「自由だから非正規4割増」に感じる違和感

以下は、総務省が7日発表した4~6月の労働力調査の内容を受けて、日経本紙に出た記事である。「なるほどなぁ」と思いつつも、強い違和感も同時に覚えた。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33911590X00C18A8MM8000/?n_cid=TPRN0001

近年の労働市場は労働力不足からやや売り手市場であり、より良い労働力の確保のため各社環境や待遇の改善に取り組んでいる。失業率でみても戦後最低レベルで推移しており、このタイトルのように「労働者が職を選ぶ」ような状態にあるとも思える。

しかしながら、個人的な感覚でいうと「できることなら正社員になりたい」「出産、介護に直面して現職を続けられない」のでやむを得ずキャリアチェンジをした事例を多くみている。ここが、冒頭感じた違和感の正体である。「自由度を求めて?本当に?」と思う。

「働き方改革」という言葉を耳にする機会が多くなったが、その多くが「残業規制」であったり、「リモートワークはじめました」であったり、従来の仕事はひょっとして「同じ場所で働き、遅くまで働くこと」のみが価値の源泉なのではないかと訝しむ内容である。たしかにそのような労働環境なのであれば自由度を求めて、、、というのも納得がいくかもしれない。逆に捉えれば、労働時間というものさしでの評価が強いことでもあり、アウトプットでの評価があまりできてないとも言える。

今一度、働き方改革が出てきた経緯を振り返りたい。2年前の2016年に開催された「一億総活躍国民会議」の中で「ニッポン一億総活躍プラン」の素案が提示された。このときに安倍首相から政府として「働き方改革に取り組む」旨が示され、昨年の衆院選においても改めて働き方改革に触れ、「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」に取り組むとした。

さて、前者については進捗が見られるが、後者の「同一労働同一賃金」についてはどうだろうか。歴史的に総合職採用、つまり終身雇用を前提にしたジェネラリスト育成を主眼にしていた日本企業にとって、そもそも「同一労働」の定義ができているのかどうか。職種による必要な能力、ジョブスクリプションが適切に定義されているかどうかである。

また、「非正規」という言葉にも疑問が残る。そもそも「正社員」も「正規社員」も法令では出てこない。便宜上、なんとなく使っている言葉である。多様な働き方を推進するのが「働き方改革」なのであれば、まず呼称から見直してはどうだろうか。「非正規」という言葉からはどうしても「正規のほうが偉い」という印象を受ける。たとえば、大学や監査役の呼称で使われるような「常勤社員」と「非常勤社員」にしてみるのはどうか。小さなことかもしれないが、意識を変えるというのは実は大事なことだと思う。

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