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2023年の注目トレンド「ビッグテックから気候テックへ」は実現するか?

気候変動問題に対しテクノロジーを活用することで解決を目指すスタートアップ企業や関連テーマやトレンドのことを英語圏において「climate tech(気候テック)」と呼び、不況下においても勢いが止まらないVCやスタートアップの資金調達環境、ユニコーンの誕生等が話題になり、近年欧米において注目を集めています。

リサーチ会社「HolonIQ」によるClimate Techセクターへの投資状況をまとめたチャート

「気候テック」という言葉自体が国内のメディアで取り上げられる機会が少ないこともありますが、以下の記事内で言及されていたことを見つけました。今回は補足的に関連する最近の動きをご紹介したいと思います。

「ビッグテックから気候テックへ」――。環境分野の採用を支援する米クライメートドラフトなどは23日、米ITのレイオフ(一時解雇)が続くタイミングで企業とIT技術者らを引き合わせるセミナーを開いた。
ウェブサイトには460社を超えるスタートアップの求人情報を紹介。ベンチャーキャピタルの幹部らが「カーボンゼロ」達成に100兆ドル超が必要になるといった試算を示し、参加した約500人のエンジニアなどに「人類のためにこの巨大な追い風に乗ろう」と呼びかけた。

日本経済新聞 2023年1月29日

上記の記事で触れられているセミナーは「Climate Career Week」と題し、1月23日から27日まで開催されました。

Climate Career Week

オンラインで開催された17のセッションには40名のゲストスピーカーが登壇し、15の地域でオフラインのMeetupイベントが行われ、気候テック(climate tech)分野への転職を志向する数多くの転職希望社、積極採用を行っている気候テック企業との情報交換、転職活動促進に取り組んだ様子がTwitterアーカイブ動画等で共有されてます。

上記キックオフセッションにはGoogleやTwitterでの要職を経てClimate Techベンチャーキャピタリストに転身したKatie Jacobs Stanton氏、元StripeでCO2可視化ソフトウェアスタートアップ「Watershed」共同設立者のChristian Anderson氏、元Lyft チーフ・ストラテジー・オフィサー等を経てClimate Tech系VCを設立したRaj Kapoor氏らがスピーカーとして登壇しました。

Climate Career Weekは気候テック分野人材の育成のための教育プログラムを提供する「Terra.do」、ポッドキャスト、3000人を超える有料メンバーが参するSlackコミュニティ、ベンチャーキャピタル等を運営する「MCJ Collective」(MCJは人気ポッドキャストのタイトル「My Climate Journey」から生まれた名前)、元Googleのエンジニアがスタートした最大規模ののSlackコミュニティ(現在は17,000人以上が参加)である「Work On Climate」、そして気候テックスタートアップやVCのネットワーク組織である「Climate Draft」の4団体共催で開催されました。
*以下はClimate DraftとWork on Climate の創業者、MCJ CollectiveとTerraからの代表者がそれぞれの取り組みを発表し、「気候」関連業界へのキャリアシフトについての情報源や心構えを紹介するセッションのアーカイブ動画

ちなみに、驚くのが昨年から現在に至るまで続いているテック業界のレイオフの状況です。世界全体のテック業界のレイオフの状況がリアルタイムで更新されている「layoffs.fyi」によると、2023年1月だけで既に6.8万人がレイオフされ、2022年通年の約16万人を半数近くに達していることが伺えます。そのうち米テック企業が公表した昨年の米国内の解雇は合計約11万人(前年の13倍)、投資家からのコスト削減圧力も強まるなか23年は既に5万人を超えているそうです)。

更に驚くのが以下の記述です。「テック企業を解雇された人の約8割は3ヶ月以内に再就職している」とのことです。

米雇用統計を分析すると、テクノロジー・情報産業の新規雇用者数から離職者数を引いた「流入超」は22年後半で毎月1万人以上。解雇が増えても採用が上回る。米人材サービス会社ジップリクルーターによると、テック企業を解雇された人の約8割は3カ月以内に再就職しており次の仕事には困らない人も多い。

日本経済新聞 2023年1月29日

気候変動分野へのキャリアシフトに関しては昨年秋頃にレイオフに関する報道が注目され始めたころから、頻繁にメディアでも取り上げられてきました。気候変動問題の重要性を感じ、使命感を持って自ら辞職する「Climate Quitting」という言葉も紹介される程でした。以下はTechCrunchProtocolWashington PostBloombergの関連記事です。

「ビッグテックから気候テックへ」のトレンドを取り上げる記事

今回のClimate Career Weekを取り上げた米ニュースサイト「Axios」も「Climate Career Week seeks laid-off tech workers for climate」と題し、気候テック新興企業の熾烈な人材争奪戦が行われていることを紹介しています。ただ、使命感ややりがいがある選択肢であることは認めつつも、以下のような理由で気候テックスタートアップがうまくいかないかもしれないと指摘しています。

  • 現状 気候変動関連の新興企業には、ハイテク企業の社員が慣れ親しんでいるような高給や豪華な福利厚生はないことが多い。

  • 多くの企業で報酬やストックオプションに打撃を与えた厳しい1年を経て、一部の大手ハイテク企業の従業員は、ミッション志向の訴えにそれほど心を動かされないかもしれない。

VCが気候テック分野に投資できる資金がまだ豊富にあること、気候変動対策の重要性、Climate Techセクターの認知度が高まっていく中で、どこまでの人材シフトが行われるかはまだ未知数です。ただ、新しい産業分野の創出という観点から見た際には、あくまで個人的な期待としてClimate Techセクターが大きく飛躍すること、そして日本にもこうした機運が拡がっていくことを願ってます。2023年を通じてこうした傾向がどこまで進展していくか、注意深く見つめていきたいと思います。

*【追記】国内でも 「Climate Tech」への注目の高まりを受けて以下のようなイベントが開催されてます。
なぜ今『Climate Tech』なのか?対談イベント【エレファンテック株式会社 × 東京大学 FoundX】主催:FoundX
2月1日(水) 19:00 -20:00 オンライン開催


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