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ウイルスとの闘いに、AIはなぜ貢献できていないのか

このウイルスとの闘いの中で、AIの貢献は、今のところ極めて限定的だ。

AIやデータの価値は、その予測能力と考えられてきた。その予測力は、素朴に考えれば、ウイルスとの闘いに大いに貢献してもおかしくない。その意味では、何かがおかしい。

ここで素朴な疑問が出る。データは常に過去のものである。
過去のデータを使って、未来が予測できるのだろうか。

この素朴な疑問は、単純でありがながら、多くのAIやデータの専門家も、正面から答えられない問いなのである。

なぜなら、未来は原理的に予測不能であり、過去のデータをいくら集めても、予測できないからである。例えば、コロナ前のデータは、コロナ後の予測にはほとんど無力である。

従来のAIでは、過去のデータを訓練用データと検証用データに分け、訓練用データから学習しモデルを作るのが普通である。すなわち、過去のデータを使って、過去の結果を予測できるかを検証するのである。

しかし、過去のデータをいくら正確に予測できるモデルを作っても、それが未来を予測できるという保証はない。むしろ、状況が変われば、確実に間違うことが保証されているものである。

ウイルスとの闘いのような大きな変化の中で、過去のデータに基づく予測は、まさに確実に間違うことが保証された状況である。だから貢献できていないのである。

過去のデータで、未来を予測するという問題設定自体が、原理的に無理があるのである。

人類は、過去にも原理的に不可能なものを追い求めたことがある。その代表が「錬金術」である。この意味で、データとAIによる予測というのは「現代の錬金術」のようなものである。

だから、我々は思考の枠組みを転換させる必要があるのである。

この予測不能な未来に向けて、データとAIが可能にするのは、予測ではない。

我々がすべきは、未来に向けて適切に行動を起こすことである。
未来は、我々の行動がつくるものだからである。

変化は常に予測不能な形で訪れる。我々がすべきは、時々刻々生じる変化に的確に適応し、むしろ変化を機会に変えることである。データとAIを使う意味は、この「変化を機会に変える」ことにある。我々がすべきことは、未知の変化が常に起きる中で、変化を機会に変えるよう行動し、適応することである。AIは、これを支援するためのものでなければいけない。

このような新しいAIで検証すべきは、未来を開拓し、未来に適切に投資できるかである。予測不能な未来に対して的確に判断し、その背後にある判断基準を変えられるかである。

その意味で、検証すべきは「予測力」ではなく「未来開拓力」である。テクノロジーの目標として目指すべきは「未来開拓力」をもったAIである。これは、従来の「教師あり学習」でも「強化学習」でもない。

「未来開拓型のAI」である。

テクノロジーは、何を目指すか次第で全く異なるものになる。
ウイルスとの闘いにAIやデータが大した貢献をしていないのは、これまでのAIやデータに関するテクノロジー開発が目指すものが、残念ながら違っていたことを示していると私は考えている。未来の予測という錬金術を目指していたのではないか。

我々が、むしろ目指すべきは、変化を機会に変える「未来開拓型のAI」である。これまでの要素技術を、この未来開拓に向け、総結集すれば、この新しいAIは実現可能である。私は、これに向けた開発を既に行ってきた。いよいよ適用フェーズに入った。

この新しい未来開拓型のAIにより、ウイルスとの闘いにおいても勝利をおさめたいものだ。


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