人との関係性は、「傷付き再生する」の繰り返し
僕は常々「ソロで生きる力とは、逆説的だが、人とつながる力である」と言っています。それは、決して友達を作るということではなく、「人との関係性という刺激の中で自分の内面を育てる」ということです。
今日は、そんな「人とのつながり」について書きます。
公園でベンチに座っている高齢者が微動だにしなかったら、あなたならどうしますか?声を掛けられますか?
高齢者じゃなくても、金曜の夜など繁華街の駅前とかで、酔いつぶれて寝ているサラリーマンを見かけることがありますね。でも、道行く人は素通りする人多い。
これを、傍観者効果といいます。
誰かが困っていても、まわりに人が沢山いると、「私が助けなくても誰かが助けるでしょ」っていう心理で、結局誰も助けないという状況になることです。
最初の話に戻ると、公園でベンチに座っている高齢者が微動だにしなかったとしても、大抵の人は気にもしないで素通りするか、もし気付いても、傍観者効果で、結局ほったらかしにしてしまうのではないでしょうか。
そんな時、見捨てずに声を掛けた、女の子のお話です。
とってもいいお話です。女の子の最初の声掛けから始まった、たくさんの人への思いやりの連鎖。まずはぜひご一読ください。
このお話には、「悪意のある登場人物」は出てきません。ですが、みんな、何かしら傷付いたり、疑いの念を抱いたりしてしまいます。
ここには「人のつながり」の本質的な部分があります。
悪意のない、相手への思いやりから出た発言や行動だとしても、それが全て必ずしも相手にとって良い作用をもたらすわけではありません。発言者は善意だとしても、結果的に、それが相手を傷付けてしまう場合もあります。
「自分が言われて嫌なことは他人には言わない」と、よく言いますね。
でも、本当に人を傷付けているのは「自分が言われて平気なんだから他人にも言っていいでしょ」精神なんです。
「結婚しないの?」「子どもは?」というソロハラ発言もそのひとつだし、「努力しよう」「頑張ろう」というポジティブマッチョ言葉もそれにあたります。
「自分の思う正義や善意は、他者にとってもそうであるはず」という思い込みをしている人は結構多いはずです。
絶対的正義なんてどこにも存在しないし、絶対的善もどこにもありません。「これこそ絶対である」と思い込んでしまっている人間ほど、他人に残酷な行動を平気でして、あまつさえどや顔をしてしまうことです。
善意でやったことが結果的に誰かを気付付けてしまうのは理不尽だと思いますか?
では、人を傷付ける可能性があるなら、誰にも何も言わない方がいいですか?
そうではありません。
そもそも人との関わりというものは、大小あれど摩擦なのであり、互いに傷を付けあう行為であると認識してほしいのです。
最初見た瞬間から気が合って、共感する人のつながりもある?
確かにあるかもしれません。しかし、その刹那がずっと続く保証はありませんし、あなたとその人の出会いや共鳴それ自体が、誰かの嫉妬心を喚起し、傷つけ、それによって最終的にあなた自身を傷付けないとも限らないのです。
善意だろうが、悪意だろうが、人と人の関わりとは傷を付けあう可能性があるということです。
では、「人とのつながりなんてない方がいい」と思いますか?
むしろ逆です。
傷付くからこそ、気付くことができるんです。
本を読んだり、誰かの話を聞いて響いた言葉に出会った時も、心がチクリとしたはずです。傷がつかなきゃ印象に残らないからです。そして、傷がつけば、人間はそれを治癒しようとする力が無意識に作用します。再生しようとします。傷がつく前より、強くなろうとします。傷付いたからこそ、強くなるのです。
人のつながりの重要なところはまさにそこです。
一生出会わないかもしれない人との一期一会の出会いも、「あいつ嫌いだわ」と第一印象で思ってしまった人との出会いも、何かしらの傷をあなたの中に残してくれた時点で、ありがたいものなんです。
「傷なんかつけたくないし、痛い思いなんかしたくない」とは皆思うはずです。もちろん、命にかかわるような大怪我はしない方がいいに決まっています。嫌いだと直感的に思った人と我慢して付き合い続ける必要なんてありません。最初から「傷付けてやろう」という悪意を持った行動なんかは論外です。ですが、だからといって、傷を怖れて誰とも関わらないという無傷のままでいることこそが一番危険なんです。それこそが「孤立」です。
生きるとは誰かとの関わりの中で、「傷を付けられては再生する」の繰り返し。傷は互いに関わった証だし、互いに傷の痛みを知るからこそ、相手の事も思いやれるようになるし、心が通えるのではないでしょうか。
テクノロジーが発達しても、ロボットと人とのつながりでは心が満たされないのは、ロボットの心が傷付かないからだと、僕は思います。
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