2019年ノーベル経済学賞分野は、意外な所で活用されている!〜企業でも活かせるその手法とは〜
みなさま、こんばんは。今日は先日された2019年ノーベル経済学賞研究分野が、実は身近なところで役に立っていることを記載していこうと思います。具体的にお伝えしたいのは下記の3つです。
①経済学はドンドン進化している!?
②2019年ノーベル経済学賞の背景
③②の具体的な活用方法
*経済学はドンドン進化している!?
経済学は数式理論ありきの机上の空論という批判を、たまに見かけます。でも、そんな批判はテクノロジーの力もあり、経済学には当てはまらなくなってきています。理由は、先人達が培ってきた理論研究をビックデータを用いて現実の課題解決にドンドン活用できるようになってきたのです。加えて、データ解析をするツールも進化していることも影響しています。まさに自然科学と社会科学の発展が重なり合っているような感じです。医療、AI、人事評価、保育、貧困解決‥と経済学が応用されるジャンルが広がっています。
*2019年ノーベル経済学賞受賞の背景
上記の背景には、課題解決に用いた政策や施策が、本当に効果があるかの検証手法が確立されたことが大きいようです。具体的には、施策を行ったフィールドで「Randomized Controlled Trial: RCT」という手法の拡大と言われています。このRCTを早くに取り入れいれられたのが、貧困解決等の研究が蓄積された開発経済学。そして、RCTを発展させたのが、2019年にノーベル経済学賞を受賞したデゥフロ氏等です。
と、ここまで読んだ方々の中には、じゃあRCTって貧困解決だけで使われている手法なの?と思う方少なくないかもしれません。実は、全然そんなことはないのです!!各国で費用対効果の良い財政政策や、GAFA等の経営活動でも使われている手法です。企業では、RCTでなくABテストとも言われています。(*厳密には二つは違う場合もありますが、似たものと考えてください)
*どんなところで使われているのか?
先日、日経CNBC「昼エクスプレス 崔真淑のサイ視点」にゲスト出演して頂いた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員 小林庸平さんの解説の中にも出てきました。英国を中心に行動経済学的手法で効率的な財政政策や施策が実験されています。重要なのは、その施策が本当に効いているかを検証することです。
(出所:写真は日経CNBCでの共演シーン。日経CNBC Twitterより)
番組では、イギリスのプロジェクトが紹介されていました。税回収率を改善するために英国当局は、ある工夫をしました。それは税支払い通知書に、「Nine out of ten people pay their tax on time= 10人中9人は期限内に税金を支払っているよ!」という一言を記載したのです。その結果、数百億円規模の税回収upが起きたとのことです。
(出所:図表は全て小林庸平さんの物です)
でも大事なのは、上述したように、その一言のおかげで税回収upが起きたかの因果関係です。そのためにデゥフロ氏等が確立したRCTが必要になるのです。具体的には、その施策を受けたグループと、そうでないグループをランダムに分けて、統計学と経済学の手法を用いて検証するのです。そして、このようなランダム化実験は、上述した国策から、経営手法までいろんなところで費用対効果の良い施策をするためには使われています。あのオバマ元大統領の選挙対策にも使われていたとか。社会人が学術を学ぶ意義は、こうしたビジネスに応用できる手法を学ぶところもあるかもですね。
(出所:図表は全て小林庸平さん作。こちらの本は、デゥフロ氏等のテキストを小林さんが監訳されたものです)
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
応援いつもありがとうございます!
崔真淑(さいますみ)
*カバーイラストは、崔真淑著「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」(大和書房)からの出所です