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起業家と投資家で異なる事業成功と失敗の定義

スタートアップ企業が手掛ける新規事業にはリスクが伴い、ベンチャーキャピタルから出資を受けた後、5年から10年先に消滅している確率は、米国の統計で70%以上となっている。

つまり、ベンチャーキャピタルは出資先の中で、70%以上の会社が失敗することを事前に想定しており、成功する5~15%の会社から最低でも3倍以上のリターンを獲得して、年率10~15%の利回りで資金を増やしていけるような収益構造になっている。これは、複利計算により10年間で資金を3倍に増やせることを意味する。

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《1億円を年率12%で複利運用した場合のシミュレーション》

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ベンチャーキャピタルが組成するファンドは、投資期間が最長でも10年間となっているため、出資先の経営者には、その期間内でIPOが果たせなければ、事業の売却や、株式の買い取りが求められるようになる。また、スタートアップの事業が軌道に乗り始めた段階で、経営者が早期のバイアウトすることも、ベンチャーキャピタルからは阻止されるケースが多い。これは、出資者として更に高いリターンを期待するためだ。

起業家にとって「事業の失敗」とは、手持ちの資金が枯渇して事業を継続できなくなったことを指すが、出資者にとっては、期待した投資収益率が得られないことを意味している。この解釈の違いが、事業の方向性にも影響してくることは否めない。特に、社会貢献や社会的問題の解決を目的としたいソーシャルベンチャーの場合には、事業成功の価値観が一致する出資者を集めることが重要になる。

日本でも、2014年頃からベンチャーキャピタルのスタートアップ企業に対する投資額は急速に伸びているが、2018年以降は、出資先の会社数は絞り込む傾向にある。出資を受けて事業拡大を目指すスタートアップ企業は、株式上場を果たすまでは2~3年で運転資金が不足していくため、追加の資金調達をしていく必要があるが、ベンチャーキャピタルとの間で、事業成功の価値観に差が生じると運転資金が枯渇して、会社を存続させていくことが難しくなる。事業を成功させるまでのタイムリミットが、ストップウオッチによって測られているのが、スタートアップ起業家の厳しさでもある。

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