マーケターはDE&Iにどのように向き合うべきか?
耳にすることが増えてきた言葉「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)」
最近は、ブランドコミュニケーションにDE&Iの概念を正しく理解して、伝えていくことが求められてきていると感じています。
評価される広告表現とDE&Iの事例
世界で評価される広告は、「DE&I(Diversity, equity, and inclusion)」の価値観を反映しているものが増えてきています。
例えば、
Appleのショートフィルム「The Greatest」
Appleが伝えたストーリーを要約します。
日本国内の事例としては、
SmartHRの「職場に必要なのは、あなたのやさしさです?」
こちらの動画がSNSで話題になりました。
事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化に関する改正法が令和6年(2024年)4月1日から施行され、
義務化に適応しなければ…という空気感がある中で、
そもそも「障がい者への配慮って何なんだろう?」
を問題提起したコミュニケーションは、社会的にも非常に重要な働きかけだったと感じました。
DE&Iの他の領域におけるコミュニケーション事例も見ていきましょう。
DE&Iへの経営層コミットを伝えるブランドコミュニケーション
今後、ブランドがDE&Iとどのように向き合うべきかを考える上で、ラグジュアリーブランドの雄LVMH社の動きが参考になります。
4月にLVMHジャパンがレインボープライドに協賛をしたことが話題になりました。
単なるイベント協賛ではなく、DE&Iにブランドとして本気で取り組むことを示すために写真展も同時開催をして経営層も含めてメッセージを出しています。
このようにDE&Iにブランドとしてどのように取り組むかの意思表示が求められていると感じています。
表面的なDE&I取り組みは逆効果
ブランドのDE&Iへの取り組みとして、表面的に綺麗に見せようとすることは逆効果になると感じています。
最近では、LGBTQコミュニティへの支援を表明しながら、実際の企業文化や方針がそれを反映していない場合は、
「ピンクウォッシング」
「レインボーウォッシング」
などと問題視されています。
今でも、プライド月間(6月)にのみロゴを虹色に変更するが、LGBTQコミュニティへの実質的な支援や社内での取り組みが伴わないケースは多いのではないでしょうか?
この問いと向き合って、社内外への発信する内容を考えることが必要になってくるのではないでしょうか。
ちなみに、LVMHは、多様性に対するコミットメント指標をまとめて開示しています(めちゃくちゃ学び多いのでご興味ある方は是非読んでみてください。)
ダイバーシティを意識したキャスティングなども重要であるが…
DE&Iが求められるようになり、障がい者モデルの起用を促すサービスが増えてきているようです。
ブランド側も、わかりやすい打ち手としてキャスティングに障がい者を登用することは増えてきそうです。
多様な方々に、平等な機会が提供されることはもちろん重要だと考えています。
一方で、とりあえず多様な人を登場させよう…
マイノリティの人に表に出てもらって、ブランドの共感を高めよう…
この発想ではダメだと考えています。
DE&Iをコミュニケーショントピックとして都合よく考えない
DE&Iは、組織の仕組みや思想のレベルの話からはじめるべきで、コミュニケーショントピックとして捉えると失敗すると思います。
カンヌライオンでDE&Iが求められているか…みたいな発想はNGで、DE&Iに取り組んでいる"風"の発信になってしまったら逆効果です。
この記事のタイトルに戻ります。
自分自身の答えは、組織の内側・仕組みと向き合い、正しく事実を発信していく態度をもつことではないでしょうか。
マーケターは、このような問いをもとに経営層や人事組織とディスカッションできると、良いブランドコミュニケーションにつなげられると考えています。
この記事で紹介した、Apple、SmartHR、LVMHなどは、これらの問いに答えることができているから、コミュニケーションにも説得力があり、結果的にブランドの信頼につながっているのだと思うのです。
最後に、ダイバーシティの本質は何かを考えるために、もう一度読み返している本の紹介です。
・人種や性別の多様性だけでなく、思考や経験の多様性が重要
・同質的な集団は「集団的盲点」を持ち、問題解決能力が低下する。
・多様な視点を持つ人々で構成されたチームは、新しい洞察や解決策を生み出す可能性が高い
・同じ意見ばかりに囲まれると、外部の情報を系統的に否定してしまう
多様性はなぜ必要なのか、どのように社会・組織に根付かせられると良いのか?を考えて、マーケティングにも活かしていきたいと思います。