“Take a calculated risk(計算の上でリスクをとってやってみよう)"〜大事にしている仕事の心がけ
ある程度考えたら、とりあえずやってみることーアフリカでの10年のあゆみの中で学び、自分のスタイルに染み付いた考え方は、そのまま仕事の心がけになっています。
日経COMEMOのお題「#仕事の心がけ」に寄せて、どうしてそのあり方が大事だと思うのか、綴ってみたいと思います。やりたいと思っていることはあるけれど、なかなか踏み出せない…心当たりのある方に、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
Calculated risk(計算されたリスク)
つい最近、隙間時間で聞いているMasterClass(マスタークラス)でなんとなしに選んだレクチャーの中で耳に残った言葉が、"Take a calculated risk(計算の上でリスクをとってやってみよう)”でした。
なぜこの言葉が響いたのかというと、それはまさに10年共に歩んでいる西アフリカ ガーナ北部のボナイリ村のリーダーの生き方そのもので、私の中で財産になっている考え方だからだと思います。
何か新しいことを思いついて、例えば会社でそれを行動に移そうとすると、「会社や上司は何でも挑戦しろって言うけど」「前例のないことは通せないともいう」…というdoda(デューダ) のCMのような場面に出会すことが多いように思います。
一方、村ではこんな場面に出会すことはほぼありませんでした。村人のほとんどが雇われた立場ではなく定期収入も保証されていない農民で、収穫はその年の天候などに大きく左右されコントロールも効かないことが多い生活を営んでいます。そんな日常の中で、新しいことに取り組む際に「やらない理由」を並べて結局着手しない、ということはあまり起こりません。
様々なリスクも考えてみてそれでも良さそうだと思うなら、とりあえず小さくはじめてみよう、違ったら軌道修正すれば良いし、本当にダメならやめればいいーそんなメンタリティが主流なように思います。そのあり方こそがまさに、"Take a calculated risk(計算の上でリスクをとってやってみよう)”という言葉に一致するのではないかと思います。
そんなアジャイル*な生き方が私には魅力的に映り、以来そのあり方を仕事の上でも大事にするようになった気がします。
*アジャイルとは:「試行錯誤を繰り返しながらゴールを目指す開発・組織運営の手法」
そんなの無理かどうかは、やってみないとわからない
やってみて、無理だったと結論づけてやめることも少なくありませんでした。その中でも一番大きかったのは、5年前に日本の総合商社を退職し、外国の未上場企業に転職し、そして4ヶ月足らずで退職したことでした。
日本の公務員から総合商社への転職とは訳の違う転身に、もちろん不安だらけでした。たくさんの方に心配していただき、相談にも乗ってもらいました。情報請求しそれを吟味するだけではなく、その会社を退職した元社員をLinkedinで探してコンタクトし、話を聞かせてもらったりもしました。様々なリスクを書き出して、ワーストシナリオも想像しました。でもそれでも惹かれる自分を否定できませんでした。
うまくいかないかもしれないな、それでも挑戦したい、そう思い決断した転職でした。結果的には、想定以上のシナリオが待ち構えていたわけで、これ以上はとどまれないと、4ヶ月目に入った頃に即時退職という選択をしました。
退職直後は記憶が飛ぶほどショックでしたし、打ちのめされていました。ですが、5年の月日がたった今、リスクをとって失敗したことから得られた教訓が大きな宝になっている実感があります。無理かどうかは、やってみないとわからなかった。あの時尻込みしてオファーを断って挑戦しないままでいたら、やらなかったことを後悔していたかもしれません。
悩むほど魅力的なことなら、小さくトライしてみる
失意の中での独立起業から5年。本来は勤めながら副業のつもりだったので、起業一本は想定外でした。やってみないことにはプラスもマイナスも生まれない、まさに村のみんなと似たと言えるかもしれない環境に自分も立つことになりました。
あまり自信はないけれどでも興味があるな、やってみたいなと思う仕事に恵まれてきたと思います。そんな仕事のご縁を受けるかどうか悩む時、自分の心がやりたいという方向に惹かれているのであれば、その心の声を無視せず蓋をせず、いろんなことは想定しながらも着手してみる。頭でっかちになりすぎず、柔軟に変化していくことを恐れず、飛び込んでみる。
根底には、「死にゃーせんけん、やってみい」という父の口癖だった考えも支えてくれているかもしれません。失敗してもどうにかなるラインは意識しつつ、でも多少の失敗は恐れずやってみる。
“Take a calculated risk(計算の上でリスクをとってやってみよう)"ー大事にしている仕事の、そして生きる上での私の心がけです。