Into the Unknown:未知の世界へ
今月、日経の一面に「「博士」生かせぬ日本企業」(19/12/8朝刊)という記事が出た。企業が博士を採用しておらず、そのため、博士課程に進学する学生が少なく、これが日本の国際的な競争力を損なう不安材料になっているという指摘だった。
この結論には同感だ。日本企業は、もっと博士を採用し、生かすべきだ。
それでは何故、博士をもっと生かす必要があるのだろうか。
日経の記事では、日本企業が博士のもつ「専門性」をもっと重視すべきと論じている。
本当だろうか。というのも、今、社会が必要なのは専門性ではなくなっていると思うからだ。
そもそも専門性や専門家が生きるのは、方向が明らかで、どんな技術が必要かが明らかな仕事である。そのような仕事の代表は、ロードマップがある程度みえる、いわゆる規格大量生産の開発であり、半導体やディスプレーやストレージなどがその代表であった。
今、世の中は、そのような規格大量生産の時代ではなくなった。需要は、多様化し、変化する時代になった。すなわち、先が見えない時代になっているのである。
この時に必要なのは、基本に立ち戻って考える力であり、未知の状況でもやっていけるという自信である。
実は、この「常に基本に立ち返って考え、未知の状況でもやっていける自信を持つこと」を学び、育むのが博士過程なのである。安易な「専門性」を得るところではない。
そして、これが今実社会がもとめていることなのである。だから企業は博士を採用すべきなのである。
そして、これが今のAIの使い方(即ち過去のうまくいったことを繰り返すためにデータとAIを使う)が間違っていると思う理由である。
「アナと雪の女王2」の主題歌は「Into the Unknown」。タイトルが選ばれたのは、偶然ではないと思う。
この未知の世界に自信を持って進む力こそ、今社会が求めるものだからだ。
新しい年には、無限の未知の世界が拡がっている。だから進もう。