ECBの金融緩和継続とクレジットへの影響

3月理事会では、TLTRO第3弾が予告されたのは朗報だったが、その実施内容の計画は市場予想ほど金融緩和的ではなかった。ところが、4月10日のECB会合ではかなり金融緩和色が増している。

ドラギ総裁は「対称性のある価格安定性目標の追及のために必要とあれば行動する」と述べた。こうした金融緩和への傾きからすると、TLTROに続き、金利の階層化が発表される可能性が高くなっている。ただし、TLTROについてと同様、ドラギ総裁の後任者への配慮から、実施予定時期は年終盤となる可能性が高い。

記者会見でドラギ総裁が示したマクロ経済認識は直近とほぼ変わらずで、成長減速は予想を上回っておりリスクは引き続き下向きだが、景気を押し下げたいくつかの一時的要因は解消に向かっている、というものだった。ドラギ総裁は、景気後退となる確率は低いとしているが、私見ではこうした見解は楽観的すぎる可能性がある。今年後半には成長は潜在以下に落ち込み、ECBは成長予測の下方修正を余儀なくされることもあるのではないだろうか。

ドラギ総裁の発言のうち金融緩和的とみなされる点は以下のとおり。

1. 「ECBは必要とあらば、すべての政策手段を用いる準備がある」:ポイントは「すべて」という単語であり、利下げさえも検討され得ることを検討されることも含まれる。

2. 「市場は『ECBウォッチャー会議』の内容をはっきりと理解している」:同会議の際に総裁は、ECBの中心シナリオに対するリスクを強調して、政策金利の階層構造導入の可能性に道を開いた。昨日の記者会見はこれをさらに強調するものとみてもよいのではないか。

3. 「ECBは低インフレを許容せず、「過度に遅れることなく(without undue delay)」責務の達成を追及する」:これは2015-16年中のコメントに近いニュアンスで、緊急性を表しており、これも3月には見られなかった。その時点から今日に至るまでインフレ目標を達成できておらず、そうした緊急性も当然のことであり、追加行動へのハードルは低くなっている。ドラギ総裁はこの点に関して6月のスタッフ経済予測が重要になると述べており、6月会合が「決断の時」になる可能性が高い。

4. 「ECBのインフレ目的には対称性があり、上下双方への乖離を考慮に入れる」:これは従来から目標とされていた「2%を下回るがそれに近い」水準が必ずしも許容上限ではないことを許容上限ではないということである。これには、上記の「過度に遅れることなく」という表現と相まって、ECBが長期間にわたるインフレ目標未達成に甘んじているという市場の認識を打ち消そうという意志を読んでもおかしくはない。

金融緩和的様相を示すECBのストラテジーを見る限り、欧州の金利状況には変化が生じないと見るべきである。クレジット市場もそれにつれて、穏やかな状況が予想されてしかるべき、である。

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