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定年後のダブルインカムを実現するシニア起業の方法

日本では65歳以上にあたる高齢者人口が2020年の時点で総人口の28.7%。これは世界で最も高い高齢化率になる。さらに、2025年には30%を超すと推計されており、1人の高齢者を1.9人の現役世代で支えていかなくてはならない。

高齢者に支給される公的年金は、現役世代から集める保険金と国庫金(税金)が主な財源となっており、それだけでは足りない分を、過去にプールされた年金積立金から捻出する構造だ。年金積立金の残高は約200兆円ある中で、年間の支出額は約2兆円となっている。

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積立金の余力からすると、日本の年金制度がすぐに破綻することなさそうだが、現役世代の保険料や税金負担は重くなり、一方で高齢者の年金支給には複数の選択肢が設けられ、国の総支給額が無制限に増えていかない方向へ向かっている。

令和2年の国会で成立した「年金制度改正法」では、老齢年金の正式な支給開始は現行制度と同じ「65歳から」のままだが、本人の希望で繰り下げできる受給開始年齢は、現行の「70歳」から「75歳」までに拡大された。年金受給を75歳まで待てば、その後の支給額は65歳から受け取っていた人の184%になるのが特典である。※2022年4月に施行

年金受給の開始時期を遅らせるほど、毎月の支給額が増えるのは魅力だが、老後は何歳まで生きられるかわからないため、人生トータルでみた総支給額が損か得かは、人それぞれ変わってくる。また、老後の収入源をどのように考えるのかでも、高齢者の貧富格差は大きく開くことになる。

日本では、二人以上で暮らす高齢者世帯(世帯主が60歳以上)の貯蓄高が平均2285万円となっているが、中央値でみると1,506万円に下がり、300万円未満の世帯が15.8%ある。その一方で、4,000万円以上の世帯も17.3%という二極分化が既に進んでいる。

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高齢者が余裕のある生活を送るには、年金収入に加えて、働きながら副収入も稼いでいくことが望ましい。しかし、日本の年金制度には、月間の賃金収入と年金受給額の合計が一定額を超すと、年金の支給が減額、停止されるルールがある。 そのため、定年後はアルバイト程度の働き方にとどめて、年金頼りの生活をする人が、引退したサラリーマンの8割近くを占めている。

【年金+事業収入の新たな老後計画】

 日本の公的保険制度は、20歳以上すべての国民が加入する基礎年金(国民年金)と、その上でサラリーマンが加入できる厚生年金の2階建て構造になっている。 そのため、定年後のサラリーマンは、個人事業者と比べて年金支給額が多い。

厚生労働省が発表している、平均的な収入(賞与を含めて月収40万円)で40年間働いた場合のモデルケースでは、個人事業者の世帯(夫婦二人)では月額およそ13万円、会社員の夫と専業主婦の世帯では月額およそ22万円の支給額になっている。つまり、両世帯の差額分にあたる月額9万円が、夫が加入していた厚生年金の上乗せ額になる。

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個人事業者の年金受給額は少ないが、定年が無いため、健康で事業が順調であれば何歳になっても働ける。また、国民年金の支給を受けながら、事業収入を稼ぐことにも問題はない。一方、サラリーマンが65歳以降も働きながら年金の給付も受けようとすると、「給与+年金」の合計額が月額47万円を超えたところから、厚生年金(2階部分)が減額または全額停止される仕組みになっている。

そのため、65歳以降もフルタイムのサラリーマンとして働くことは現実的ではく、元気な高齢者の就労意欲を阻害する要因になっているのが実態だ。

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在職老齢年金の支給停止の仕組み(日本年金機構)

この問題を回避する具体策としては、60~65歳を過ぎる頃からは、個人事業者としての働き方にシフトすることが有効になる。在職中の年金停止は厚生年金の加入者のみが対象となるため、個人事業者としての事業収入と、サラリーマン時代の厚生年金を満額受け取ることによるダブルインカムは可能だ。

たとえば、個人の不動産大家としての家賃収入は、厚生年金の減額対象にならないし、会社の仕事に関わる場合にも、雇用されて給与を貰うのではなく、個人事業者としての業務委託契約にすれば、年金を全額受け取れる権利は失わずに、就労収入も伸ばしていくことができる。

大企業の中では、定年退職をした社員を再雇用する制度を設けているが、再雇用後の賃金と年金の減額分をトータルでみると、そのレールに乗ることは得策では無いケースが多い。もちろん、安心や保障を最優先に考えるのであれば、サラリーマンをできるだけ長く続ける選択肢もあるが、仕事のやり甲斐と収入の向上を求めるのであれば、60~65歳を転機としたシニア起業は賢い働き方になるだろう。

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