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イタリアの混迷が欧州全体の信用力にも影響をもたらしかねない

ムーディーズがイタリアの格付をBaa3で確認した際、アウトルックを安定的からネガティブに引き下げた。ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギーを中心にイタリア経済に影響をもたらしていることに加え、政治的な脆弱さが露呈していることを懸念して、である。


折から伝えられている通り、9月25日の総選挙前、中道右派が優位となっている。FI、FdI、同盟による中道右派連合は足元の世論調査では絶対過半数を確保しそうな勢いである。うち、FdIは最多議席を獲得する勢いで、メローニ党首が首相になる確率も高まっている。

選挙のテーマとなるのは、次の三つ。第一にエネルギーショックの打撃をどう交わすのか。第二にNGEU計画を推進させ、総額約400億ユーロを受領できるかどうか。第三に、全体的な財政スタンスがどうなるのか、である。

中道右派の政策は不透明だが、財政政策による給付措置に前向きなようだ。エネルギーショックの打撃から家計や企業を守るために資金をばらまくことは十分考えられる。一方、ドラギ政権の改革案を継承し、EU予算ルールを遵守する意向だという報道もあるが、メローニ氏自身がこの件にコミットしたわけではない。選挙戦が激しさを増す中、次世代EU計画の警鐘やEU財政ガイドラインの遵守などに疑問を呈さないとは言えないなど不透明感を残す。

しかも、イタリアの政治的安定性が欠如したままになれば欧州統合のプロセスの足枷となりかねないことにも注意が必要だ。親EUのドラギ首相の後任としてユーロ懐疑派の首相が就任すればなおさらだ。このような交代はEUの財政規則改革に関する現在進行中の議論には大きな影響となる。そうでなくともフランスではマクロン大統領が6月の選挙で議会の過半数を失い、欧州統合の機運が損なわれているところへ、ドラギ首相までその交渉の席に着かないとなると、財政規則の行方も混とんとして来る。様々な点で欧州のボタンの掛け違いや軋みが目立ち始めた気がしてならない。


(追記)上記の格付は無登録格付です。無登録格付けについてはこちらのリンクをご参照ください。https://www.bnpparibas.jp/jp/legal-information/non-registered-credit-rating-shoken/

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