引き続き「大型イベント」の開催を条件付きで許可するドイツ政府の措置について考える
ドイツでは大型イベントは開催できます。
ドイツ政府は8月27日、「大型イベント」の禁止に関して従来の禁止措置を年末まで延長することを決めました。これは条件を満たせば開催してもよいという条件を含みます。日本ではあたかもあらゆる大型イベントが禁止されたかのように報じられています。
今回は、日本語の情報にみられるズレを整理することで、日本の皆さん、特にイベント業界の人たちの参考になればと本稿をお届けします。
まずは日本政府による情報を見てみましょう。ドイツ在ベルリン日本大使館は8月27日付で、「ドイツにおける防疫措置(各種制限措置、検疫措置等に関する連邦と州の合意)」を公開しています。
13項目中の12項目目で、「大規模行事は少なくとも12月末まで禁止。」と一文で言及されています。(なぜかこの項目だけ下線付きです)
次に日本経済新聞(電子版)は8月28日付で同決定を報じています。同記事では、「大型イベント」については、(以下引用)
コロナ対策が難しい大規模イベントは、少なくとも2020年12月末まで開催を禁じる。
とあります。この表現では、大規模イベントはコロナ対策が難しいので「すべて」禁止にしたとも読めてしまいます。
大使館の発表に戻ります。実はこの発表ページの下部にはドイツ政府の公式発表(ドイツ語)へのリンクがあり、原文を見ることができます。すると、日本語では13項目とされている対策一覧が全部で17項目あるのが確認できます。この時点ですでに、一部の項目は割愛されているように思われます。
では、ドイツ語の原文には「大型イベント」についてどう書かれているのでしょうか。(以下のドイツ語分は当該カ所のスクリーンショット)
後半は、スポーツ観戦に関わる決定で、タスクチームによる提案を10月末までに取りまとめるというものです。大事なのは、1文目です。1文目はおよそこう訳すことができます。
14.大型イベントは、接触追跡と衛生ルールの順守が不可能なものについては、少なくとも2020年12月末まで開催できない。
実はこの表現は従来の禁止措置から変わっていません。8月末までの措置を12月末までに延長したにすぎません。
つまり、接触追跡と衛生ルールの順守が可能であればという条件付きで、大型イベントは開催はできるということです。
ここから話が少しややこしくなるのですが、ドイツ政府はこの「大型イベント」を明確に定義していません。対応は各州政府に委ねられています。
そして、この各州政府の大型イベントに関する防疫措置は、内容も決定した時期、またそれを改定した日時も様々で、日本語の情報だけでは非常に分かりにくくなっています。
各州の対応がどれくらい違うのかについては、欧州イベント産業の業界団体のひとつである、ヨーロッパイベントセンター連合(EVVC)のまとめサイト(ドイツ語)をおすすめしたいと思います。情報が網羅されておりかつ頻繁に更新されています。
ひとつだけ事例をあげます。ドイツでは9月26日、27日にアニメやマンガのファンが多く集まるドイツ最大のイベント「ドコミ」が開催されます。主催者によると1日の来場者数を1万5000人に限定したこのイベントのチケットは、土曜日の一日券および週末の通し券に関してはすでに完売しています。
「ドコミ」が開催される町デュッセルドルフがあるノルトライン=ヴェストファーレン州政府は、見本市に関しては「接触追跡と衛生ルールの順守」が可能となるコンセプトが十分に用意されてあることを条件に開催を許可しています。ドコミはこの見本市に関する枠組みを利用して開催するわけです。
つまり、感染状況の急激の悪化が起こらない限り、
ドイツで大規模イベントは開催できます。そして、開催されます。
このイベントの取り組みについては以前も取り上げました。よかったら参考に読んでみてください。
最後に、ドイツで開催が難しい大規模イベントについても触れておきます。それは、接触追跡と衛生ルールの順守が不可能なイベントです。これには、ビール祭りやクリスマスマーケットが含まれます。クリスマスマーケットについては、ケルン市が中止を発表する一方で、フランクフルト市はコロナ対策に準拠した形で開催する方針を示すなど、対応にはばらつきがあるようです。
今回は以上です。イベントの大部分がオンライン化される一方で、リアルイベントでないと仕事にならない業界の方は多くいると思います。ドイツのこのような取り組みが日本の方の参考になればと筆者は願います。