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脱炭素社会の実現に向けて、私たちは怠け者のままでいいのだろうか〜需要サイドからのイノベーションの可能性

(Photo by Meg Jerrard on Unsplash)
カーボンニュートラルの議論が活発だ。しかし、エネルギーを供給する側でのイノベーションの議論ばかりで、エネルギーの需要側である私たちのライフスタイルのイノベーションの議論はまだスタート地点にも立っていない。


カーボンニュートラルの目標達成は可能か

次の記事では、各国が2050年のカーボンニュートラルをどうやって実現しようとしているのかを掘り下げて解説している。

例えば、ガソリン車の販売や石炭火力発電所の建設を禁止するなどの規制強化税や補助金などで脱炭素を加速する誘導的な手法。エコカー減税や再生可能エネルギーなどへの補助金をさらに手厚くすること。そして、CO2排出に値段をつけるカーボンプライシング。事業所ごとに排出の上限を定める排出量取引制度など。こういった新たな仕組みが導入されることで、脱炭素はグローバルに加速されると言う。

もちろん、このような仕組みが加速度的に導入されたとしても、さらなる再生エネルギーの技術革新がなければ、その達成は難しいとも言われている。このことはどの国にとっても大きな関心事であるが、すべてエネルギーの「供給サイド」の議論である。

(ナマケモノは怠け者ではないが)怠け者でも脱炭素に貢献できるらしい

では、もう一つの側面。需要サイドからできることはないのだろうか

例えば、夏が暑くなれば、私たちは無限にエアコンの発電量を増やしていくのだろうか。長期的に避暑地で過ごすとか、あるいは真夏の太陽光エネルギーを屋根でキャッチしてエアコンを自律的に回す工夫をしたりすることはできないのだろうか。

国連が「The LAZY PERSON'S guide to SAVING the WORLD」(邦題:持続可能な社会のためにナマケモノにもできるアクション・ガイド)を発行している。次の4つのレベルに分けて、すぐにできるSDGsアクションを紹介しており、内容はとても興味深い。
・レベル1: ソファに寝たままできること
・レベル2: 家にいてもできること
・レベル3: 家の外でできること
・レベル4: 職場でできること

余談だが、このガイドの邦題が動物の「ナマケモノ」を本当の「怠け者」扱いしてしまっていて、ナマケモノの立場から反論したくはなる。ナマケモノはごく少量の食物摂取でも生命活動を可能とするために代謝を抑え、かつ、天敵から身を守るために木と一体となって動かずにいる。つまり、ナマケモノは「究極の能動的な脱炭素生活者」であり、決して、私たちがダラダラとカウチポテトしているときのような、本当の「怠け者」ではない

問題は、そもそも私たち一人ひとりが自分のCO2削減目標を持っていないことではないだろうか。WWFのカーボンフットプリントの計算機を使って、ぜひ自分のCO2削減目標を考えるきっかけにしてほしい。

この質問に答えていくと、洋服の買い換え頻度、部屋の広さ、省エネの実践、自動車の種類、旅行の距離と頻度、牛肉を食べるか、などなど、幅広く自分自身の生活を地球環境負荷の観点から棚卸ししてくれる。

需要サイドのイノベーションの必要性:カーボンニュートラルを原発や技術革新に任せてはいられない

2050年にカーボンニュートラルを実現するために、手っ取り早いのが原発を再稼働させていくことだ。2011年の胸が締め付けられるような想いを持っている人は、これを受け入れたくはないだろう。しかし政府は、将来のいつかのタイミングで、カーボンニュートラルを安全な原発で実現すべき、と言い出す時が来るかもしれない。

供給サイドの論理は、「安定供給を続けるためには、原発も含めた多様なエネルギー供給のオプションが必要」というものだ。再生エネルギーは変動要素が大きいため、突然の国全体のシャットダウンを起こすリスクがあるという。

私たちは、電線をつながず電気を自給自足する「オフグリッド生活」のような、少し不便かもしれないが、「太陽や自然とつながった生活」を選ぶことができるだろうか。需要サイドが気候変動やシステム全体のリスクを理解し、集合的なアクションを起こすことができれば、供給サイドに必要以上のキャパシティを求める必要はなくなるのだ。

一方で、CO2を固定化して土に埋めるなど、技術革新によって脱炭素を進めることも必須だと言われている。確かに計算上、排出した分を回収できれば、一気にニュートラルのシナリオが実現しそうにも見える。

しかしこのような、供給サイドでの技術革新を待つだけで、需要サイドの私たちは怠け者のような姿勢のままで、いいのだろうか。技術革新が進まなければ、その分を排出量取引、つまりお金で解決すればいいのだろうか。いざとなれば原発に頼ればいいのだろうか。

私たちがライフスタイルを変え、個人レベルのカーボンニュートラルを実現するとともに、気候変動を理解し、行動を主体的に変えていく。そのような「美しいライフスタイル」を実現していくような、需要サイドからのイノベーションを起こしていく可能性があるのではないだろうか。

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