危機を克服しつつあるのはトランプ大統領のおかげだということで、プラスに働くかもしれません。
そういう面も考慮しなくてはいけないため、今回もなかなか読みにくい選挙になるでしょう。