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東京一極集中解消の定着に、早期退職人材活用で地方のDX推進を

新型コロナウイルスの影響を受けて、企業が東京などの大都市圏から、その周辺部を中心に本社が移転しているという。

これに先立って、本年初頭には、東京への人口集中が減速しているというニュースもあった。

また、3大都市の地価も下落しているそうだ。


これだけを見ると大都市への一極集中が弱まってきているようにも見える。

ただ、冒頭の記事の企業移転については、その大多数が中小企業が中心となっていて、売上高1億円以下が約6割。誰もが名前を知っているような大企業が本社移転を決めたのは、ここしばらくで言うとパソナぐらいであろうか。まだまだこうした流れが定着したと判断するのは早計だろう。

人口増減についても、流入と流出の両方で見なければならず、東京からの転出者が増加傾向で転入者が減少傾向とは言ってもなお、コロナ禍の2020年に東京の人口は増えている。また記事でも指摘されている通り積極的に地方に転出しているのではなく、職を失って生活コストの高い都心から郊外あるいは地元などにやむなく転出しているというケースも含まれる。また、やはり記事で指摘されているように、女性の働き口は男性に比べればやはりまだまだ地方では少ないのが実情ということで、今後、女性の活躍がますます期待されているという文脈では、地方での女性の良質な就労機会が充実しない限りは、女性の東京への人口流入は引き続き続くものと考えておくべきだろう。

そして、地価の下落も、主には現在の経済活動への制約の影響を反映したもので、これと3大都市から地方への経済的な重心の移動を示すものとして定着する流れであるかどうかは、今後の動向含め精査する必要がある。


これらから、東京都心への企業や人口の一極集中が解消に向かいつつあると考えるのは早計であるとは思う。ただ、コロナ禍をきっかけに、その理由が積極的なものであれ消極的なものであれ、そうした傾向がいま出ていることは事実だ。

この傾向が望ましいのだとすれば、それをさらに推し進め、定着させていく政策を国や自治体が考えていくべきだろう。

その際に1つのキーとなりうるのは、コロナ禍によってますます実施する企業が増えている、いわゆる早期退職制度によって企業を退職する人材が向かう先である。

一般的に早期退職制度は中高年の人たちが主な対象であり、こうした人たちは再就職先・転職先を見つけることはそう簡単ではない、と言われている。

年齢にもよるが、こうした人たちは子育てにも一定のめどがたち、 早ければすでに子供が巣立って夫婦二人の生活を考えれば良いライフステージに達している人たちもいる。

こうした状況になれば、子育て中の年代よりも東京を離れやすくなるし、また子育てが終わると今度は親の面倒を見る必要も発生しやすい年代でもある。そうであるなら、親が地方にいるのであればその近くに転居するということもまた、現実的な選択の1つだろう。

そうであれば、こうした早期退職によって次の人生を歩もうとしている人たちに対して、比較的若い働き手・住人を受け入れたい地方都市が受け入れる土壌作りをすることは考えられるのではないか。

一つは、住む場所として、空き家を提供することが考えられないだろうか。空き家問題は、これも地方創生や少子高齢化の問題とも相まって長らく課題が指摘されながら、なかなか思うように解決策が見つかっていない。

早期退職する年代の人たちは、すでに東京かその近辺に家を買ってローンをまだ払い続けている人たちも多いだろう。そうであればこうした人たちの持ち家は、他の人に貸すかまたは売却して、地方に比較的安価に住居を見つけることができるのなら、特に首都圏の都心に住む場合には住居費が大きな負担となっているだけに、転居しやすい理由の一つになるのではないか。

もう1つは働き口の問題である。これまでも東京の一極集中が続いてきた原因の1つは、女性ばかりでなく男性にとっても働き口の問題があったと思う。

もちろん、企業が早期退職の導入を進めているのは人員整理したいという意向が働くためであるから、そうした企業が新たに人を雇う動機があるかといえば、専門性のあるスキルがある人材を除けば、そうしたことはなかなか期待することができないかもしれない。

一方、昨今バズワードになっている DX の推進の観点で見ると、日本の企業の多くにとって、特に地方の企業にとっては、DX以前に「デジタル化」、もっといえば「OA化」をどう進めるか、というレベルで課題を抱えているところも少なくないはずだ。生産設備は最新式のものに入れ替えたが受注は電話とFAXでという企業や、受発注システムはあるが導入したのは20年前で使い勝手が悪くシステムの不備を人間が手作業で補っている、といった類の事例は枚挙にいとまがない。

こうした状況を、言ってみれば「地域おこし協力隊」のDXに特化したミドル・シニア版といった仕組みで解決できないだろうか。 各地域の企業のデジタル化を推進し、その先に DX 化の推進とそれによる生産性改善も見据えた形で、東京ではありふれたデジタルの環境を当たり前に使ってきた早期退職人材が、地域の企業のデジタル化の推進に寄与する制度を行政が後押しすることはできないだろうか。

新設されるデジタル庁の取り組むべき課題は多いが、コロナ禍で大きなダメージを受けている経済の立て直しを、特に人材面で手薄になりがちな地方経済に対し、早期退職や失業で次の行き場を探している人たちとマッチングする効用はあるのではないだろうか。

また、そうしたDXやデジタル化をサポートする移住人材が起業する仕組みを整えることも有効ではないかと思っている。

いわゆる「スタートアップ」の起業支援は、国が制度を整備し全国の自治体にその気運が広がった。

だが、起業は何も、いわゆる外部から資金調達をし IPO や大手企業に買収されるなどのエグジットを目指すスタートアップだけではない。手持ちの資金などを活用して、地味ではあるが重要な地域の屋台骨を支える形の起業というのもまた行政が特化して取り組むべき課題ではないか。すでに様々な起業支援制度はあるのだが、地域のデジタル化・DX化に特化し、東京など大都市圏から移住する人に対象を絞ったものがあってもよいように思う。こうした企業は地方創生の土台を作っていくことになるだろうし、それが、デジタル版の地域おこし協力隊的な制度とシームレスに連携して、それがうまく機能すれば、東京など大都市圏からの移住者も少なくても経済的に地域に根を下ろすことができる。

言うほど簡単ではないかもしれないが、スタートアップを生み出し成功させることも言うほど簡単ではない。スタートアップを生み出す起業を、主に若い世代に対して行政がサポートするのであれば、ここで提言したような早期退職者を中心とした U /I /Jターンの人達の起業をサポートし地域全体の底上げを図る施策を考えることも、自治体そして地域経済にとって有益なことではないだろうか。

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