人が学ばないのは時間がないからか?週休3日と学び直し
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
みなさんは社会人になってから継続的に学び続けているでしょうか?業務自体がデジタル化によって大きく変化していく中にあって、新しいスキルをつけなくてはいけないと思っている方も多いでしょう。
変化のスピードもあがっており、現在の仕事を続けながら知識やスキルを身につける「リスキリング(再教育)」の機会をもつ企業や個人も増えてきています。東証のガバナンスコード改訂により取締役のスキルマトリックスが開示対象となったことで、職務とスキルについてより深く考えるようになった方もいるかもしれません。
学び直しと言われたときに思うのが「忙しくて時間がない」ということ。なるほど、確かにそうだ。ということで、政府は18日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に、週休3日制の導入促進を盛り込みました。兼業や副業などの多様な働き方を推進すると共に、社会人の学び直しを広げる意向です。
選択的週休3日制を議論してきた政府の経済財政諮問会議では、民間議員から「従業員の学び直しへの支援を強化するため、選択的週休3日制を導入するなど働きながら学べる環境を整備すべき」という提言があった。
デジタル化やグローバル化の進展で環境変化のスピードが上がり、仕事に必要な、あるいは今後必要になるであろう知識や技能を身につける「リスキリング(再教育)」が世界の潮流になっている。週休3日制で、その機会を増やせるというわけだ。
一方で、時間があれば人は学ぶのかという点については、興味深い調査結果があります。リクルートワークス研究所が2018年に行った「全国就業実態パネル調査2018」によると、過去1年間で自己学習を行った人の割合は 33.1%。7割程度の人は学習を行っていないことがわかりました。
そして行わなかった人にその理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「あてはまるものはない」でした。
出所:どうすれば人は学ぶのか ー「社会人の学び」を解析するー /全国就業実態パネル調査2018
つまり、学ぶ人には理由があっても、学ばない人にその理由などない。ということです。
このレポートは非常におもしろいのでぜひオリジナルを一読いただきたいのですが(PDFで無料公開されています)、こんな感じです。
・大多数は学んでいないし、企業の機会提供も少ない
・年齢が増すとともに、ますます学ばなくなる
・学ばないことに特段の理由はない
・時間ができても、人は学ばない
・学びの習慣を失わせる日本の雇用システム
特に最後の雇用システムとの関連は衝撃的です。確かに、終身雇用と年功賃金がベースとなっている日本型雇用システムでは、学ばなくても定年までいることができます。さらには給与も年齢と共に上昇するため、学び続けるインセンティブが弱いです。受験勉強や学生時代に学ぶ習慣があった人であっても、日本企業にいることでその習慣が失われてしまう危険性もあります。
調査の中では転職回数と学びの習慣との関係も示されており、退職(転職)経験のない人は同2回の人と比較して、学びの習慣を持っている確率が4.0%低いと指摘されています。新しい環境に適応するためには学び続けなくてはならないということでしょう。逆に、学びの習慣があるひとほど転職しやすいということかもしれません。これはこれで経営者からするとホラーストーリーと言えます。学ぶ気のない社員のスキルは陳腐化していき、かつ退職することがないということですので…
では、どうすれば学びのスイッチが入るのか? カギとなるのは「チャレンジングな仕事に出会うこと」だそうです。転職は大きなきっかけのひとつでしょうし、大部分の企業にとっては昇進や配属といった既存の仕組みの中にこそ、社員に火を付けるスイッチが隠されているということでしょう。
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タイトル画像提供:tak36lll / PIXTA(ピクスタ)