有名建築を守る新取り組み クラファンで後世へつなぐ
コロナ禍は以前からある傾向を加速すると言われる。
前回のエントリーでは、映画業界においてコロナ禍が加速しているものについて書かせて頂いたが、今回は建築において起こっていることについてお話したい。
コロナ禍は以前からある傾向を加速すると言われる。戦後の高度成長期に地方で数多く造られたモダニズム建築の危機もそのひとつなのだろうか。世界的に有名な建築家、丹下健三(1913~2005年)の初期の作品で、地元では「船の体育館」として親しまれてきた旧香川県立体育館(高松市)が取り壊しの瀬戸際にある。
地震が多い日本では、どうしても建物はスクラップ&ビルドになりがちではあるが、建築は単なる建物ではなく、その建築時の文化や時代性、そしてその建築家が思い描いた未来へのビジョンが詰まっているものであることも少なくなく、その建築を見るだけでなく、コルビジェのようにそこに住む人のの生活動線の設計から人の思想にアクセスすることが試しみられているような、「体感できる文化遺産」であったりする。
だから、重要な建築が取り壊しになってしまいかねない話が出てくると、保存運動も立ち上がることもある。しかし、どうしても公共性のある建築物を保存しようとするとその運動が保存という実効性をまとうにしては対象が大きすぎるという問題も同時にはらんでいた。
しかししかし、実は今、クラウドファンディングという手段によって、「嘆願」ではなく「実行」に保存運動が進化しているという、大きな動きがまき起こっている。
実際に、先日のフジテレビ系朝の情報番組めざましテレビの「イノ調」で、
「有名建築を守る新取り組み クラファンで後世へつなぐ」と題し、建物を"守る"ためにMOTION GALLERYでクラウドファンディングを実施した中銀カプセルタワー/旧尾崎邸/三鷹天命反転住宅の3プロジェクトが紹介頂いた。
番組では、建築学科出身で「図面が描けるアイドル」ことHey! Say! JUMP伊野尾さんが中銀カプセルタワーと三鷹天命反転住宅を訪問。とても面白い特集に。
中銀カプセルタワービル:
解体が予定される中銀カプセルタワービルのカプセルを取り外し再生。美術館への寄贈や、宿泊施設などで「泊まれるカプセル」として再活用します
旧尾崎邸保存プロジェクト:
世田谷区豪徳寺にある明治建築の洋館、旧尾崎邸は昨年取り壊されるはずでした。
何とか解体を免れましたが、百年以上の歳月ゆえ補修が必要です。
三鷹天命反転住宅:
荒川修作+マドリン・ギンズによる世界初の死なないための住宅、三鷹天命反転住宅。歴史的建造物として次世代に繋げるために
ちょくちょくこの日経COMEMOでも、MOTIONGALLERYを立ち上げるときのビジョンとして、クラウドファンディングは社会彫刻の社会実装になるのではないかという思いについてお話させて頂いているが、歴史的建築をクラウドファンディングで守る/次代につなぐという取り組みは、社会の多くの志を同じくするひとが集まって、お金を使うという消費行動を「未来への社会投資としての表現活動」に変換し、その集まったパワーによって社会の形に影響をひとつひとつ及ぼしていく、風景を変えていくという意味で、まさにわかりやすく社会彫刻的クラウドファンディングの社会実装例ではないかと思う。
そして、昨年のミニシアターエイド基金の時もそうであったが、
クラウドファンディングが、ある種のオピニオンメディアのように、今社会が考えるべき文化的なトピックスを発信する起点になれたような動きが、とても意義深く嬉しく思った。
この「有名建築を守る新取り組み クラファンで後世へつなぐ」というテーマは、その様な意味でも、MOTIONGALLERYにとってもとても重要な動きだと捉えていて、我々のPODCAST番組『MOTION GALLERY CROSSING』でも特集させていただいているので、是非こちらも聞いていただきたい。です!
#059 天命を反転するとは?
| 特集『住むとはたらくを建物から考える』section1
8月は特集『住むとはたらくを建物から考える』と題して、本間桃世さん(「荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所」代表と、本間綾一郎さん(「株式会社HATC」代表)さんをゲストにお迎えします。
「ハッチ本間さん」「三鷹の本間さん」とお送りする今回の特集では、コロナ禍で大きく変わりゆく、住むこと・働くことの価値観について改めて考えるとともに、そしてそれに深く関わる建物・室内空間について、さらには建築保存についてお話を伺っていきます。
#060 建物から、ではなく身体から考える空間づくり
| 特集『住むとはたらくを建物から考える』section2
長井さんが感じる「鎧を脱がない」エピソードから、三鷹天命反転住宅とOPEN FIRMが、その特徴的な構造と、高架下という立地によって、実はどちらも同じ空間や障壁を共有することでその場にいる人間が等しく同じ体験してフラットさを生む、という意外な共通項をみつける展開に。空間が手助けする”武装解除”とは?気になります!
また、身体の延長であるというイメージからつくられている三鷹天命反転住宅のコンセプトや、建物ではなく身体から考えるというメッセージ、そしてバーチャルオフィスを介して”気配”を感じながら、時にはリアルのOPEN FIRMでのディスカッションなど選択肢があることで自分で自分の機能を伸ばしながら働くことが可能になるといった、リモート化によって変わりゆくこれからの住まいやオフィスの考え方や捉え方についてのヒントも!たくさんの個人に会いたい、というメッセージも素敵です
#061 今だからできる、動物に還る働き方と暮らしとは?
| 特集『住むとはたらくを建物から考える』section3
今回は、最近どこでも仕事ができてしまうことによる、そんなに働かないとダメなの?という長井さんの疑問からスタート。三鷹天命反転住宅の本間さんは、夜中に海外との打ち合わせがあることも多いなか自分をマネジメントする手段として、動物をイメージするのだそう。例えば猫ならば、同じ環境下で寝てる時と遊ぶ(活動する)時があるように、人間も夜中に仕事があっても寝たい時は寝て、動物本来のものに戻っていく。それは自宅で仕事ができることのメリットでもある、という真をついた前向きなアイデアが飛び出しました。一方でハッチ本間さんは、生きることと働くことをつなげるとして、意思表示することで互いのプライベートを大切している会社のムードと、そこから、まだまだ不健全な環境にあるクリエイティブワーク全体を変えていこうとする強い意思がとても素敵でした!
#062 建物がその役割を終えるとは?カルチャーを継なぐとは?
| 特集『住むとはたらくを建物から考える』section4
今回が特集最終回。コロナ禍で変わりゆく働き方と空間、そして人間の身体から考える空間の在り方についてお話ししてきた特集のラストは、三鷹天命反転住宅もOPEN FIRMも、建築保存とリノベーションという次の展開へと継なぐために今ある空間を維持するという共通のテーマについて、長井さんの”建物の終わりがくるとしたら?”という意外だけど確かに気になる疑問からスタート。
三鷹天命反転住宅は生き物のようなであるからこそ考えうる役割を終えるその時の予想を。OPEN FIRMは、PAVIRION(レストラン)からその空間だけでなく、カルチャーもまた引き継いでいるとのことで、独自の通貨をOPEN FIRMでも流通させ、小さな業務依頼やちょっとした頼み事へのいわば対価を、スタッフがつくるクラフトビールに交換できるなど、OPEN FIRMを利用するクリエイター同士を繋いでクリエイティブを循環させるような仕組みへと繋げているというお話からも、単なるリノベーションではない、場とコンセプトを引き継いでいくこれからの空間の捉え方を感じました!
そして、三鷹天命反転住宅をつくった荒川修作+マドリン・ギンズのお二人による天命反転の橋をつくる建築プランをVR化し体験するための現在進行中プロジェクトをいつかクラウドファンディングできたらという三鷹の本間さんの展望や、ハッチ本間さんによるOPENFIRMでとにかく面白いことを施策していきたい、お金がないからできないというのは一番つまらないからその打開策を実施していくというワクワクするようなチャレンジなど、クリエイティブとお金の両立にも触れたお二人の考えもお話しいただきました!