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「20代で転職」が主流に。ゆるすぎる職場でもきつすぎる職場でも若手は離れていく。

皆さん、こんにちは。今回は「若手の離職」について書かせていただきます。

入社したばかりの若手社員が転職を考え始める理由は様々ですが、「職場がきつい」「労働時間が長い」「労働環境が整っていない」などの理由が多かったのは過去の話。

もちろん、同じ理由で離職する人も一定数いますが、最近増えているのは「仕事を頑張りたいという意欲に反して早く帰される」「働き方改革の結果、大した仕事を与えられなくなってしまった」「上司がパワハラを恐れてしっかり指導してくれない」などの理由です。

なぜそのような状況に陥ってしまっているのでしょうか。そして、若手社員にはどのような環境を提供すれば良いのでしょうか。具体的に考えていきます。

「職場がホワイトすぎて辞めたい」と仕事の「ゆるさ」に失望し、離職する若手社会人が増えている。長時間労働やハラスメントへの対策を講じる企業が増えたほか、新型コロナウイルス禍で若手に課される仕事の負荷が低下。転職も視野に入れる彼らには成長の機会が奪われていると感じられ、貴重な人材に「配慮」してきた企業との間で食い違いが起きている。

■転職の3大理由

転職を考えるきっかけになる要因としては、大きく以下の3つが挙げられます。

①キャリア不満(思い通りのキャリアが歩めない、やりたい仕事ではないなど)
②評価不満(評価されない、給与が上がらないなど)
③環境不満(社風や人間関係が合わない、成長環境がないなど)

あえて「不満」と書きましたが、基本的にはこのようなネガティブな感情起点で転職を考えるという流れが一般的であって、「もっとチャレンジしたい」「他にやりたい仕事を見つけた」などのポジティブな理由は、実は後付けで出てきた可能性が高いです。または表向きの理由としてそう言わないと気持ち良く転職できない、という事情もありそうです。

引用した記事には、

2015年以降、労働に関する法律が整備され、企業は若手社員の負荷削減に取り組んだ。リクルートワークス研究所の調査によると、1999~2004年卒が入社1年目のときの1週間の残業時間が9.6時間だったのに対し、19~21年卒は4.4時間と半減した。ところがこうした働き方改革によって増えた「ゆるい職場」がかえって若手の不評を買っている。
同調査では大企業に勤める就業3年未満の若手社員の49%が「別の会社や部署で通用しなくなるのではないか」と不安を募らせる。職場を「ゆるい」と感じるとした若手社員の16%が「すぐにでも退職したい」と答え、41%が「2、3年は働き続けたい」と退職も念頭に様子見をするとしている。ゆるい職場にずっととどまるイメージを持てないでいるのだ。

とあります。

ゆるい職場にこのままいることで不満や不安を抱くというケースは、先ほど挙げた③に該当しますが、これまでの環境不満というと、「仕事の内容がきつい」「仕事の量が多くてきつい」「給与が安くてきつい」「上司などの人間関係がきつい」「ノルマが多くてきつい」「労働時間が長くてきつい」などの厳しい環境に対する不満が大半だったため、真逆の傾向が見て取れます。

「ゆるい職場=労働時間が短い」ことを想起させられますが、働く時間の長さだけではなく、

  • 仕事の量が少ない

  • 仕事の難易度が低い

  • 目標が低い(または目標がない)

  • 目標達成に向けてのプレッシャーがない

  • 人間関係のストレスが一切ない(叱られない)

などの状態も「ゆるい」と感じる原因になります。あらゆることに対する負荷を感じない分、成長実感や達成感もないという状態が生まれてしまいがちです。

■なぜゆるい職場が広がっているのか。

このようなゆるい職場が広がってしまった背景には、以下のような理由が考えられます。

〇「ブラック企業」という言葉の定着と批判
→ブラック企業という言葉が定着し、そのような企業に対する批判が強まっただけでなく、2015年には若者雇用促進法が施行され、自社の平均残業時間や有給休暇の取得率など労働環境に関する情報の公表が義務付けられました。

〇働き方に関する法律が次々と施行
→2019年に働き方改革関連法、2020年にパワハラ防止法が施行され、労働時間の上限規制が大企業を対象に適用されるなど、若者を取り巻く職場環境が変化していきます。

〇ハラスメントを許さない社会へと変化
→若者が過労やハラスメントを理由に自殺をしてしまうような痛ましい事件などもあり、このようなことを引き起こしている構造を根本的に変える必要性が認識されてきました。労働時間の徹底管理やハラスメント防止策を講じるなどの企業側の努力が求められる一方で、ハラスメントに怯えて適切な指導を避ける上司が増えていることも報告されています。

〇キャリア不安を抱える若者の急増
→実際にゆるい職場が増えていることも事実ではありますが、キャリア不安を抱える若手社員が増えたことで、その不安の要因として「職場のゆるさ」を挙げている人が増えたという見方もあります。「自分は本当に成長できているのか」「成長していないのは職場の環境のせいではないか」「このまま仕事をしていても市場価値が高まらないのではないか」「ゆるい環境は“悪”ではないか」と考えているのです。


今は若手に限らず、全世代で「リスキリング」の重要性が叫ばれている時代なので、スキルを身に着けていかなければ厳しい競争環境を生き抜いていけないと考える人が急増しています。

各企業の職場の雰囲気も働く上での重要な要素の一つではありますが、それ以上に自分の能力に常に危機感を募らせていることが、若手の早期離職を後押ししている可能性が高いのではないかと思います。

■きつい職場VSゆるい職場

企業にとってさじ加減が難しいのは、方針を百八十度転換してきつい仕事を振ればいいというわけではない点だ。リクルートワークス研究所の調査でも、きつい職場で働く新入社員の30%が「すぐにでも退職したい」と答えた。

企業にとっては、優秀な人材に辞められてしまうことが一番の痛手です。

単純に考えれば、「ゆるい職場でラッキー」と思っている層が優秀であるというケースは稀なはずなので、たとえば以下のように同じ退職率であったとしても

  1. 「きつい職場」であることが理由で退職したい人が30%(一般的に、厳しい環境についていけない人が退職になるケースが多い)

  2. 「ゆるい職場」であることが理由で退職したい人が30%(一般的に、優秀な人材ほどゆるい職場では不安になり退職になるケースが多い)

と仮定した場合、後者の退職率が高い事象に対して早急に手を打たなければならないと思います。

ただし、前提として、「ゆるい職場」が悪いわけではありません。むしろ、労働環境が大幅に改善し、若手社員が働きやすくなったことは歓迎すべきことです。若手の離職を抑える目的で、「ゆるさ」を解消するために労働時間を以前のように長くするのではなく、若手社員に任せる仕事の内容を変える(仕事の“質”を上げる)ことで、仕事に対するやりがいや達成感を醸成する方がよほど重要なことではないかと思います。

参考:若手社員の早期離職を防ぐには


■企業がすべきこと、若手社員がすべきこと

企業と若手社員のそれぞれがこれまでの常識に囚われることなく、新しい関係性を構築していくための努力が求められています。

どんどんゆるくなっていく職場において、どんどん厳しくなる社会の中で生き抜くスキルや経験を磨いていくことは、何も若手社員にだけ課された命題ではないはずです。

企業がすべきは、「若手社員の育成方法の見直し」です。働き方が多様化し、従来のように隣の席で手取り足取り教えていくようなOJT型の育成スタイルが難しくなった今、若手社員の入社後の即戦化やオンボーディングにこれまで以上の工夫が求められるようになりました。一から十まで細かく指導しなくても、若手社員が自ら考え実践することで育っていくような環境を構築し、失敗した時や躓いた時にサポートできるようにしておくことが重要になっています。

若手社員がすべきは、「会社が自分を育ててくれる」という発想ではなく、「会社を良い意味で利用して自ら成長する」という発想に転換することです。就職活動の場で、「御社にはどのような育成プログラムがあるのですか?」「どのくらいの期間で一人前に成長させてもらえるのですか?」という質問をたくさん耳にしますが、誰かに育ててもらうという考え方から脱却しなければ、それがゆるい職場であってもきつい職場であっても、想定以上の成長を遂げることは難しいでしょう。


これまでの日本企業は、新人を育てる責任を持ち、それまでの育成に関する知見をもとに、必要な業務を命じていれば勝手に新人が育っていく基盤やシステムがありました。ですが今は、企業だけが新人を育成する責任を負っているのではなく、若手社員が自ら自分の成長に責任を持たなければいけない時代へと変化しています。若手社員は職場を成長できる環境の一つとして上手に利用し、社外活動などとセットで自分の成長環境を自分で構築していくことが求められているのではないでしょうか。



最後に、こちらの記事には

20代の転職後年収が上がっている。人材サービス大手によると、2022年は比較可能な過去6年で初めて、転職前を上回った。人手不足で中堅クラスの確保が難しくなり、スタートアップを中心に若手の採用競争が激化。経験以上に潜在力や将来性を見込む傾向も広がっている。

とあります。

20代の転職後年収が上がっているから積極的に転職しましょう、ということが言いたいわけでありません。世の中的にも転職意識が高まっていて、企業も人材確保に躍起になっている業界も多い今、新しい一歩を踏み出す理由は十分揃っています。そのきっかけとして「もっと年収を上げたい」ということもあるのかもしれません。

ただ、「労働環境」や「労働条件」を複数の会社と比較して最も良いところを選択するという発想だけではなく、「“働く”ということの意義や意味を自分でどのように捉えておくべきなのか」、「自分が今の環境の中でもっとできることはないか」、ないならば、「どんな環境であれば自分の能力や強みが生かせるか」、「自分が成長していない(または成長スピードが遅い)理由を環境のせいだけにしていないか」など、改めて立ち止まって考えてみても良い気がします。なぜならそこから目を背けて職場だけを変えても、常に現在の自分を取り巻く環境に対する不満ばかりに目がいってしまい、青く見える隣の芝ばかりに気が取られ、事あるごとに職場を変えるという選択肢しか残らなくなってしまうからです。企業や、企業が提供する育成環境だけに依存せず、自らがどのような成長曲線、成長ストーリーを描くかを想像することが何よりも重要です。

「働く環境なんてたった一人の力では何にも変わらない」と考えることの方が自然かもしれませんが、意外と自分で思うよりも、自分次第でいかようにも変えられるものなのではないでしょうか。そのような発想の転換をすることから始めてみても良いのかもしれません。


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