終身雇用と学歴主義の終焉。 会社と個人とが「働きがい」を探求する未来はくるか?
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
バイデン氏が米大統領に就任してもうすぐ3ヶ月。トランプ前大統領が残した傷跡は大きく、特に国民間での分断を加速した点は深刻なものでしょう。
就任演説で繰り返し団結の必要性を強調したことは、米国社会で深まる「分断」の深刻さを印象づけました。外交面でもトランプ前大統領が掲げた「米国第一主義」のもとで悪化した同盟国などとの関係改善が急務です。
マイケル・サンデル氏はもうすぐ発売される新刊邦訳「「実力も運のうち 能力主義は正義か?」(鬼澤忍訳、早川書房)の中で、行き過ぎた能力主義について警鐘を鳴らしています。
――人間の能力を測る尺度は様々あるはずなのに、学歴が過度に重視される。そこに問題の根がありそうですね。
「学歴偏重主義と能力主義が強く結びつきすぎてしまった。能力主義を貫くならば平等な条件下での競争が大切なのに、既に生まれたときに大きな差がついている。入試のためにいろいろな準備ができる裕福な家庭の子供のほうが有利なのだ。米国の名門大学で、所得の高い上位1%に属する家庭の学生が下位半分の学生より多いのは、そうした格差を示している」
――米国ほどではないにしても、日本にも能力主義偏重の傾向はあります。弊害をなくしていく方法はありますか。
「カギは労働の尊厳の回復だろう。高い給料の仕事だけでなく、全ての仕事への尊厳を高めることが大切だ。」
先月わたしも以下のようなコラムを書きました。国際女性デーでの気付きをまとめたものですが、日本においても平等な条件下での競争が大切であるという部分が抜け落ちてしまっている面があると思います。
平等とは一見聞こえがいい言葉ではありますが、忘れてはいけないことがあります。それは「前提条件(スタートライン)が一緒である」ことです。上記の例だと身長が一緒であれば、十分に機能するでしょう。社会を見渡してみれば、生まれた場所が都会なのか地方なのか。裕福な家庭だったのか、そうでないのか等々。つまり、本人の能力とは関係なくスタートラインは人それぞれ違うということを忘れていないでしょうか。先に説明した通り、日本における男女の役割についても歴史的背景があります。そうであれば、スタートラインの違いによる合理的な配慮があってしかるべきであるというのが私の考えです(もちろんどこまでが合理的かは、みんなで議論を尽くして決める)。
これからの日本は労働人口の減少に伴い、未曾有の人材不足となります。この課題に対応するには、キャリアを中断してしまった方々に戻ってもらうこと、需給のマッチング率をあげることなどが重要です。また、新たな仕事に対応するための教育も必要です。やるべきことは山積みですが、採用手法を改善することは特に重要だと考えています。
これまでの日本型雇用では新卒採用をベースにしたシステムで、総合職というポテンシャル採用、つまりいわゆる「地アタマの良さ」「素直さ」「伸びしろ」などを基準に選考をしていました。どのようにみるのかと言えば、ガクチカと呼ばれる学生のときに力をいれたことや志望動機等の作文、面接における応対などです。書類選考では学歴が重視されますし、作文なども受験戦争を勝ち抜いてきた層に強みがあるでしょう。
中途採用においても、求人票には必要要件として過去の経験が多く並びます。3年以上の営業経験、などです。
さて、これらの過去の経験から要件を並べて採用したところで、それは将来の成果を保証することになるのでしょうか?
最近では求人票の記載の仕方で応募者数が大きく変わることも珍しくありません。アメリカの事例ですが、応募要件より入社後に求められる責任に焦点を当てた求人票のほうが、応募率が14%向上したというデータがあります。例えば、「このマネージャーの職においては、入社年度末において売上を7.5%以上向上させることが求められます」などです。
今後ジョブ型雇用に移行していく中で、ポジションに求められる要件をより明確化する必要があります。その際には「そのような責任・成果が求められるのか」も、より明文化する必要があるでしょう。そして、現在いる社員の過去現在のプロフィールや保有スキル等々をデジタル化して分析していくことで、今後採用すべき人の理想像もクリアになってくるでしょう。
終身雇用が終わり、個人が自身のキャリア形成を主体的に考えていく時代です。すると、個人はより「働きがい」を中心に会社を選択する傾向が強まっていくと予想しています。それを給与に求める人、働きやすさに求める人、なにを重視するかは人それぞれです。
共通しているのは働きがい、つまり仕事において「他人(会社)に必要とされている実感」があるかどうかです。この根源的な欲求を仕事を通して満たせるか、またその環境を用意できるかが、充実した仕事かどうかの鍵となるでしょう。
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タイトル画像提供:mayucolor / PIXTA(ピクスタ)
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