引いて増やす、これからのマネジメント 〜#管理職は必要ですか
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引いて増やす、これからのマネジメント 〜#管理職は必要ですか

どうもどうも、uni'que若宮です。

日経COMEMOから「#管理職は必要ですか」というお題が出ていますので、マネジメントについて試行錯誤しながら考えていることを書きたいと思います。
(最近個人的にアート思考の観点からドラッカーの『マネジメント』を読み直す、というのをやっているので、ドラッカーも引きながら書きます)

マネジメントは「管理」から「活用」へ

「#管理職は必要ですか」

こんな問いかけが「今」される背景には、リモートワークへのシフトもあるでしょう。コロナ禍でリモートワークが増えてくると「勤怠管理」が今までとは変わってくるからです。「残業」もそうですが、複業やジョブ型雇用があたりまえになると、「働く」ということは「○時間働いた」とか「勤務時間中」「時間外」とかいう概念自体が外れてきます。

在宅ではオフィスの中にいる時のように、社員が「何をしているか」はよくわかりません。これまで「何をしているか」を把握し、不測の事態が起こらないようにと「コントロール」していた「管理」職の方にとってはこれは不安かもしれません。

実際、リモートになっても、なにかと「出社」「退社」「休憩」を申告させたり、「日報」などで細かく進捗を報告させたり、アクセスログまで見て「管理」しようとする企業もあるようです。

以前、副業禁止についても言ったことがあるのですが、

「常に把握してコントロールしようとする」というのはある種「嫉妬深い彼氏」に似ている気がします。あまりやりすぎると、相手は去っていってしまうでしょう。彼氏に限らず親子でもそうですが、監視や束縛によってしばしば自由が奪われ、そのひとの魅力が十分に活かされないように、「管理」はリスクやデメリットを避けようとするあまり、メリットを殺してしまうようなところがあります。

なので僕自身は「マネジメント」は「管理」ではなく「活用」と訳すべきだと考え、心がけています。

一般的に、マネジメントは「管理」と訳されることが多いように思います。
代表例が「マネージャー」で、「管理職」と訳される。

しかし、たとえば「アセット・マネジメント」という言葉を考えてみましょう。「資産運用」と訳されます。アセットマネジメントは資産をなくならないように「管理」するだけではなく、それを投資運用して「増やす」ことが重要です。
同じように、「人材マネジメント」という時、それは「管理」職である上司が部下を見張り、コントロールすることだけではないはずです。

人材それぞれの個性をみて、最適な配置をし、チームとして成果が最大化するように「活用」する。
それこそが「うまくする、なんとかする」という意味の「manage」という言葉が示す、本来のマネジメントではないでしょうか?

「管理」を辞書でひくと、

1 ある規準などから外れないよう、全体を統制すること。「品質を管理する」「健康管理」「管理教育」

という意味が最初に出てくるように、「規準から外れないこと」を目指します。「管理型のマネジメント」は「おなじが価値」で「ちがい」が不良品や事故のもとだった「工場のパラダイム」のマネジメントです。

しかし今の時代は「VUCAの時代」と呼ばれるように正解がなく、不確実性の高い時代であり、「おなじ」が価値になりづらい時代です。

「上司」や「先輩」が「正しい」ならその通りに行動するように「管理」し、それを「再現」「複製」すればよかったのですが、ユニークな「ちがい」が価値となるこれからのマネジメントでは、それぞれの個のいびつさを活かし、画一的にならずに「予想外」が生まれる環境をつくる「活用型のマネジメント」が必要になってきます。

リスクを「減らす」のではなく「増やす」

これまで、管理型のマネジメントでは「時間」や「コスト」や「リスク」など、「減らす」ことが一番に求められてきたように思います。しかし、ドラッカーも言うように、企業活動とはむしろ「増やす」ことでなければなりません。

企業活動からリスクをなくそうとしても無駄である。現在の資源を未来の期待に投入することには必然的にリスクが伴う。まさに経済的な進歩とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる。リスクをなくす試みはもちろんのこと、リスクを最小にする試みさえ、リスクを非合理的で避けるべきものとする考えが底にある。だがそのような試みは、最大のリスクすなわち硬直化のリスクを冒しているといわざるをえない。(ドラッカー『マネジメント』。強調は引用者)

そしてこれはまた、「人」をどのように扱うか、という問題でもあります。

「人こそ最大の資産である」という。「組織の違いは人の働きだけである」ともいう。事実、人以外の資源はすべて同じように使われる。
マネジメントのほとんどが、あらゆる資源のうち人がもっとも活用されず、その潜在能力も開発されていないことを知っている。だが現実には、人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが、人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。(『マネジメント』)

「人は資産」といいつつ多くの企業が人を「資産」ではなく「コスト」のように扱っている、というドラッカーの指摘はマネジメントの本質を見直す上で重要な指摘だと思います。ドラッカーが半世紀近くも前にこれを言っていることに驚愕するわけですが、同時に半世紀経っても人をコストと考えている企業がまだまだ多いことは少し悲しくもあります。

「アセット・マネジメント」が資産を適切に運用して増やすように、人材もまた適切に活用し、組織として「リスクを負う能力」を「増やす」ことこそがマネジメントなのです。

しかし多くの企業において、「管理職」は残業時間や費用(=コスト)を把握し、その「許可」を出す決裁をするだけになっていたりします。「リストラ(再構築)」がほとんど「人員削減」と同義に捉えられてしまっているのもその表れな気がしますが、「適材適所」といっても、「人という資産」の本質的な「有効活用」を考えていず、コスト削減の目線でしか考えていない「管理職」も多いのです。

では、「活用」時代のマネジメントでは何を意識したらよいでしょうか。組織の価値を「増やす」ために、逆説的ながら「4つの引く力」が重要ではと考えています。

引く力①:引きつける

「価値のパラダイムシフト」と合わせて、「組織のパラダイムシフト」も起こっていると考えています。

20世紀は左側の「SKYSCRAPER(高層ビル)型」が組織のモデルでした。「上司」とか「上席」などと言われるように、マネージャーは「上」を志向し、上にいくほど狭くなるイス取りゲームをしています。高層ビル型の組織を支配するのは「重力」です。仕事は「落と」されたり「押し付け」られたりして、上から下へと「圧力」とともに伝わっていきます。

それに対し、複業やリモート時代のこれからの組織は右側のように、宇宙空間のような構造になってきています。個は一箇所に集まるのではなく離れていて、複数の組織と関係を持って、その時々で距離や関係性を変えていきます。そこにはすでに「上下」という概念がありません。(リモート時代になってもオンライン会議に「上下」をつくろうとする企業もあるようですが…)

SCYSCRAPER型の組織を支配する力が上から下への「重力」なら、STARS型の組織の力学は「引力」です。

旧来型のオフィスのように密閉されたところであれば(セクハラ・パワハラのように)「圧力」がかかってもそこで我慢してたかもしれませんが、一社にとどまらず複数の「開疎な」活躍の仕方が普通になれば、「圧力」はむしろ人を遠ざけるものになってしまいます。

大事なのはメンバーが集まりたいような「引力」をつくることです。企業のヴィジョンはもちろん、日々のミーティングでも、「押しつける」のではなくメンバーが自然に集ってくるような「引きつける」お題を出せるマネージャーが「活用型」のマネージャーなのです。

引く力②:引き算する

ドラッカーはまた、

「自らの組織に特有の使命を果たす」(『マネジメント』)

ことこそマネジメントだといっています。アート思考的にいえば「ユニークバリュー」ということになりますが、ユニークバリューに集中するために重要なのは「やらないことを決める」ことです。自社や自組織には関係ない使命は「やらない」と決めることこそがマネージャーの仕事なのです。

自らに能力のない仕事を引き受けることも、無責任である。それはむごい行動である。期待を持たせたあげく失望させる。…(中略)…特に組織は、自らの価値体系に合致しない課題に取り組むことを避けなければならない。(『マネジメント』)

これは一見すると「増やす」ではなく「減らす」行動であるかのようにも思えます。しかし大事なのはあくまで「自分たちにしか提供できない価値」(=ユニークバリュー)です。「特有の使命」ではないことをやめ、自分たちのユニークバリューの比率を上げていくほうが、「価値を増やす」ことに繋がるのです。

多くの企業や組織では「やる必要がないこと」が漫然と惰性的に繰り返されたり、業界の常識や「ちがいのない価値」にかかずりあって社員が疲弊してしまっていることがあまりにも多いように思います。

これからのマネージャーは自分たちの資産を活用して増やすために、「やらないこと」を引き算することが大事になってくるはずです。増やすべきは「仕事」そのものではなく「価値」なのですから。

引く力③:引き出す

3つ目の「引く」は育成に関わることです。

「工場のパラダイム」の「管理」がなぜ有効だったか、というと、ある程度正解が存在し、「上」に立つものがその正解に近かった(少なくともそう信じることができた)からでした。それ故、育成も基本的には上から下へ、という構造でした。下の者は「上がいう通り」に動いているだけで「学び」があったのです。

しかし(実はあらゆる教育がそうですが)正解がない時代には、「教える」ということが原理的に破綻し始めます。IT業界ではデジタルネイティブやモバイルネイティブのほうがしばしばスキルが高いという「年功序列」の逆転が起きますが、「先に生まれた」先生や先輩の方がすぐれていて「教える」ことができる時代は終わりつつあるのです。

とはいっても、「育成」が不要になったわけではありません。人はなかなか自分だけでは育てないからです。育つためには「きっかけ」が必要です。

よくこれからの教育において必要なのはティーチャーではなくファシリテーターになってくる、という話をするのですが、

先んじた人が答えを知らず、さらには答えがない時代に後輩を育成するためには、ちょうどワークショップのファシリテーターのようにチームメンバーの意見や持ち味を引き出すことが重要になってきます。「やり方を教える」のではなく、面白い「お題」を出してそれぞれの個性や能力を引き出したり、対話によってその人が夢中になれるような「その人の目標」を引き出す力が重要になるのです。

引く力④:引き受ける

そしてまた不確実な時代だからこそ、いざという時の決断やなにか問題が起こった時の責任から逃げ出さずに「引き受ける」ことも必要です。よく「心理的安全性」といいますが、何が起こっても大丈夫だ、と思えるからこそリスクテイクができるからです。

チームでの仕事というのはそれぞれのメンバーの自発性にまかせてもよいでしょうが、最終的にここから逃げてしまうならそれはいわゆる「丸投げ」でしかなく、マネージャーとして機能していないことになるでしょう。(大企業的な組織では仕事だけでなく最後の責任まで「押し付ける」管理職も残念ながら多いのですが…)

管理職は必要か?

さて、これで冒頭の問いに答える準備ができたでしょうか。これからの時代に「管理職」は必要か?

僕なりの答えは、「部分的にはなお「管理」も必要ではあるがその重要性は大きく下がり、「活用職」へとアップデートされた上でそのごく一部となるだろう」というものです。

時代は一足飛びには変わりませんし、ほとんど変わらない職業もあります。インフラなど安定性こそが重要な事業もありますし、「管理型」の業務もなくなるわけではありません。しかし、本当に反復や再現を「管理」する業務は徐々にAIや機械に置き換えられていくでしょう。

「マネジメント」は重要であり、むしろこれまで以上に重要になってきます。そのために今回述べたように、「管理型のマネジメント」を超え、「増やす」ための「活用型のマネジメント」へのアップデートが必要なのではないでしょうか。そしてそれは「引きつける」「引き算する」「引き出す」「引き受ける」という「引く力」によって「増やす」マネジメント術です。

また同時に、個人の「セルフマネジメント」も重要になってきます。ドラッカーは

チーム型組織は、自己規律を必要とする難しい組織である(『マネジメント』)

と述べていますが、マネージャーだけがアップデートされても失敗に終わってしまいます。実際、弊社でもこの意識の共有が十分でないためにすれ違ったり、失敗したことがありました。組織の進化は、マネージャーのみでできることではなく、メンバーのアップデートと両輪でされなければならないのです。そして「セルフマネジメント」とは「自分の価値」を最大化する「自分の活用術」であり、そこでも「引きつける」「引き算する」「引き出す」「引き受ける」という「引く力」が大事だと思います。

マネージャーもメンバーもアップデートされ、自律的にマネジメントする組織は「コミュニティ」に似てきます。ドラッカーは「知識労働」への移行によってそうなることを予言していましたが、

つまるところ、フルタイムの従業員さえ、これからはボランティアのようにマネジメントしなければならない。有給ではあっても、彼らには組織を移る力がある。実際に辞めることができる。知識という生産手段を持っている。
動機づけ、特に知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。挑戦の機会が与えられなければならない。組織の使命を知り、それを最高のものとし、献身できなけれはならない。よりよい仕事のための訓練を受けられなければならない。成果を理解できなければならない。(『マネジメント』)

いま「コミュニティ」が注目されているのも、いよいよ旧来の管理型のマネジメントが通用しなくなっていることにみんなが気づき始めたからでしょう。

uni'queではさらに一歩進んで事業自体をコミュニティとして行う「B as Community」というあり方を実験しているのですが、

これからの組織は「管理職」だけではもはやマネジメントできないのです。

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東洋経済「すごいベンチャー100」uni'que CEO、 ランサーズタレント社員 (最近の興味)編み物としての建築←コアバリュー、アート思考、新しい働き方、新しい教育 ←DeNAで新規事業 ←NTTドコモで新規事業 ←美学藝術学研究者 ←アート・音楽イベント主催 ←建築士