都市のマーケティング戦略を考えるスライド

都市の #マーケティングトレース -福岡と札幌の比較から考える、都市に求められるマーケティング戦略について-

福岡と札幌。

どちらもマーケティングトレースのコミュニティを通じて出会った魅力溢れる都市です。

この2つの都市の共通点。

食が美味しい。
人口が増えている。
成長性の高い企業が多い。
出会う人々の人間性が素晴らしい。
etc

本日はリレートークとして池松さんから繋いで頂きましたので、都市のマーケティングトレースをテーマとして書いていきます。

日本は人口減少時代に突入しているのは周知の事実。

これからの時代、都市・地域がどのようにマーケティングの発想を取り入れて、持続的に成長していくかを考えることは、間違いなく重要になってくるはずです。

その都市・地域のマーケティングを考える上で、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

池松さんの記事はこちらです。


早速マーケティングトレースを行っていきます。

数字でみる福岡と札幌の成長性について

RESASから福岡市と札幌市の人口増加率を見てみます。

RESASは地域データを分析するのにとても便利です。
戦略を考える上で「地域特性を統計的に理解する」のに活用もオススメです!


福岡(左)
札幌(右)

ともに社会増減数はプラス推移となっていることがわかります(グラフの緑部分)

▼グラフから理解できること
統計データを見ていくと、人口減少時代においても、福岡と札幌は、人が増え続けていることがわかります。

人口減少時代において、なぜこの2都市は人を惹きつけ成長することができているのでしょうか?

マーケティング視点から、その強さの源泉を抽出してみたいと思います。

成長を支えている2つの要因

ここでは、SWOT分析のフレームワークをもとに、成長する都市に共通する要素を抽出していきます。

福岡・札幌それぞれの、
・強み
・弱み
・機会
・脅威
を洗い出しています。

少し文字が小さくなってしまっているので画像は拡大して見て頂けたら幸いです。

福岡のSWOT分析図解

札幌のSWOT分析図解

福岡市と札幌市に共通する成功ポイントをまとめていきます。

 ①「地域資源」を活かした戦略をとっている

SWOT分析で整理すると、福岡、札幌ともに、強みと機会要素を掛け合わせて、戦略をつくっていることがわかります。

福岡市の場合は、海外へのアクセスの良さやコンパクトシティを活かし福岡発のスタートアップを増やすための政策を強化しています。

魅力的な職住環境をつくり、若者の移住を促進することができていることが最大の強みとなっています。

札幌市の場合は、インバウンド需要の拡大に合わせて、北海道特有の資産を活かしてアプローチ。また、農業・畜産業×小売業の業態も有名ブランドが出てきています。

どの都市にも地域固有の資源は必ずあります。

これは当たり前のようですが、その地域資源を定義して、戦略に反映させることができているところは少ない印象です。

福岡市と札幌市は、地域資源を定義して、居住者や観光客=顧客接点で表出化することができているからこそ人を惹きつける都市になっているのだと考えています。

マーケティング戦略でいうポジショニングの定義ですね。

福岡、札幌ともに魅力的な産業を育てることができたのではないでしょうか?

 ②競争力ある企業の存在

福岡と札幌に共通するのは、強いサービス業が存在していることです。

代表的企業を列挙してみます。

▼福岡
・やまや、ふくや(明太子)
・レベルファイブ(妖怪ウォッチ)
・コスモス薬品

▼札幌
・セイコーマート
・クリプトン・フューチャー・メディア
「初音ミク」が生んだ会社
・ISHIYA(白い恋人)
・サツドラ

など、全国、世界に競争力あるブランドが各地域発で存在しています。

※TwitterにてK14GODさんより「クリプトン・フューチャー・メディア」についてはお教え頂きました。ありがとうございます!

福岡は、脱工業化を掲げ、福岡がもっている立地と文化特性を掛け合わせてサービス産業を主体とした都市をつくっていた歴史があります。

札幌の場合は、広大な土地や農畜産業を活かして戦略をとっていることがわかります。
セイコーマート・ISHIYA(白い恋人)に代表されるような、サービス・小売業にも魅力的な企業が多い特徴があります。

クリエイティブ産業を意図的に創り出す、創るための文化をつくることは、都市のマーケティング戦略を考える上で重要な視点だと考えております。

ポジショニングマップを整理

福岡市、札幌市ともに他の地方都市とは異なり、独自資源を活かして産業デザインを行っている→人を惹き付けているしているという構図があるのではないかと考えています。

福岡の産業政策は特徴的で、強いサービス業をつくる動きを、産官連携により戦略的に行ってきたことがわかります。

福岡の都市戦略のポイントを整理します。

ポイント①
国内<海外市場に目を向けて産業をつくり始めている

グローバル創業都市・福岡というキャッチコピーにあわられています。
海外(アジア)を意識しやすい立地を最大限に活かしています。

ポイント②
民間主導で新たな「産業」をつくるという発想が地域に根付いている

福岡
と言えばめんたいこですね!

めんたいこ産業を築いた「ふくや」はオープンイノベーション発想であったということが、一橋ビジネスレビューに書かれています。

"博多明太子の「やまや」は、明太子の製法の秘密を公開(先行投資)することで博多地域の資源をより豊かにし、それによって博多明太子が全国に広がり、地域への見返りが増大したのである。"
引用:一橋ビジネスレビュー 2015 Autumn(63巻2号)


都市に求められるブランド力

都市が持っている資源をどのように編集→表現して、独自ポジション→他の地方都市との差別化をしていくのか?は、大切な視点だと考えています。

都市のブランドに引っ張られて、
・この都市で暮らしたい、働きたいという人が増え
・この都市を訪れたいと考える外国人観光客が増え
・この都市で活動したいと考える企業が増え
という構造が生まれます。

独自の資源を活かして、外の人、内の人それぞれが魅力だと感じる戦略的ポジショニングをとることは、どの都市でも必要な発想です。

上記のブランドづくりという視点では、福岡市と札幌市の2都市から学べることは多いはずです。

もし自分が福岡市と札幌市のCMOだったら?

まず、都市の価値を上げるための論理構造を整理していきます。

都市の価値を高めるためには、このように考えられます。

⑴税収を増やす
・移住者を増やす
・企業を増やす

⑵収益を増やす
・インバウンド需要を増やす
・内需を増やす

では、福岡市や札幌市はどのような打ち手を考えるのが良いでしょうか?

福岡の場合は移住者は増えている傾向にあるため、企業誘致の強化が最重要課題だと考えています。

逆に札幌の場合は、人口減少のフェーズに入ることを考えると、移住者を増やすことを打ち手としては優先順位が高そうです。

インバウンド顧客は、日本経済全体を支えている状態ですが、東京オリンピック後は、地方独自の魅力でインバウンド顧客を惹きつけることが大切になってくることが予測されます。
そのため、インバウンド顧客を惹きつける都市のブランドイメージづくりは、福岡市も札幌市もともに準備を進めていきたいところです。

福岡市と札幌市のベンチマーク先は「ポートランド」

福岡市、札幌市ともに、ベンチマークは「ポートランド」ではないかと考えています。

ポートランドはアメリカ人が選ぶ住みたい米国都市第一位に選ばれるような都市です。

こんな特徴がある都市です。

・ローカルフードを中心にローカル固有の価値を大切にする
・クリエイティブな人が育つ土壌がある
・自転車都市として、環境に配慮した交通システムが設計されている

人口60万人規模ですが、その国の人、海外観光客ともに愛されている都市です。

ポートランドのように、地域固有の価値を打ち出しながら、大都市から人が流入する構造をつくっていきたいところです。

ポートランドについては下記の記事に詳しくまとまっています。

今後の都市の価値は、ローカル固有価値に寄ってくる可能性が高いと考えています。

その理由は大きく2つです。

①グローバル経済の不安定さは増すためローカル回帰がおこる可能性が高いこと
②地域に蓄積されている文化は最大の差別化要素になるため

福岡市と札幌市は、東京と近づきすぎず、ローカル固有価値を追求することが、世界でも注目を集める都市になるためには重要だと考えています。

最後に:都市のマーケティング戦略を考えるポイント

最後に、都市の成長戦略のフレームワークを勝手に考えてみました。

縦軸=力の軸
外の力
内の力

横軸=顧客の軸
外の顧客=観光客(外国人・日本人)
内の顧客=北海道民

福岡市と札幌市は、頼る、引っ張る、根付かせる、利用する、この4つそれぞれの戦略がしっかりしていると考えています。

これから都市に求められる外の人を引っ張り根付かせる力

池松さんの記事に下記の記載があります。

◎本社があると「マーケ」「宣伝」「経営企画」の仕事が生まれる。

福岡市も札幌市も、大手企業やスタートアップの本社誘致→マーケターを中心とした、新たな産業を生み出せる人を増やす視点が重要になってくるのではないかと考えています。


そして、誰を引っ張るのか?と考えた時に、クリエイティブクラスと言われる、新たな産業や文化を創り出せる人。

マーケティングのフレームワークで整理すると、新しいトレンドに敏感で、自ら新しいものをつくることに関心度が高い人です。

ここら辺は、リチャード・フロリダ著の「クリエイティブ資本論」に詳細があるので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。

・アーティスト
・フードデザイナー
・デザイナー
などを意図的に移住・定住を促進する仕組みをつくることは考えていきたいところです。

福岡であれば、福岡移住計画の須賀さんのような方が福岡を拠点に活動するような人を増やすことが大切だと考えています。

また、アーティストインレジデンスのような取り組みの強化や、瀬戸内国際芸術祭のようなアートと都市を結びつけるような仕掛けを増やせたら、クリエイティブクラスを惹きつける力はアップするはずです。

アーティストインレジデンスに関しては下記を詳細

アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-residence program)とは、各種の芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業のことである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


まとめと都市におけるマーケターの役割について

マーケティングトレースのコミュニティを地方都市にも広げはじめています。

福岡のWeWorkで開催したマーケティングトレースミートアップ!

札幌でもマーケティングトレースを開催してきました!

セイコーマートをマーケティングトレースして発表し合っているグループワークの様子。


魅力的な資源を抱える地方こそ、マーケティングの力で大きな変化をつくれる可能性を感じています。


魅力的な都市をつくるためには、マーケターが必要です。

・そこに暮らし仕事をする人
・外にいる人
それぞれに対して魅力をつくり、魅力を届ける発信できる人がいれば都市は変わります。

この変化を市長がトップでつくっているケースが多いですが、個人的には、トップ依存ではなく、セクターを越境して変化をつくるマーケターを増やしたいと考えています。


微力ながら、日本に強くて魅力ある都市をつくる力になっていきたいと思います。


以上、福岡市と札幌市を比較しながら、「都市におけるマーケティング戦略」についてとなります。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


マーケティングトレースを通じで、地方のマーケターコミュニティも強化しているので、ご興味ある方はぜひFacebookグループにご参加頂ければと思います!

福岡市マーケティングトレースのリレー企画について

この記事は、池松さんと  #福岡市マーケティングトレース のリレー企画として行っています。

次回は池松さんの記事にバトンをつなぎます!