人間関係を焼畑農業で生きるコミュニティロンダリングな人たち🧑🌾
リファレンスチェックという言葉をご存じだろうか。
人事関連の用語で、日本語にすれば「評判確認」。
採用を検討している人物の評判や人柄を、本人ではなく第三者から提供してもらう習慣のことだ。具体的には、前職の同僚に確認する場合が多い。
この習慣は、人材の入れ替わりが激しい外資系企業や欧米では一般的だが、日本では人材の流動性がそこまで高くないことや、何より「相手に失礼では?」と心理的に躊躇されるケースが多い。
それでも昨今は日本でも人材の流動性は上がりはじめ、採用においてリファレンスチェックが普及しはじめている。
もっと言えば、SNSで人の評判がすぐにわかる時代。採用に限らず、あらゆる人間関係においてリファレンスチェックが当たり前になる日も近い。
その時に問題になるのは、私がこれまで遭遇してきた「人間関係で焼畑農業をしている人たち」ではないだろうか。
今日はそんな話。
◼️デジタルはもう裏の顔じゃない
一昔前まで、デジタルはリアルの隠れ蓑だった。
リアルの世界では表の良い顔をしておいて、デジタルの世界では裏の悪い顔を出す。デジタルは身元がバレにくい安全地帯だった。
それがこの10年でガラリと変わった。
リアルの世界では録画録音でもされない限りログが残らないが、デジタルの世界では行動しているだけでログが残る。
例えば愛の告白をしても、激しい口喧嘩をしても、リアルの世界ならその場限りで終わるが、デジタルは違う。例えばLINEでやりとりしようものなら、キャプチャを撮られて、数KBのデータとして半永久的に残る。
誰かに転送され、拡散される可能性も半永久的に残る。
今やデジタルは、リアル以上にリスキーな場所になった。
事実、Z世代はこれを懸念してLINEで告白はしない、というデータもあるほどだ。
しかしビジネスでもプライベートでも、デジタルでのやりとりは避けられない。
そして、あらゆる人間関係がデジタル上でなされるようになるほど、リファレンスチェックはやり易くなる。一昔前なら真偽不明な噂話が、エビデンス(証拠)を伴うことになるからだ。
昨今では開示請求のハードルも下がり、裏アカ、複アカ、どんなアカウントであろうと「匿名」なんてものはあり得ない時代になった。もはや名前と顔でも変えない限り、自分の過去の評判を隠し切ることは不可能なのだ。
例えばお付き合いするかもしれないパートナー候補がいたとして、「付き合う前にリファレンスチェックをさせてもらいますね」なんてやりとりが行われる日が近い。
自分の言動がすべてデジタルに残る時代。人間関係で不義理な行動や問題を起こせば、日本全国、世界中どこへ引っ越しても逃げ切ることはできない時代になりはじめている。
◼️焼き尽くしたらコミュニティロンダリング
私はこれまで、人間関係で焼畑農業をする人たちを見てきた。ビジネスでも、プライベートでも見てきた。
焼畑農業とは、土地を燃やして、その灰を肥料とするやり方だ。短時間で収穫を得られるが、その土地は枯れてしまう。土地が枯れて利益を享受できなくなったら放棄して、次の土地へと移る。そんな手法が焼畑農業だ。
この「土地=コミュニティ」と捉えるとわかりやすい。
人間関係で焼畑農業をする人の特徴はこうだ。
コミュニティーに入った序盤は一時的に盛り上げて利益を得る(火を放つ)。しかしそれは長く続かず、コミュニティーの関係値は悪くなっていく(土地が枯れる)。そうこうしている間に(火をつけた)本人は徐々にコミュニティに居づらくなる。そして「もう私にメリットはない」と感じたら、そそくさと次のコミュニティに移行する。
と、こんな具合だ。
こうしたコミュニティロンダリングとも言える行動をする人たちにとって、リファレンスチェックの時代は厳しい。
これまでは「いつか痛い目に遭うよ」と思われる程度で、大抵はロンダリングに成功していた。ただリファレンスチェックの時代になれば、その「いつか」はすぐに訪れる。
新しいコミュニティに入ろうとしても、悪い噂はエビデンス(証拠)を伴ってすぐに相手に伝わってしまうだろう。
今、芸能界で起こっている暴露合戦を見ていれば、その兆候は明らかだ。
これを「生きづらい世界」と捉えるか「まっとうな世界」と捉えるかは人それぞれだろう。
ただ少なくとも、焼畑農業を繰り返してきた人たちにとっては「生きづらい世界」になっているし、個人的にはそうあるべきだと思う。
焼畑農業で言われる最大のデメリットは「有限な資源を破壊することで、持続可能な農業ができなくなること」だ。
人間関係もまた有限な資源である。
その意識を持つことが、これからの人間関係で最も重要なことだ。