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過去の解釈と未来へのセンスメイキング。あるいは「キャリア自律」の話

「キャリア自律」にまつわるキーワードやニュースを耳にする機会が増えてきましたね。

いままでは働く人たちのキャリアは企業が決めてきた。これからは労働者自身で選び取る時代をつくらないといけない。

岸田首相、経済再起へまいた種 日経座談会・詳報 - 日本経済新聞

今は、一つの企業に入社したからといって生涯安泰でいられる保証はない。自分が成長し、どこでも通用する力をつけることこそが安定・安心・安全を担保するという考え方が広がっており、就活生は企業にキャリア自律や成長へのサポートを期待している。企業を選択する際も、個々のキャリアに寄り添う柔軟で多様な制度などがあるかといったことを見極めようとしている。

学生に選ばれる企業になるには キャリア自律へ支援を - 日本経済新聞

法人という視点はいったんさておき、「個人」という視点でどのようにこのキャリア自律を捉えるかについて、ふじじゅんなりの考えを言語化してみようと思います。


キャリアの「自律」とは何か? 定義と2つの柱

そもそもキャリア自律とは何なのか。

人材版伊藤レポート』には以下のような記載があります。

企業は、画一的なキャリアパスを用意するのではなく、多様な働き方
を可能にするとともに、働き手の自律的なキャリア形成、スキルアッ
プ・スキルシフトを後押しすること
が求められる。
(中略)
個人は、キャリアを企業に委ねるのではなく、キャリアオーナーシップを持ち、自らの主体的な意思で働く企業を選択することが求められる。同時に、人生 100 年時代の中で、社会で活躍する期間が長くなる ことも見据え、社会人になった後も継続的な学び直し、時代にあった スキルセットを身につけることが求められる。

持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~

正確かはさておき、要点や問いをシンプルにするため、ChatGPTにも整理してもらいました。

キャリア自律とは、個人が自身のキャリアの方向性や成長の道を主体的に決定し、自らの意思と行動でキャリアを築いていくことを指します。この概念は、企業や組織に依存するのではなく、個人が自分の価値観や目標に基づいてキャリアを設計し、柔軟に対応できる能力を重視する考え方です。

■キャリア自律の特徴
1.自己決定:他者や組織に左右されず、自分自身でキャリアに関する意思決定を行う。
2.責任の意識:キャリアの成功や失敗に対する責任を自身で負い、主体的に行動する。
3.柔軟な対応:変化する環境や状況に応じて、自分のスキルや働き方を柔軟に変える。
4.自己成長:常に自己成長を求め、学び続ける意欲を持ち、新たなスキルや知識を習得する。
5.長期的な視点:目先の利益や短期的な目標だけでなく、長期的なキャリアビジョンを持ち、それに向けた行動をする。

何度か同じ質問をChatGPTに投げてみたところ概ね上記のような内容が返ってきましたが、これ以外に出てきたなかで面白い項目が出てきたのでそちらも紹介します。

キャリアの自己定義:自律的キャリアにおいては、キャリアの成功をどのように定義するかも個人に委ねられます。昇進や報酬だけでなく、仕事のやりがいやライフバランス、社会的貢献など、個人が重要だと感じる基準に基づいてキャリアの価値が決められます。

「キャリアの自己定義」というとちょっと堅い&限定的な気がしており、個人的にはその前段として「自己解釈」と捉えました。どういうことかというと、過去あったこと自体はタイムマシンでもない限り変えられないけど、どう解釈してどう未来に活かすかは自分次第で律することができるのではないかという見方ですね。

これら6つの特徴を全部取り上げるにはちょっと多いので、カテゴライズして3つに絞ってみます。

  1. 自己決定

  2. 柔軟性

  3. 自己解釈

もっというと「自己決定」と「自己解釈」という2つの柱に対して、これらに選択の幅や深さ、持続可能性みたいなものをもたらすのが「柔軟性」なんだろうなと。

キャリアの歩み方「山登り型」と「川下り型」

ところで、キャリアには大きく分けて2つ歩み方があるとよく言われていますね。

  • 「山登り型キャリア」

    • 目標を定め、段階的に計画を立ててキャリアを積み上げていくスタイル

  • 「川下り型キャリア」

    • そのときどきのチャンスや自然の流れに身を任せながら進むキャリアのスタイル

それぞれ異なるメリット・デメリットを持ち、キャリアフェーズだったり、あるいは企業属性や個人によっても相性があるでしょうし、「一概にこうすべき」という類のものではなく”要はバランスが大事”なものだと理解しています。

ふじじゅん的キャリア自律のマトリクス

ここまで、キャリア自律の特徴から見る「自己決定・自己解釈」と、歩み方としての「山登り・川下り」について触れてきました。

ここでふと思いました。四象限でマトリクスを組んでみたらより理解が深まるのではないかと。

縦軸に「山登り↔川下り」、横軸に「自己解釈↔自己決定」をとる四象限マトリクス画像。
ふじじゅん的キャリア自律のマトリクス

(1)第一象限:計画的キャリア選択

「自己決定×山登り」の象限。キャリアビジョンに基づき、自身の持つ選択肢から計画的なキャリアを選択する。

(2)第二象限:キャリアビジョン

「自己解釈×山登り」の象限。自身の成し遂げたいこと、あるべき姿から紐解いたキャリア像。センスメイキングを経て見出だせるキャリアビジョンもあるのではないか。

(3)第三象限:センスメイキング

「自己解釈×川下り」の象限。自身の経験や現有のスキル等を振り返り、未来に対する解釈と意味づけをする。未来ビジョンから過去のキャリアの解釈の言語化に活きることもあると考えられそう。

(4)第四象限:偶発性の取り入れ

「自己決定×川下り」の象限。「会社や上長が呈示する次(短期的)のキャリア」を自らの意思をもって受け入れ、挑戦する。自分自身では考えもよらない選択肢と出会えることもある。この意思決定にはキャリアビジョンやセンスメイキングが役立つと考えられる。(もっとシュッとした表現があったら教えてください!)

ふじじゅんの職歴としての「キャリア自律」バランス

N=1ではあり若干の自分語りも含まれますが、先述のマトリクス等も用いつつ、職歴を振り返ることで自分なりの理解を深めてみようと思います。ここまででなんとなく内容を掴めた方は、読み飛ばしてもらって大丈夫です。

縦軸に「山登り↔川下り」、横軸に「自己解釈↔自己決定」をとる四象限マトリクスに、百分率のバランスをプロットした画像。
ふじじゅんの場合のバランス
  • (1)計画的キャリア選択:10%

  • (2)キャリアビジョン:20%

  • (3)センスメイキング:40%

  • (4)偶発性の取り入れ:30%

全体的に川下りに比重があります。具体の計画性には重きをおいてはいないものの、ざっくりとした抽象度の高いキャリアビジョンは持ちながら、センスメイキングを通じてその時々の選択肢や経験を解釈・決定してきたのかなと思います。

時系列で振り返る

時系列として振り返ってみると、現在のSmartHR入社までは自律的なキャリア形成はできていませんでした。ある程度キャリアの拡張と線型はつくれていつつも、転職に際し職歴を振り返ったのをきっかけにたまたまセンスメイキングされ「点」が「線」になった感覚があります。

前職時代に編集としてテクノロジー系メディアを運営するのをきっかけに、「第四次産業革命」「AI」「テクノロジー」「ビッグデータ」といったキーワードに触れてきました。
先にSmartHRに入社していた、前職時代に憧れの先輩だったarakinにオウンドメディア担当として声をかけてもらった際に、世の中の”働く”を変えうるSmartHRの可能性・将来性にワクワクすると同時に、自分だからこそ発揮できるスキルがあると感じ選考を受けることを決めました。(2017年6月)

入社後は、オウンドメディアを運営しつつ、導入事例やeBook・冊子の制作などコンテンツマーケティング全般に携わるようになりました。また広報経験はなかったものの、「働き方改革」という社会文脈のなかで効果的にコンセプトメイキングしていくうえでシナジーがあるだろうということで、当時の上長の提案で一部広報業務をサポートしはじめるようになりました。
(シンプルにプレスリリースや経営陣・社員の発信量が多くその骨子や内容の壁打ち、原稿チェックするのにある程度リソースが必要だった、というのもあった記憶です)

広報支援業務をやっていたことで経験できた面白いことはたくさんあるのですが、最も印象深いのは「オープン社内報」の立ち上げや編集業務です。まさかSmartHRでの取り組みがnote全体で2.3万件(2024年9月25日時点)を超えるハッシュタグになるとは想像もしていませんでした。

その後、コンテンツマーケティングや広報にとどまらず、ユーザーコミュニティ運営やコミュニケーションデザイン領域を含めたマネジメントなど、川下り型のキャリアのなかで得られた経験が多くあります。

一方で、完全になるがまま、言われるがままだったかというとそんなことはなく、「サーキュレーションマーケティング」という仮説に行き着いたことは、間違いなく自身やチームの「編集」という役割の拡張につながった自身があります。この仮説にたどり着くセンスメイキングがなければ、現在1,600名(2024年9月25日時点)を超えるユーザーコミュニティ「PARK」の立ち上げやグロースにはもっと時間がかかったかもしれないし、自身のキャリアの選択肢の拡張もなかったかもしれません。

また、2021〜2022年ころだったかと思いますがコーポレートミッションに「well-working | 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」が言語化されたのは個人的にデカかったです。

概念として共感しているのに加えて、自身のミッションでもあるなと強く感じました。恐らく、SmartHRで生涯働き続けるかどうかはさておき、自身のキャリアビジョンのテーマとして揺るぎないものになると想像しています。この軸があることで、突飛なキャリアの選択肢を提示されてもおおよそ
センスメイキングを通じて、納得して前向きに挑戦できるんじゃなかろうかと思います。

平たく言うと「山登り」と「川下り」を使い分けること

このように見ていくと、逆算的に「10年後hogehogeするために……」といった計画性だけでは経験できなかったことばかりで、「計画性=自律」ではないんだろうなと思います。むしろキャリアにおけるセレンディピティを取り入れないと、自身だけでは想像つかない到達点や選択肢は描けないのかもなと。逆に流れに身を任せるだけでは個々の経験が「点」にとどまってしまいます。

やはり「自己決定と自己解釈」「山登りと川下り」をそれぞれ柔軟性をもって使い分けられるようにしていくのがポイントなのかもしれません。


最後に改めて個人的な主張。
「過去の経歴そのものは変えられずとも、ビジョンやセンスメイキングによって未来へ向かうための過去の解釈は自分次第で変えられる。その視点も含めたオーナーシップがキャリア自律には重要なんだろうな」という理解をしました。


(関連リンク)


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藤田 隼|ふじじゅん
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