「顧客の解像度を高める」こそマーケティングのセンターピンになる
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「顧客の解像度を高める」こそマーケティングのセンターピンになる

足立氏は有能なアイデアマンで、経験も豊富。しかし、その出番は人気のテレビドラマ「半沢直樹」に登場する白井亜希子大臣風に言うと「今じゃない」。ファミマ再生の道筋が見えた段階で起用すべき人事にみえる。

ファミリーマートのCMOに足立光さんが着任したことを、日本経済新聞の中村直文編集委員が遠回しに小馬鹿にしたことでマーケティング界隈の多くが「アンチ中村」になったことは、皆さんの記憶に新しい話です。

大所高所からの発言、なかなかできないものです。

話は少し変わりまして、足立さんがGMO NIKKOのオウンドメディアに登場されたコンテンツが凄く良くて、ご紹介をさせて下さい。

自分が消費者にイタコのように憑依して、できるだけ消費者になりきることがとても大事だと思います。そうすることによって、お客様としての感覚をある程度想像することができると、自分の決定により自信が持てるんじゃないかと思います。

イタコのように憑依する。消費者になりきる。そこまでやれてこそ消費者理解だな、私はまだ「分かった」で留まっているな、と反省しました。

私自身、ご縁があってインサイト・マーケティングリサーチに関する書籍を何冊か刊行させていただき、「消費者理解が大事だ」と繰り返しお話をさせていただきました。が、まだまだ「口だけ」だなと痛感した次第です。

そもそも「消費者理解は大事じゃない」と言う人はあまりいません。なぜなら「消費者理解」無くしてマーケティングは実現しませんから。

では、どうすれば「消費者理解」が実現するのでしょうか?(HOW?) そもそも、なぜ「消費者理解」が大切なのでしょうかか?(WHY?)

今回は(自分自身の理解度を高めるために)WHYとHOWについてまとめました。そして巻末に宣伝・告知があります。


(WHYの部)なぜ「消費者理解」が大切なのか

端的に表現すると、消費者を細かく区分した「セグメント」で見る時代は終焉を迎えようとしているからです。

性別、年代、職業、年収などのデモグラフィックでセグメンテーションをしたとしても「差異」が生まれなくなりました。セグメンテーションから消費者の「欲しい」が見つからなくなったのです。

ましてやクレイトン・クリステンセン教授がジョブ理論で説明したように、スムージーを買うのは「男性」だからでも「高年収」だからでも無いのに、いつのまにかセグメントが因果関係の原因かのように説明される世界観は、いよいよ滅んでも良いでしょう。

コトラーも「8つの成長戦略 低成長時代に勝ち残る戦略的マーケティング」で以下のように述べておられます。

マーケット・セグメンテーションには色々な方法がある。賢明で想像力のあるマーケターはさまざまな分類をし、新たな可能性を見出すことが可能だ。たとえば、犬の大きさや年齢ではなく、飼い主の犬に対する姿勢からドッグフード市場を分類してみてはどうだろう。
(略)
今日、企業が行うべき重要事項は、新たな消費者の洞察(インサイト)、できれば現状を変えるようなインサイトを深堀りすることである。

消費者の「インサイト」は、物が欲しくなる"原因"となりえます。

コトラーが言うように、「犬には健康で長生きして欲しいから食事が多少高価でも構わない」という期待に応える(バリュープロポジションに応じる)商品が出てくれば、マーケティングリサーチを行いインサイトにYESと答えた割合がそのまま市場規模となりえます。

すなわち、インサイトに共感するか否かのみで「セグメント」を作るのが主流になっていくと考えます。消費者を玉ねぎのように細かく刻んで「群」で表現する時代じゃ無いんです。

どんだけ細かく刻んでも、そこにいる消費者が何を考えて、何を求めているかは見えてきませんから。


(WHYの部)「消費者理解」は解像度こそ全て

セグメントを使ってマクロからミクロに落とし込む、すなわち性別、年代、職業、学歴など、大人数を細かく区分する「符号」から消費者のクラスターを作成しても、そこにいる消費者の顔は分かりません。

私の場合は「大阪府出身」「港区おじさん」「大学院卒」「30代」「未婚」「犬2匹」「愛妻家」「猫背」「アフターヌーンティーに行く」「小田原に行く」「一休よく使う」でラベリングできますが、おおよそ皆さんのイメージする松本健太郎像と紐付かないはずです。

こうしたセグメントを、私は「解像度が低い情報」と呼びます。特定の消費者の顔が見えない情報です。(※ここで言う「顔」とは、特定の個人を明らかにする「顔」という意味では無く、どちらかと言えば人柄・思考であることは明記しておきます)

「(妻)に怒られるのが怖くて仕事は19時に切り上げて残りは家でやる人」「(妻)と月1回のホテルラウンジのアフターヌーンティが楽しみ」「(妻)がほろよい大好きでお互いの休みの前日は一緒に飲む」「(妻)と温泉に行ってホッコリするのが好き、でも犬のことが心配で早く帰っちゃう」みたいな情報があってこそ、顔(人柄・思考)が分かります。

こうした情報を、私は「解像度が高い情報」と呼びます。特定の消費者の顔が見える情報です。

どんだけCookieSyncして情報を寄せ集めようが、ワシの愛妻家ぶりや愛犬家ぶりは、セグメントでは推察も難しいでしょう。

いくらセグメントを集めても一緒なんです。PV数ばかり見ていたら、冒頭に紹介した中村直文編集委員の記事は「よく読まれている」という評価になるでしょう。実際には、多くのマーケターからボロカスに言われ、悪評の限りだったにもかかわらず。

ポイントカードから購買履歴を見ても「分かったようでよくわからない」と思うのは、データに消費者が浮かばないからです。

解像度とは、消費者をいかに鮮明に捉えられるかを意味しています。意味不明な消費者の行動も、解像度が低ければ「なんでそんなことするんでしょうね?」と首を傾げますし、解像度が高ければ「こういう理由があるから」と説明ができます。

とことん解像度が高い情報をもって最初からミクロに消費者に迫り、後にマクロに消化していくアプローチ(例えばミクロに見つけたインサイトをマーケティングリサーチを用いて共感度を計り、おおよその市場規模を掴む)はインサイトに強い組織が積極的に導入している印象ですが、もう少し加速していくのではないか、と感じています。

「顧客を理解したい」なら、解像度(鮮明なn1の顧客情報)こそセンターピンと言えるでしょう。


(HOWの部)どうやって「解像度」が高まるか

冒頭の足立さんの取材に戻りますが、イタコになりましょう。難しければ、まずは自分がやってみるに尽きると思います。

Agenda Noteで森岡さんが非常に奥深いことを語られています。

最近では、射幸性(ギャンブル性)と本能の関係を理解するために、私自身でネットゲームをやってみました。スマホゲームにハマる人の気持ち、「廃課金ユーザー(ゲームに高額課金するユーザー)」の気持ちを理解したいと思い、2カ月半で400万円を使い込んでみました。もちろん私のポケットマネーです。人はゲームを通じて、しかも高額課金してまで、一体何を得ようとしているのか。本物のヘビーユーザー並にやり込んでみないことには、深いところがわからないと思ったんです。

褒め言葉として「狂人」だ、と思いました。イタコ型、あるいは憑依型だと思います。

私のような凡庸なマーケターは、ここまで憑依できないな…と思ってしまうので「人伝てに聞く」を選びます。森岡さんはかなり否定的でしたが、デプスインタビューは有効な選択肢の1つだと思っています。

ただし、消費者を「自らの想定する枠に当てはめる」のではなく「消費者に意識しないまま語ってもらう」ことが大事です。この辺は、以下の書籍でまとめさせていただきました。

ネットで完結するのではなくリアルな商材の場合、店舗視察がお勧めです。その名も「この人はどのメーカーの何を買うかゲーム」。店舗にご迷惑をおかけしないように少しだけ離れた位置で、目の前の方が何を買うか当てるゲームです。(店舗混雑中はやっちゃダメ)

格好やカゴの中の食材を覗いて「この人はエビスかな?」「この人は金麦かな?」と考えます。なかなか当たらないのですが、子供連れご夫婦が「本麒麟」を買いがちと気付いて「あ、本当に売れてるんだな」いう当たり前の事実に腹落ちする…なんて機会が訪れます。

またB2B商材なら(コロナでかなり減少しましたが)展示会も良いですよ。私がなんだかんだアドテックやマーケティングアジェンダなどリアルの場所に足を運ぶのは「そこに居る人の会話を聞くため」です。

まさか、マーケター自身がマーケターから観察されているなんて思いもしないでしょうが、ツールベンダーや広告代理店の人たちを舐め回すように見ています。


「ブランドリスニング」の必要性を考える

その他なら、ソーシャルリスニングをあげます。デコム時代は「ソーシャルリスニング」に否定的だったのですが、キーワード次第でかなり有用だとわかりました。

以前にこのnoteにも書いたのですが、シーン、源泉、背景、情緒この4つが揃っていなければ消費者理解したと言えない!と考えていたのですが、そうじゃなくても「解像度」は高まる…と改宗しました。逆に、シーン、源泉、背景、情緒この4つが揃っても消費者理解できないパターンもあります。

その違いは「ブランドを前にしたリアクション」だ…と考えるようになりました。リアクションとは「情緒」であり、どのように感じたかという内面が滲み出たものです。

「情緒」は「背景」を起点にしているので、よほどでなければブランドに対する言及を切り取れば消費者理解が進むと考えました。

で、せっかくなので「具体例」についてお話をさせて頂こうと思います。こんなイベントを開催することにしました。「解像度」が高まるHOWをお話できればと思っております。

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ウェビナー(?)と言えば昼間か夕方が定番ですが、あえての20時から。ご飯も食べてひと段落したタイミングで、耳だけでもラジオ感覚で傾けてみませんか。

お申し込みはこちらから。(宣伝でした)

https://jxpress.zoom.us/webinar/register/WN_T1VUK9xDR2miODKC0XuQng

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松本健太郎

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