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海外市場で国内市場と同等のビジネスをするために外国人社員と働く

COMEMOの投稿募集テーマとして外国人社員が取り上げられた。ここに来て、外国人社員についての関心が高まっているからであろうが、その理由は、言うまでもなく我が国の少子高齢化にある。

少子高齢化によって外国人社員が注目される理由は2つある。

1つ目の理由は、国内労働市場で働き手が不足するためである。これは言うまでもない。最近見かける報道の多くは、人手不足を補う観点で外国人を採用するという話だ。この場合には、一般的にはその外国人社員に日本人の社員と同じように働いてもらうことを期待する動機が大きくなるだろう。端的に言えば、日本語を使って、日本企業の慣行やしきたりに従って「日本人のように」仕事をすることを求めるスタイルだ。

ただ、このスタイルでの外国人社員の採用がどこまで定着するのか、先行きは不透明だ。果たして、日本で働くことの難しさに見合う報酬を、日本企業が外国人社員に対して今後も出し続けられるのかが不透明だからだ。

一般的に、いわゆるホワイトカラーで、2019年までなら「オフィスワーク」と呼ばれていた仕事の多くは、非英語圏の国であっても英語が出来れば仕事になるケースが少なくない。いわゆるプログラマー・エンジニアと呼ばれる職種などはその典型だろう。ところが、日本で日本企業の一員として働く場合、通常は日本語を必ず習得しなければならない。現にかつて私が働いていた大企業の外国人社員で日本語をしゃべれない人はいなかったどころか、非常に高いレベルで日本語を使いこなしていたし、採用基準として「日本語が流暢であること」が示されていた会社もあった。

また同僚や上司となる日本人が外国人と働くことに必ずしも慣れていない場合も多いので、言葉だけではなく様々な慣習や文化的な面でも、少なからず日本に合わせる必要がある。こうしたことから、外国人が日本で働くことは、直接仕事に必要なスキル以外の負担が他国に比べて大きいと考えられる。こうした負担に見合った報酬を出せるのであれば、それを納得して応募してくる外国人社員も期待できると思うが、果たして日本企業は今後それを維持できるだろうか。大きくは人件費抑制でしのいできたのがここ数十年の日本企業の姿ではないだろうか。

国内市場に関してはデフレ傾向であったため、日本にいる限りはあまり感じずに済んでいたが、国際比較をすれば日本は「安い国」になっており、それは賃金に関しても例外ではない。

こうしたことを考えると、1つ目の理由での外国人社員の起用は、今後どうなるか、先行きは分からない。

もう1つの理由は、少子高齢化に伴って我が国の人口が減ることにより、需要が減り国内市場が縮小するなかで、業績を維持し伸ばしていくためには海外市場を正面に据えて本格的に開拓していかざるを得ないためだ。

海外市場に目を向けなければ生き残っていけない時に、外国人社員と日本人社員が混ざり合って働くことは、お題目的な「ダイバーシティ」を超え、生き残っていくための必然であり、海外事業部門にとどまらず、全社的な戦力として外国人社員が今後注目されるようになると考えている。

実はこちらの方が外国人社員を必要とする切実な理由、期待することになっていくと思うのだが、この点については、1つ目の理由に比べるとまだあまり大きく注目されていないように感じる。

私が取締役を務めているスタートアップ企業・キャスタリアは、まさにそうした役割を外国人のメンバーが担っている。今でいうエドテック領域で「日本発の世界企業になる」という目標を掲げて創業されていることもあり、一般的な日本企業とは違った外国人の戦力化を行っている。

通例は、いわゆる日本の雇用形態でいう正社員として雇っているわけではないのであえてメンバーと書いたが、インターンも含めた外国人を、出身国への事業展開の足がかりを作ったり、海外において違和感のない国際的な企業としてのブランディングを行う上で、欠かすことのできない人材として起用している。会社のロゴやサイトのデザインはブラジル人のメンバーが制作・デザインしたものだ。

雇用形態は、その社員と会社双方の希望や事情を考慮して決めており、一度会社を離れた人が再び働くいわゆる「出戻り」の場合もあって、小さな会社とはいえ、最近注目されるようになった「アルムナイ」のネットワークも、日本人も含め自然に形成されている。

従来型の日本企業であれば、国内事業部門と別に海外事業部門があり、そこに外国人社員が在籍したり、あるいは海外拠点で現地採用の社員が在籍するというスタイルが典型だろう。キャスタリアにおいては、日本人メンバーについて海外と国内の部門や担当の区別をせず、同じ人が国内の事業も海外の事業も同時に担当している。これにより、国内事業部門と海外部事業部門の対立や、組織として一体感を欠く、といったことが起きない。小さい組織ならではともいえるが、国内と海外で担当を分けようと思えば分けられるところを、あえてそうしていないのだ。このため、外国人メンバーも特定の日本人メンバーとしか仕事をしない、ということが起きない。

こうすることで、日本人メンバーは国内外両方の市場を見ることになるし、外国人メンバーも複数の社内の日本人と仕事をすることになるため、それぞれ比較の対象があり、視野狭窄に陥りにくい。同一人物が担当する異なる業務やカウンターパートの間で、1つの経験を有効に活かすフィードバックループが働いて、業務スキルや業務効率の向上がスピードアップしているように感じる。

この前提として、日本人メンバーがビジネスにおいて英語を使えることがあるし、そうした状況に置かれるので一定の英語力が身についてくる。まだビジネスにおいて英語を使える人が十分にいない日本の状況で、日本人社員で英語力を持った人たちを、必要な人数雇用できるかという問題があることは重々承知している。しかし、将来的に日本企業が売上を伸ばして行こうと思った場合、海外市場も国内市場と同等かそれ以上に取り込んでいかなければ難しい。それは人口が減るこの国において避けられない規定路線であると言ってよいはずだ。日本人側が英語を使えるなら、外国人も英語が使えれば仕事になり、高度な日本語を習得することが採用の前提にはならないため、よりその人の本質的なスキルや能力による採用が可能になる。

日本人と同じように働いてもらうために外国人を雇うのではなく、外国の市場でも国内市場と同じようにビジネスをするための必然として、外国人社員に出身国や出身地域の水先案内をしてもらい、また国際的に通用するビジネスの基盤を一緒に構築することを期待する、という発想の必要性と重要性が、今後顕在化してくるのではないだろうか。

#日経COMEMO #外国人社員に何を期待しますか  

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