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結婚相手に求める新条件「3生」に対抗する男達の「3M」

出生率のデータが出るたびに、日経にかかわらず、どの新聞もテレビも判で押したような見解が出るんですが…。 

これらの課題は長年、繰り返し指摘されてきた。だが十分な手立てがないまま、時間ばかり過ぎた。少子化は社会や経済の活力を奪い、社会保障の維持も難しくする。もはや一刻の猶予もない。(中略)政府は強い危機感を持って改革に取り組み、希望を阻む壁をなくしていかねばならない。

また、信濃毎日新聞にもほぼ同様の社説が出た。何か申し送りでもあるのだろうか?

これまでの対策の根本的な問い直しが欠かせない。結婚や出産は個人の自由だが、安心して選択できる社会をつくる責務は、第一に国にある。危機感を持って力を尽くすべきだ。



どちらも、少子化は国や政府の無策のせいで、政府がなんとかすれば解決できるはずという論法です。もし、これを本気で思って書いているとするなら、むしろそれこそとんでもない無知だと思うし、逆に、「実際、少子化解決なんて無理だよ。だけどそう表立って言えないんだよ」という縛りで、メディアが茶番記事を出しているのだとすれば、それもまた罪だと思う。

何度も言うように、少子化は人口メカニズムとしての当然の帰結であり、日本だけの問題ではなく、世界的に少子化(少産多死)の時代に突入します。

アフリカを除くすべての国は今世紀中に人口減少へ転換し、2100年までにはアフリカを加えた世界の人口すら減少に転じます。

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但し、冒頭の日経記事には、ちゃんと事実も書いてあって「少子化の最大の要因となっているのは、未婚化、晩婚化だ」というのは正しい。正しいからこそ、少子化解決は絶対に無理なのです。

みんな結婚しなくなるから。

みんなといっても全員ではない。多分、有配偶率が50%を切ることはないでしょう。半分は結婚します。しかし、半分は未婚及び離婚死別で独身となった人達で占められます。これは僕が妄想していることではなく、厚労省の機関の社人研がそれこそ1990年代から予測していたことです。

より正確に言えば、「結婚持続率(婚姻率から離婚率を差し引いたもの)」が下がり続けるので、それに伴い、子どもの数も減少します。

「いやいや、おかしい。今でも結婚したい人は男女とも9割もいるじゃないか」とすぐ反論する人いるんだけど、いい加減不都合な事実から目をそむけ目のはやめてください。何度も説明していることなので、詳しくはこの記事を読んください。

その上で、今日は、結婚したいとかしたくないというレベルを超えて、もはや若い男女は「避婚」モードへ突入しつつあるのだな、という感想を書きます。

何年かに一度、「結婚相手に求める条件」というのが話題になります。「3高」とか「3平」とかのあれです。そして、その最新版が出たらしいのですが、それについてツイートしたところ、いろいろ反響がありました。

まず、最新の条件とは「3生」だそうです。「生存力」「生活力」「生産力」のある男性が求められているそうですよ。

笑ってしまうのは、「生産力」。

予期せぬ出来事から立ち直れる精神力と、新たな道を切り開ける人脈と人望を持つ人間力

そんなやつそういういないだろ?いたら、結婚どころか起業して大成功するのではないだろうか。

というか、予期せぬ出来事で苦境に陥った時、互いに互いを補って、支え合うというのが夫婦なんではないの?もっといえば、一人ではくじけてしまいそうなとき、誰かが傍にいてくれることで安心できるという性格の人がそもそも結婚や家族を持てるとも言えるわけです。勝手に一人で立ち直れるなら、別に家族も結婚もいらないのでは?と思うわけですよ。

ぶっちゃけ「3生」の「生」を全部「金」に変えた方がわかりやすいですね。

「金存力=金あるか」「金活力=金を使わせてくれるケチじゃないか」「金産力=金を稼いでくれるか」。

求めているのはそういうことでしょう。

「3生」じゃなく「3金」です。

ちなみに、今までの条件は以下の通りです。今までも、金というか経済力条件は必ず入っていましたが、それ以外に容姿や性格もありました。今回、そんなものはもうあまり求められていないようです。

3高とは「高学歴・高収入・高身長」 3平とは「平均的年収・平凡な外見・平穏な性格」 4低とは「低姿勢・低依存・低リスク・低燃費」。より詳しい解説は以前COMEMOでも書きましたので、そちらをご参照ください。

まあ、これが世の中の未婚女性の総意ではないので、いちいち事を荒立てる必要もありませんが、少なくとも時代がどんなに移り変わっても、女性が結婚に求める「男の経済力」は消えたことはないので、本質的に女性にとって結婚とは経済活動であるということは間違いないでしょう。

でも、女性に対して、少しアドバイス的なことを言うと「3生探して3生となる」、つまり、「生存力・生活力・生産力のある男を探し続けて、都会に出てきて、いろいろ活動している間に、いつの間にか自分自身の"3生"力を高めてしまい、結局、結婚する意味や必要性を感じなくなる」という帰結になると思います。特に東京で働いている女子たちは。


それが、僕の言う、「稼げば稼ぐほど結婚が遠のく東京の未婚蟻地獄」です。


ところで、一方、未婚男にも典型的な「3M思考」というのがあります。「無理」「無駄」「面倒くさい」というもの。 何を提案してもこの3つの言葉ですべて却下できる万能の思考。

「金あるのか」「ケチじゃないか」「稼げるのか」と女性から「3生」で詰め寄られても、「無理」「無駄」「面倒くさい」の「3M」でカウンターを返す男性という構造。

そりゃ、いつまでもマッチングなんかされません。結婚が増える要素なんてどこにもありはしないです。男も女も、もう無理やり結婚をする必要性を感じないのです。


とはいえ、結婚する男っていうのは、まさにそれぞれの力量の範囲の中で、この「3生」を期待されて、妻に家族に頼られて、それ自体に至福を感じてしまう生き物であることも確かです。

結婚に否定的な男は、「ATMになんかなりたくない」と言うわけですが、結婚した幸せを感じている夫というのは、ATMとまでは言わないが、無意識に「家族の為に金を稼ぐ、それを使われることそれ自体に喜びを感じている」のです。


端的にそれをあらわした調査結果がこちらです。「妻の借金を夫はなんとかしようと頑張るが、夫が借金すると妻は見捨てる」のです。なんとも切ないが、圧倒的に自殺してしまうのも、既婚男性(自殺直前に離婚した人も含めて)で、その理由が経済的理由というのも、そういうところに原因があるのでしょう。

「笑いと叫びはよく似ている」これは、岡崎京子さんの描いた漫画『ヘルタースケルター』での冒頭の一節です。男たちに至福の笑顔をもたらすのも「男らしさ」であり、同時に、男性たちを苦しい戦いの場へと駆り立て、絶叫のなか死へと誘うのもまた、この「男らしさ」なのです。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。