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どちらが重いか?公衆衛生上の利益と個人の自由

“個人の自由は尊重されなければならない”。民主主義、資本主義に生きる我々から見れば当然の帰結である。しかし、その自由を認めることで、公衆衛生上の利益を損なうことにつながる可能性がある場合にはどうなのか、というこの問題は世界中で課題になりつつある。

ワクチン接種に関して、様々なデマが流れているのだ、というテレビ番組を見た。しかし、問題はデマに振り回される人がいる、ということより、そもそもデマなのかどうか、正しいことを判断する手がかりや説明がきちんとなされていないことが問題なのであろう。ふと考えてみると、ワクチンを打つのは仮にかかった場合でも重症化リスクが抑えられるから、以外には答えがなく、それこそ、周りが打ち始めたから打ったに過ぎない気がしてしまう。

こうした問題に今更ながら世界の政府当局は対応を始めた。フランスはワクチン接種証明の提示義務化をはじめ、アメリカは軍人や企業、公立大学等では接種の義務化を促進。ドイツメルケル首相も、遂に10月から新型コロナウイルス検査は有料にする、ことを決定した。

ワクチンや医薬品は人間の英知の成果であることは確かだが、現状のような感染症を止めようとすれば、集団免疫を獲得するしかない。それでもブレークスルー感染が増え、変異株が生まれてくる中では、ワクチン接種だけでウイルスが封じ込められるのか、自信が持てない。

世界はワクチン接種率の高まりとともに経済再開で、2021年の下期以降の景況感見通しを大きく改善させてきたのは確かだが、ここへ来て、ワクチン非接種者をどうするか、一定の方向を打ち出す必要が出てきている。ワクチン接種が科学的にメリットよりデメリットが大きい場合を除き(それもどう証明できるかを考えなければ、非接種者と接種者の間の軋轢になる可能性がある)、今後は接種が義務化されていくのかも知れない。

しかし、義務化するならするで、ワクチン接種のメリットをもう少しきめ細かく説明する必要がある。三回目を打つ必要があるのかないのか。どのタイミングで打つべきなのか。製造者が違うワクチン接種は問題ないのかどうか。新興国での接種率はどうか。同じ国の中でも州や地方による差異はどうか。感染率の高い地域は短期間のうちに意図的に接種率を高めるべきだが、そうしたことへの理解を進めているかどうか。コロナ禍に対抗するのは人間の英知だが、適用や運用に世界中が手こずっていることは明らかだ。

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