浜松市のコロナ感染爆発はどのようにして起きたか?
新型コロナの感染拡大は、人口が集中する東京圏を中心に起きているが、7月25日には、人口80万人規模の地方都市、静岡県浜松市で1日に30人の感染者数が発表になり、地元では衝撃的なニュースと騒がれている。
7月前半までは、浜松市のコロナ感染者数は延べ10名程度しか出ておらず、被害は最小限に食い止められていたが、7月20日頃から新規の患者が増え始めて、7月21日~25日にかけて43名の陽性者が出ている。都市の人口対1日あたりの陽性者数でみると、この数は東京の感染率を上回っており、危機的な状況といえるが、浜松の感染爆発がどのように起きているのかを、筆者は浜松市在住であることから、地元の視点から書いてみたい。
【地方都市の歓楽街で起きた感染爆発】
浜松市で、新型コロナの第二波とみられる感染拡大が確認されはじめたのは、7月20日以降のこと。感染拡大の震源地となっているのは、浜松駅周辺で飲み屋が集中する「有楽街・千歳」と呼ばれる地域で、南北に約500メートル、東西に約200メートルの狭い範囲だ。24日以降の浜松感染者(35名)は、すべてのこの有楽街・千歳で働く人達と来店客、その同居者などである。
地元の浜松市民は「飲みに行く」というと、大半が有楽街・千歳に集まる、歓楽街としての地元商圏が形成されている。このエリアは、歌舞伎町のスカウトマンをテーマに描かれた映画「新宿スワン(2015年)」のロケ地としても使われて、話題になったこともある。
浜松市役所では、有楽街・千歳エリアでクラスターが発生した店名(2店舗)を7月24日(スタッフに症状が出始めたのは18日頃から)に公開しているが、その2店舗両方に立ち寄った履歴のある顧客の感染確定者は、今のところ1名のみ(7月15日に症状が出て、7月21日に陽性確定)と発表している。
症状が出始めたタイミングをみると、この2店舗を来店した1人の感染者(来店時はまだPCR検査を受けていない段階)が、ウイルスの媒介役となった可能性が高く、地元飲食業者の中では、同者の情報が早い段階から水面下で共有されている。自店の予約、来店者リストと照合するなどして、該当者が来店している場合には、濃厚接触の疑いがあるスタッフや常連客に連絡をして、症状の有無を確認したり、PCR検査の受診を促している状況だ。これらの情報はTwitter上にも一部投稿されて、7月以降に3回飲みに出ていたと言われる、約10店舗(居酒屋、キャバクラ、ラーメン店など)が、同感染者の立ち寄り先としてリストアップされている。
浜松市のような地方都市は、歓楽街のエリアが狭いため、コロナ感染者が出た場合には、立ち寄り先の調査はしやすい反面、すぐに個人情報(名前や勤め先)まで特定されてしまう欠点もある。地方の歓楽街は横の繋がりが深く、スタッフ同士の行き来もあるため、同じエリアで1人が感染すると、他店への感染スピードも速いが、同業者間で情報が共有されるのも速い。
新型コロナは、ウイルスの感染から、PCR検査で陽性が確定するまでに、1~2週間程度のタイムラグがあり、その間に保菌者が歓楽街で連日飲み歩くようなことがあれば、感染爆発は一気に起きてしまう。症状が出てから行動を控えるのでは、既に手遅れだ。
人口が少ない地方都市だから「安全」ということはなく、狭いエリアでも感染爆発が一度起きてしまうと、地域全体のウイルスを封じ込めることが難しくなる。ワクチンや特効薬が開発されていない現状では、市民が一丸となり、無症状のうちから「他人に迷惑をかけない行動」を心がけることが、感染拡大を食い止めるための重要策になる。
政府の方針としても、バーやクラブなどが新型コロナウイルス対策を取らずに感染者を発生させた場合は店舗名を公表することを示しており、感染者が出た際の履歴ルートを辿りやすくする。感染リスクが高い、接待を伴う飲食店舗では、来店者リストの記録を残すことも「感染対策」の一つになることから、利用者側でも、自覚を持った行動を取るべきだろう。
※注意:この記事は、地域での感染爆発を起こさないための警鐘として投稿しました。感染してしまった人を責めたり中傷することは、決してしないようにお願いします。
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