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サイヤ人式で仕事のキャパシティを増やし、モチベーションを高める

武器となる「バイタリティ」を如何に身につけてきたか

日本経済新聞とnoteが共同で開催している「仕事や働き方」に関するお題企画にて、「#仕事のコツ」をテーマとして記事が募集されている。「新社会人の方々に向けて、あなたのノウハウを投稿してみませんか?」ということだ。
さて、そうは言われたものの、自分を振り返ったときに「仕事のコツ」として自慢できるようなものは何があるのか、改めて考えると結構悩ましい問題だ。その中でも、比較的、ほかの人から指摘される強みが「バイタリティ」だ。「活動量」と言い換えてもいい。
この指摘がされたのは、大学4年生の時にゼミの先生から言われたのがはじめだ。それ以来、サラリーマン時代の面談や院生時代の指導教員など、さまざまな人から「バイタリティ」が強みだと言われてきた。

あまりにいろいろなことに手を出し過ぎるもので、落ち着きがないとか、どれも中途半端だという叱責をうけることもあるのだが、とにかく活動量は多いのだろう。現在でも、肩書を並べるだけでも結構な数がある。

大学教員以外で、最も大きなウェイトを占めるのが「経営者」だ。理系ではないので特許や技術を基にした大学発ベンチャーを作っているわけではないが、研究成果活用型大学発ベンチャーとして大学から許可を得てシンクタンクの「合同会社ATDI」を立ち上げている。最近では、大学や政府が教員や博士課程で学ぶ院生に起業を促すようになってきた。

しかし、そうはいっても大学教員をしながら、自分で事業を興すことは簡単ではない。大学発ベンチャーを興したからといって、本業の大学教員としての仕事(教育・研究・学務)が減るわけではない。すべて大学の仕事をこなしたうえで、健康を害さないように労働時間に配慮しながら、事業も行っていかなくてはならない。
正直、大学教員をしながら会社経営なんて割に合わないことこの上ない。では、なぜやるのかというと、それは私の仕事の進め方が「サイヤ人式」だからだ。そして、この仕事の進め方が私のバイタリティを鍛えてきたように思われる。

「サイヤ人式」の仕事の進め方

「サイヤ人」は言わずと知れた、先日亡くなられた故鳥山明氏の名作漫画『ドラゴンボール』に出てくる宇宙人だ。作中では、「サイヤ人」には大きく3つの特徴があげられている。

  1. ワクワクしたら、勝ち目がない闘いでも挑んでしまう

  2. 瀕死の状態から回復すると戦闘力が跳ね上がる

  3. 月を見ると大猿に変身する

まず、1つ目の「ワクワクしたら、勝ち目がない闘いでも挑んでしまう」についてだ。基本的に、仕事の依頼に対しては少しでもワクワクするものを感じたら引き受けるようにしている。ワクワクするところは、依頼主であったり、依頼内容であったり様々だ。仕事を引き受けるときには、できるだけ選り好みはしない。一見、「これはうまくいくかわからないな」と思うものでも、やりながら「何とか良い結果に結び付けることができないだろうか」と考えてベストを尽くす。
特に、仕事をする中で大切だと考えているのは、はじめに感じた小さなワクワクを自分で大きくしていくことだ。どこかしらにワクワクするものを感じたら、仕事をしながら、新しいワクワクを見つけたり、ワクワクするほうに仕事を持っていく。仕事に対するモチベーションは、はじめから高いわけではなく、仕事を進めながら上げていくのだ。
はじめは乗り気じゃないようなことを言っておきながら、いざ闘っているうちに楽しそうな笑みを浮かべるベジータのようなものだ。やっているうちに楽しくなる。

2つ目は「瀕死の状態から回復すると戦闘力が跳ね上がる」だ。仕事を引き受けるときに、自分のキャパシティは初めに考えない。キャパシティは仕事をこなしていく中で増えていく。自分の仕事の進め方も効率化していくし、業務の処理能力も高めることができる。しかし、それは限界まで仕事をした結果だ。自分に優しく、余力を持った仕事のやり方をしているとキャパシティは増えない。
ただ、これは残業しろと言っているわけではない。労働時間が短くても構わない。労働時間が短いのならば、それだけ時間の使い方を濃くすれば良いだけだ。業務時間が終わったときには、「もう駄目だ。これ以上は頭を使い過ぎて何も考えられない。」という状態にまで追い込むと、回復した後に自分のキャパシティが跳ね上がっている。
フリーザ戦の悟空が10倍界王拳でも歯が立たず、「ま…まいったな…、勝てねぇ…」と限界を超えて20倍界王拳を使うようなものだ。困難な課題に対しては限界を超えて立ち向かい、それを超えて復活したときにキャパシティは跳ね上がる。

3つ目は「月を見ると大猿に変身する」だ。もちろん、人間なのでサイヤ人のように体長数メートルにもなる大猿に変身することは不可能だ。しかし、近しい状況はビジネスである。サイヤ人にとっての大猿は奥の手であり、巨大な戦闘力と引き換えに理性を失う。
仕事では、時に頭で考えるのではなく、とにかく行動したほうが良い場面がある。例えば、新入社員の頃のように、自分の経験が不足している領域で新しいことに取り組むときに多い。はじめての物事に取り組むとき、先輩やメンターから「こうしたほうが良い」とアドバイスを受けることがある。そのとき、頭の中には「うまくいかなかったらどうしよう?」「そんな非効率的なことをして意味があるのか?」など、様々な考えが思い浮かんでしまう。その多くは「自分が行動しない尤もらしい理由探し」だ。
そのような「自分が行動しない尤もらしい理由探し」が頭によぎったときには、意識的に理性のスイッチをオフにして、大猿モードになってとにかく行動する。まずは何も考えずに、経験豊富な先輩やメンターの言う通りのことを実行してみる。そこから開けることや学ぶことは多い。
自分の経験が浅い時に、行動する前に頭で考えることで良い結果はまず得ることが難しい。先輩やメンターといった経験者のいうことは、だまされたと思って素直に従うべきだ。しかも、ただ従うのではなく、やるからには全力で従うのだ。
それこそ、「こいつ、大猿になったんじゃないか」とアドバイスしたほうが感じるほどの徹底した行動が解決策となる。
ベジータ戦の終盤で、悟飯がわけもわからないままクリリンのアドバイスを聞いて大猿に化けて決定的なダメージを負わせたように、時には考えずに全力で行動することも必要だ。

全力で仕事をして、回復することで「バイタリティ」は身につく

もともと、私はいろいろなことを同時並行で行うことは得意ではない。特に、理由や意義もわからずに、仕事だからとただ取り組むことは好きなことではなかった。それは、学生時代の恩師や若いころに指導してくれた上司や先輩は良く知ることだろう。
しかし、全力で取り組むこと、そして体力を使い果たしたあとにしっかりと休養をとることで、自分のキャパシティを増やし、モチベーションをコントロールする術を身につけることができたと思う。それもこれも、これまでの人生で出会った先生や上司、先輩たちが全力で取り組むことのできる様々な機会をくれたおかげだ。
自分の限界を超えるような経験を数多く積むこと、それが私にとっての「#仕事のコツ」だ。

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