令和のキャリア、どう作る?
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令和のキャリア、どう作る?

珍しく、大学一年生がほとんどの若者層を相手に、ミニ講演する機会を頂いた。「キャリア形成」がお題である。売り手市場にも拘わらず、会場の質問や感想からは、20年前に社会に出た就職氷河期の私たち世代以上に、将来に対する不安が感じられた。自分の転職経験をごくポジティブに語ったつもりが、代表的な質問は「転職するリスクをどう考えますか?」

年功序列社会、終身雇用が崩れ、日本企業と思って入った会社がいつ外資に様変わりするかもわからない。昭和から平成へ続いた規範や暗黙の合意が成り立たない現在、不安も道理かもしれない。世の中の変化が激しいので、正解が長続きする保証もない。そんな令和のキャリアを、どう前向きに作ればいいだろう?

社会人20年生はキャリア中間地点に過ぎない。それでも、自分自身の痛い思いから学び、新卒世代にはこれからのキャリアに活かしてほしい視点を、いくつか伝えたい。

1. コアを見つける
コアとは、外部環境にかかわらず、自分がとことん好きなことである。自分が好きなことは得意になるし、長続きする。一見当たり前だが、これをキャリアに活かすのは意外と難しい。

まず、「自分の好きなこと」を、キャリアという文脈で定義することが難題である。「料理が好き」だから即、「シェフになる」とも限らない。「料理が好き」を一皮めくると、ありあわせの材料から新レシピを発想するのが得意なのかもしれないし、結局ひとに喜んでもらうのが好きなのかもしれない。キャリアに応用するコアを見つけるには、好きな活動のエッセンスを取り出して、共通点を探すといいだろう。

私の場合、一見ばらばらな情報を自分なりに整理・味付けして、伝えるということが好き。なんのことはない、作文好きの高校生時代に原点回帰しているだけだが、いろいろ試して「ああこれだったのか」と合点がいったのは最近である。合点さえいけば、コアをキャリアに活かすことができる。

2. 試行錯誤は当たり前
キャリアは長距離走だ。よほど「なるべくしてなった」職業に就く場合以外は、あるドアを開けてから閉め、別のドアを開くことも起こるだろう。それでいいと思う。特に環境の変化が早いので、何年か経ったら、まったく別の魅力的な機会が射程圏内に入っているかもしれない。

特にいまの職場で不幸せなら、幸せになるために取るべき道は二つに一つ;自分を変えるか環境を変えるかしかない。「置かれた場所で咲きなさい」に抗うようだが、自分を変えるのは難しい。植物ではなく、歩いていける足があるのなら、環境を変える方が近道であることが多いように思う。

私自身、一回「卒業」したはずの会社に10年後に舞い戻った経験があり、「こんなことなら、ずっといればよかったな・・・」と思ったことは何度もある。しかし、他の場所で積んだ経験の引き出しは、多少の昇進遅れなどの負債を補って余りある宝になった。

そもそも、島耕作さながらひとつの会社で順序良く「上がり」を目指すキャリアすごろくはもはや過去になりつつある。多くの場合、令和のキャリアは、到達地点をはっきり決めるものではないだろう。だったら、そのときどきの過程を楽しめばいいのではないか?「バスに乗り遅れたら、飛行機がある」と構えて、試行錯誤や転職のリスクを過度に怖がらないで欲しい。

3. 思い込みから自由に
「大手企業は安泰で、スタートアップは不安定」「外資系は景気が傾いたとたんリストラされる」「官と民を隔てる壁は厚い」など、社会からの刷り込みは多い。学生の相談相手が主に親世代であることもあり、実情が既に変わっていても、まるで「幻肢」のように、これら一昔前の経験則がいまだ現実的に感じられるのだろう。

思い込みはキャリアの選択肢を狭めてしまう。常識は時代により変わるもので、そのスピードはいやでも増している。ならば、常識更新に躍起になるよりも、自分の道を信じて歩くことをお勧めする。

いまの世の中、いろいろな障壁が「多孔質(Porous)」になっているというのが私の実感である。勝手に心理的な壁を作ってしまうのは誠にもったいない。自分次第で、いかようにも仕事とキャリアを定義することができる時代である。

令和の始まりと同期するように、新卒採用の仕組みが大きく変わり、転職する中高年も増えている。私が就職したころは、30歳を超えた転職は難しいと言われていたもので、隔世の感がある。

これからのキャリアは、今まで以上に自己責任。ひとりひとりが創造的にキャリアを作る時代になるだろう。ときどき転んでも愛嬌。個性あるキャリアが花咲く令和の日本になることを願う。

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EY Japanでパートナーを勤める戦略コンサルタントです。世界の流れが大きく変わる今、「一見変わらない日本」がどう変わるのか、日本人がどう生きるかに興味があります。コンサルタントの現場感と外からの視点を大切に、幅広いトピックを扱います。