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出向で磨かれる「統合力」という力

こんにちは、ローンディールの原田です。

出向という仕組みの面白さに魅了されて、レンタル移籍という事業を構想してはや8年。(実際に起業したのは6年前。)日経COMEMOさんの寄稿テーマとして「#出向という選択肢」なんていう形で取り上げていただけるなんて、なんだか隔世の感があります。

そもそも出向って面白いなと思ったのは、P・F. ドラッカーさんの「プロフェッショナルの条件」の中で、以下のような一説に出会った時でした。

日本が終身雇用制によって実現してきた社会的な安定、コミュニティ、調和を維持しつつ、かつ、知識労働と知識労働者に必要な移動の自由を実現することを願っている。(中略)社会が真に機能するためには、コミュニティの絆が不可欠だからである。

移動の自由とコミュニティの絆、この両者を両立仕組みって何だろう?と考えて、サッカーだと「レンタル移籍」っていうのがあるなぁ、あぁそういえば出向ってそれに近いような気がする・・・ってなって、必死に出向について調べたことを記憶しています。

それから時が経ち、今では170人以上の大企業の方の出向(※正確には研修という形をとることも多いのですが)をお手伝いしています。

改めて考えてみると、出向の面白さって二面性にあるな、と思うのです。「移動の自由とコミュニティの絆」というのもそうで、移動と絆って、相反するような気がしますよね。このように、一見すると矛盾し両立しえないような二つの要素が統合(止揚)されていく。

ちょっとわかりづらいので、個人のレベルで考えてみます。出向をすると、今までとは違う環境に飛び込み、アンラーニングをして新しいスキルやマインドを手に入れることになるわけです。もちろんこれも重要ですが、ここまでは転職と変わりません。

ところが出向の場合には、出向する人は二つの顔を持つことになります。出向元に所属している〇〇さん、でありながら出向先の○○さんでもある、という状態。出向から帰ってきても、流動性の低い日本企業においては、××に出向していた○○さんというちょっと異質な顔を持つことになる。これってかなり特殊な状況だと思うんです。

A社からB社に行っている自分、またA社に戻ってきた自分。人は自分を曖昧な状況で置き続けることはできないから、特殊な存在となっている自分は何者なのかということを思考し、2つの側面を統合して、独自の自分という存在を確立していくことになります。

こうやって、異なる2つのものを統合する思考力が強化されるのが出向の一番の特徴かもしれません。

そして今、この「統合する思考力」というものの重要性が高まっています。例えば、現在のパンデミックの状況において、「オンラインか、オフラインか」といった議論が起こっています。また、気候変動など様々な問題から「経済成長か、持続可能性か」といった問題も毎日のように取りざたされます。こういったトレードオフを越えていくには、それを統合できる思考ができる力というのが大いに求められるのではないでしょうか。

そう考えると、今後ますます出向経験というのは、個人や企業にとって必要な力を鍛える機会になるかもしれません。自分自身の存在が二面性を持っていて、そこで自ら統合していかなくちゃいけない状況って、なかなかないと思うんですよね。

私たちの事業を介して出向した人に限らず、出向していた時期を「人生のターニングポイント」として挙げる方って、かなり多いんですよね。その理由には、そんな「統合」によって自分の独自性を獲得した経験という側面もあるのかもしれません。

ということで、もっと流行るといいな、出向。笑
それでは。

#日経COMEMO #出向という選択肢

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