マーケターとソーシャルワーカーが協働することの可能性について考えたこと
「ソーシャルワーカーから学ぶ顧客の本質的な課題を特定する力」というイベントをNPO法人Social Change Agencyの横山さんと一緒に開催しました!
ソーシャルワーカーの方々の思考・視点からの学びが多く、非常に有意義な時間でした!
学んだ内容と今後の構想をメモしておこうと思います。
イベント背景
「マーケティングとは、顧客が抱える問題をいかに解決するか」
「顧客が抱える問題を特定すること」
これは数々のイノベーションを生み出すネスレ日本の高岡社長による言葉です。
こちらは、マーケティングの世界でよく言われる言葉
↓
・顧客インサイトを発掘せよ!
・問題解決より問題発見が大事だ!
・ドリルを買う人が欲しいのは穴である!
うん、顧客を理解することが大切なのはわかる。
わかるけれど、マーケティングの現場で顧客の課題と寄り添えていると自信をもって言える人は少ない印象があります。
ペルソナをつくって、カスタマージャーニーマップをつくって・・・というだけで終わってしまっているケースも多いのではないでしょうか?
そもそも顧客の課題に寄り添う、顧客の本質的課題に向き合うとはどういうことなのでしょうか?
この問いに対する答えのヒントはどこにあるのか。
ソーシャルワーカーの視点・思考から得られる可能性がないかと考え、イベントを開催しました。
元になったnoteはこちらです↓
既存のマーケティングフレームワークに足りない顧客理解のプロセス
顧客の解像度をあげることの重要性は様々なところで言われています。
しかし、顧客を理解する方法は確立されていないと考えています。
下記の図はマーケティングトレースでも活用している、フレームワークの全体像です。
MBA関連のコンテンツでも紹介されることが多い、代表的な5つのフレームワーク。
①PEST
②5Forces
③STP
④4P
⑤3C
全て大切な要素ではあるけど、既存のマーケティングのフレームワークだけでは、顧客視点が弱い・・・
顧客の解像度をあげるために、
・ユーザーインタビューが重要
・現場に出て顧客を観察することが重要
だと言われているけど、もう少し体系化したいところ。
では、既存のマーケティングの理論・フレームワークで顧客理解を促すものは存在するのか?
自分が知る限りでは、顧客課題から逆算して発想するフレームワークとして一番近いイメージにあるのはジョブ理論・JTBDだと考えています。
顧客の課題に寄り添うフレームワークJTBD
ジョブ理論とは、「顧客はジョブ=特定の仕事を成し遂げるために商品やサービスを雇用する」という考え方をもとにした理論です。
イノベーションのジレンマで有名なクリステンセン教授による著書です。
人々が商品やサービスを自らの生活に「雇用」するのはそこに「片付けるべきジョブ」があり、ジョブを片付けることで「進歩」するためであるClayton M. Chiristensen
詳細は様々にジョブ理論を解説している記事があるので、そちらを読んで頂くのが良いかと思います。
イベントでご紹介させて頂いたスライドは下記となります。
ジョブ理論を改めて使ってみて感じたこと。
顧客のジョブを深く理解する上で難易度が高いのは、顧客の感情的ジョブ・社会的ジョブを読み解くことです。
ユーザーがどんな機能を求めているかは想像しやすいです。
(例)
・AppleのUIが使いやすいからストレスが軽減される
・Apple Watchが健康をデータ化してアラートをならしてくれる
・AirPodのiPhoneとの連携がスムーズで、コードが絡まなくなる
一方で、感情や社会との繋がりは、ユーザーを取り巻く複雑な関係性の中で成り立つものであり、特定することが難しい・・・
人が望む感情の変化や社会とのつながりなどは、どのようにリサーチして言語化・構造化するべきかは、方法論が曖昧なままだと感じています。
(もし知っている人がいたら教えて頂きたいです!)
ソーシャルワーカーの顧客の感情的・社会的ジョブを見極める力
イベントの中では、下記のユーザーに支援を届ける可能性を考えるケーススタディを実施しました。
自殺対策の取り組みを行うNPO法人OVAの土田さんから話題提供をして頂きました!ありがとうございました!
OVAのマーケティング戦略については下記ブログにまとまっています。
▼ケース
30代男性、実家に引きこもり状態で「支援」への強い抵抗感がある
↓
生活課題を抱える方に「誰に 何を どのように」届けるかを設計する
上記の男性の課題を解決するために、グループで一緒になったソーシャルワーカーは、
・家族環境に対する仮説出し
・周囲のコミュニティとのコミュニティケーションの取り方
・関係性の築き方
など
自分では思いつかないような仮説を出されていました。
ジョブ理論でいう、顧客の感情的ジョブ・社会的ジョブを読み解く視点が優れていると感じたのです。
ソーシャルワーカーは、日々の仕事で、困難な課題を抱える人たちを取り巻く環境を理解した上で最適な支援を届けることを仕事にしています。
そのため、人の感情、人と社会の関係性を読み解く技をもたれているのではないかと感じました。
ソーシャルワーカーのフレームワークも学び多い
横山さんからは、ソーシャルワーカーがユーザーを理解するためのフレームワークもご紹介頂きました。
こちらのnoteはぜひマーケターにこそ読んで頂きたい!
ソーシャルワーカーがどのように顧客の課題と寄り添い、仮説を考えているのかを理解することができます。
ビジネスの世界にソーシャルワーカーが介入したら面白そう
今回のイベントで、ソーシャルワーカーの視点・思考が顧客の課題を深く理解することに繋がる可能性を実感することができました。
デザイン思考の世界では、文化人類学がビジネスの世界に入ってもらい、顧客観察→新たな発見を得る取り組みがされていました。
自分は、ビジネスの世界にソーシャルワーカーに介入してもらい変化を起こす可能性を探りたい。
ソーシャルワーカーは、現在は医療機関や行政と紐付いて仕事をするケースが多いと思いますが、ビジネスで活躍できるフィールドもあると思うのです。
マーケターにはN=1から発想する、確実に顧客の課題を深く理解して企画・実行することが求められはじめている。
そんな中で、ソーシャルワーカーとの協働が意味をもつ可能性が高いのではないかと今回のイベントで強く感じたのでした。
この領域、もっともっと深掘りして仕掛けていきます!
顧客課題を起点に仕事を捉えてみよう
顧客課題を起点に発想する・仕事をするということは、実はソーシャルワーカーもマーケターも同じなのだと思います。
そもそも仕事は「他者の存在」があって成り立つもの。
市場は、目の前の他者+他者+他者・・・・。
マーケターも、市場規模に捉われて「他者の存在」が見えなくならないようにしたい。
そのための姿勢を言語化し、方法論を体系化していきたい。
自分自身も改めて、目の前の他者を理解することから仕事をはじめていこうと思います。
イベントにご参加頂いたみなさま、ありがとうございました!
次は7月にイベントやる予定ですのでご興味ある方は、メッセージください!
参考書
ジョブ理論は、改めて自分も学び直そうと思っています!
ソーシャルワーカーの仕事を理解するのにオススメなのはこちら!
この本の中で心に響いたフレーズ
困難な課題を抱える人に適切な支援を届けることができたときの成功分析について
一つは 、社会福祉の知識です。もう一つは、どう働きかければ絶望している人は動くかというソーシャルワークの技術です。もう一つは、困った状況にいる人へのやさしい心です。やさしい心という言い方があまりにも情緒的すぎるとしたら、困難な状況にある人に対する社会正義と言ってもいいでしょう。三つの要件について、「温かい心と怜悧な頭脳 」というフレ ーズで説明する人もいます。この言葉は、もともとは、一九世紀から二〇世紀初頭にかけて論陣を張った経済学者のアルフレッド・マーシャルの言葉とされています 。社会的な事象を解明しようとする場合には、情と知の両方が必要なのだということです。
「温かい心と怜悧な頭脳 」もって丁寧な仕事をしていきたい。