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「ポジバカ」と「ネガ利口」

幸福度は、基本的に若い方が高く中年あたりで底辺になり高齢者になるとまたあがるという法則がある。
が、本来一番幸福度が高いはずの若者が幸せを感じられなくなった。不安が増し、希望を持つことも行動することも抑制することでしか安心を得られなくなった。

何もしないことがリスクが少ないと思わざるを得ないようになってきているということだ。

そういう点にフォーカスをあてて書いた記事がプレジデントで公開された。

タイトルはあまり本旨とは関係ないのでぜひ中身をよんでいただきたい(タイトルは私がつけたものではない)。「しあわせ」を条件化してしまうことの呪いについて書いている。

学歴、就職先、年収、家族…など何かを「所有」していなければ幸せを感じられないという思考の罠にハマると「持てない自分は不幸なのだ」と自分に呪いをかけてしまう。

何も所有していないより所有している方がいいだろうと考えがちだが、そう思えば思うほど不幸感って増す。だから中年が一番不幸になるのだ。

若者は、何も持てていないからこそ「根拠のない自信=先読みせずにまず行動する力=ダニングクルーガー曲線におけるバカの山」が本来あったはずなのだが、それを絶対に許さない環境が今は若者を取り巻いている。

これは実に由々しき問題で、その表象のひとつとして「ひきこもり」や「登校拒否」などがあると思うが、そういうわかりやすいカタチではなくても、日常における小さい行動ひとつとっても「何もしないでおこう」という方向にいってしまう。

生きるということは毎日「何かをすること」であり、その行動の循環が血液のようにめぐることなのだが、「何もしない」毎日を積み重ねていくことは文字通り血流が止まることと同じになってしまう。

とはいえ、「未来はよくなる」と思える20代がたったの1割しかいなくなってしまった現状では、そうなってしまうのも仕方がないのかもしれない。

「楽しい日本」などと言ってる首相がいるが、楽しいのは政治家と天下り先のことしか考えてない官僚と利権で儲けてる公金チューチュー業者だけだから。「バカの山」の標高が低くなったというべきか。

もちろん、どんな状況でも能動的に脳天気に「バカの山」を駆け上がる能力のある若者もいるが、これも「恋愛強者3割の法則や「パレートの法則」同様、いつの時代も一定数はいる。そういうポジバカは放っておいてもいい。

問題は中間層の4割で、基本的に環境受身型の人間は、脳天気なポジバカにはなれずに、周囲の状況を見ながら「空気を読んで」行動しがち。

この受身気質が悪いわけではない。環境次第ではこの中間層も「ポジバカ」並みに行動力を発揮(無意識に)していることもあるから。

しかし、今は、この中間層が「何もしないほうが安全」というある種の「ネガ利口」になってしまっている。だから口先だけは達者だが何も行動しないし、失敗して傷つくことを極端に怖れるようになってしまう。

生粋のポジバカは3割、反対に生粋のネガ利口も3割。これは変わらない。が、中間層の4割は環境次第で「擬態ポジバカ」にもなるし「擬態ネガ利口」にもなれるのだ。

たとえば婚姻減も、言ってしまえば、いちいち考えるのではなく行動できる若者という意味の「擬態ポジバカ」が減ったからなんだろうと思う。ただでさえ職場で誰かを誘えばセクハラ扱いされてしまうような状態では無理もない。

擬態であろうと勘違いであろうと、若いうちはこの「ポジバカ」になれることこそが大事。「ポジバカ」はしあわせだからねえ。

なぜかというと、動けばそれだけで心が前向きになるし、動くことでさらに動くきっかけが生まれるし、動くことそれ自体が多幸感を生み出すからだ。

「これやったら楽しいかな?」じゃなくて「やったら楽しかった、以上」なのである。

記事にも書いたが、「結婚したら幸せになれる」のではなく「元々幸せな人間の道の一つに結婚がある」だけ。

結婚という器を入手すれば無条件に幸せという美味しい料理が運ばれてくるのではなく、互いの幸せという食材を持ち寄り、2人でその器に新たな料理を作り出すことが結婚です(不味い料理になることもたまにあるw)。

つまり、「結婚したら」ではなく「結婚するには」先に個人として幸せであることが前提。言い換えるならば、「ネガ利口」ばかりを生み出す社会ではなく、若者が安心して「ポジバカ」になれる環境を整えることが必要なのだろう。


「自分とは何か」なんて考えるような若者が増えるようでは困るのだ。いや考えてもいいけど、考えるだけじゃ困る。

考えるな、動け。なのである。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。