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QR決済も「ガラパゴス」にならなければいいのだけれど...

中国に遅れること数年、昨年後半あたりから、日本でもにわかにQR決済が騒がしくなった。中国を筆頭にQR決済が普及した国からのインバウンド旅行客の消費を取り込むため、「手段」としてQR決済に対応しようという動きはとても理にかなっている。しかし、昨年後半から始まって話題になったのは日本人向けの日本国内決済へのQR導入で、インバウンド消費の話とは別だ。

これが、インバウンドのQR決済とシステムを共通化することで、手間を含めたコストを削減するということならまだ理解できるのだがそうではないし、しかも日本人向けのQR決済システム同士にも互換性はなく乱立する状態でスタートした(その後、共通化に向けての取り組みは始まっているが)。かつて交通ICカードの乱立によって利用者の不便・不利益が生じ、今でもそれが完全に解消されたわけではないのに、また同じことを繰り返している、というのが率直な感想だ。

そんな中で、この記事が出た。

この問題は、日本でもすでに2ヶ月ほど前に別なメディアで記事になっている。

日本でQRコードが普及したのは、いわゆる「ガラケー」の時代、すでに15年程度は経過している「枯れた」技術だ。それが日本で決済に用いられずに来た理由はいくつかあると思うのだが、こうした不正利用の容易さも一つであったと思う。

それでも中国がQR決済を採用したのは、中国全土で一気に普及させたかったからではないかと考えている。QRであれば、一般に流通しているスマホであれば、日本のおサイフケータイのような特別な機能がない端末であっても対応可能だし、個人の持っている端末が決済機になるので、製造だけでなく設置まで含めたハードに対する投資が要らない。

現金をなくすことで現金の製造から流通にまつわるコストを減らし、偽札問題を回避し、不透明なお金の流れを(政府が)監視することで徴税や経済犯の把握を容易にする、という意図があったのだろうと推測する。

一方で、こうした不正利用が出てくることもある程度折り込み済みで、おサイフケータイのようなICチップなり、あるいは顔認証といったよりセキュアな決済手段に順次替えて行けば良いと考えているのではないか。手段はQRであれ何であれキャッシュレス決済自体が一度普及してしまえば、移行期間はQRコード決済を併存させれば済むし、不正を嫌う個人や事業者がセキュアな決済手段に移行したがるインセンティブも働くので、一定の不正利用が起きることは、新しい手段に移行を促すためには、むしろ好都合とさえ言えるかもしれない。

日本においては、QR以前に、ICカードさらにはクレジットカードまで含めて、キャッシュレスが十分には定着してこなかった理由に、不正の問題以上に手数料(に対する意識)の問題があることを考慮しなければ問題の解決にはならない。背景には、人が働いたことに対するコスト感覚のなさ(薄さ)と低い犯罪発生率が、現金を扱うコストとリスクを感じさせず、むしろキャッシュレスに伴うコストに目がいってしまうという日本特有の社会的背景がある。これはQR決済になったところで変わらない。

昨年末あるQR決済事業者が大幅なポイント還元キャンペーンで消費者の利用を促した裏では、そのQR決済に対応した販売店での商品価格がキャンペーン以前よりも上がっていた、という指摘もある。これで手数料分の帳尻を合わせたのではないか、というのはうがった見方かもしれないが、QR決済だからICカードやクレジットカードの場合と違って手数料問題が起きない、とは思えない。決済機器の初期投資問題はQRで解決するかもしれないが、手数料問題は解決しないし、急に日本人のコスト意識が変わるとも思いにくいのだ。

手数料問題はさておくとして、日経の記事はQRの不正対策の話までで終わっていて、その先の話は触れられていなかった点が、気にかかる。

さんざん苦労して日本がQR決済の体制を整えた時、中国ではすでに誰もQR決済を使っていなくて「ガラパゴス」化というような、笑えない話にならなければいいのだが、と、ちょっと心配だ。

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