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枯れた製品のイノベーションを考える

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

失われた30年と言われて久しい、停滞を続ける日本経済。円安効果もあり輸出の多い企業にとっては追い風のように見える環境ですが、原材料の大半は輸入に頼っているわけですから全体の収支としては大きく赤字となっています。

2022年の貿易赤字が過去最大に膨らむ見通しとなった。財務省が15日に公表した11月の貿易収支を踏まえると1月からの累計の赤字額が18兆5124億円に達した。暦年ベースで過去最大だった14年(12兆8160億円の赤字)を超え、12月を含めた年間で上回るとみられる。円安や資源高が化石燃料に依存する日本の赤字を積み上げている。

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日本が再び世界のトップを目指すには、それこそ世界中で求められる革新的な製品・サービスを生み出していくしかないわけです。そのために、どの企業も「イノベーション」の必要性を認識し、実際に経営戦略上の重要課題と位置づけて開発競争を繰り広げています。

もちろん、日本には特定分野において世界トップレベルを維持する企業がたくさん存在しています。経済産業省ではそのような企業を「グローバルニッチトップ」として選定しています。

部門ごとにみてみると、

機械・加工部門 (61社)
素材・化学部門 (24社)
電気・電子部門 (20社)
消費財・その他部門 (8社)

となっており、機械・加工部門が大きく占めており、サービス分野では非常に少ない数であることがわかります。

日本の国際競争力を上げる取り組みを国や大学からも推進しようということで、いわゆる「大学10兆円ファンド」が今年から始まりました。

文部科学省は23日、政府が創設した10兆円「大学ファンド」の支援対象となる認定校の公募を開始した。2023年3月末で公募を締め切り、段階的に候補を絞り込んで23年秋ごろに最初の認定校が決まる。ファンドの運用益で研究基盤の強化を後押しし、日本の大学の国際競争力の向上を図る。

大学ファンドは公募で選ばれた「国際卓越研究大学」の研究力強化策を運用益で助成する。認定校は段階的に増えて数校となる見込みだ。運用益の目標は年3000億円で、仮に5校に分配すれば年間の支援額は1校あたり600億円になる。

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イノベーションを起こすのは、究極のところ一人の人間です。このファンドを通じて魅力的な研究環境が整備され、世界中から様々なアイデアを持った熱意ある人材が集まって研究に没頭できるのだとすれば、革新的な製品の元になるような芽が生まれるのかもしれません。

また、別の視点で考えてみると、すでに革新の余地がないと皆が思っているような製品でも、実はまだまだ潜在的なニーズを掘り起こす力があるという場合もあります。最近私が驚いた事例が「鉛筆」です。

サンスター文具が発売した金属配合の特殊芯を持つ鉛筆「メタシル」(990円)が売れている。2022年のヒット商品番付では西の前頭11枚目に入った。摩擦によって黒鉛の粒子が紙に付着し、黒くなる仕組みだ。削らずに16㌔㍍書けるとSNSで話題を呼び、初回の受注は計画比6倍、出荷は累計21万本を超えた。「削る手間を省き、筆記に集中して使ってほしい」という開発者の思いがヒットを生み出す原動力となった。

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鉛筆という完成された枯れた製品においても、まだ革新の余地があるのか!とビックリしたのです。削らずにずっと書き続けられる鉛筆、と言われても正直ピンとこない感じもしますが、どちらかというと鉛筆の形をした新しい筆記具が登場したというのは正しい認識なのかもしれません。

今でも世界トップの製品を生み出し続ける、任天堂。その礎をつくり「携帯ゲームの父」して世界中の愛好家から存在されている天才ゲーム開発者、横井軍平さん。彼の独自哲学として有名なのが「枯れた技術の水平思考」という考え方です。

既存の技術を既存の商品とは異なる使い方をして、まったく新しい商品を生み出す。眠っている技術や過去に大成功した枯れた技術の宝庫である日本は、いまこそこの考え方を深く受け止めるべきではないでしょうか。

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タイトル画像提供:akiti / PIXTA(ピクスタ)


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