テレワークで最後まで残ったハードルは時差
この半年ほどで、すっかりテレワークが世間に定着した。少なくても、相手がテレワークしていなかったとしても、こちらがテレワークの体制にあるということを、多くの取引先が当たり前のように許容してくれるようになったと感じる。
このコロナウイルスの問題が起きる前までは、例えば自分が海外出張中にミーティングを行いたいといった場合、オンライン開催を打診しても帰国を待ってやりましょうと言われることも少なからずあったことを考えれば、大きな変化が生じた実感がある。
自分の場合は、幸い元々コロナの問題が起きる前から、テレワークが日常的に行われているスタートアップの一員でもあるので、テクニカルな部分でハードルがあったわけではなかった。もちろん今ほど頻繁にzoomやTeams、Wherebyといったオンラインの会議ツールを使うことはなかったけれども、それでもそういったものの利用は日常的に行っていたと言っていい。
そこにこうしたコロナの問題が起きたことにより、社会全体がテレワークあるいはリモートワーク・在宅勤務をするようになったために、なおさらこうしたツールを使ってオンライン会議をすることが当たり前になった。
そして、これは同時に自分の時間が、やや大げさに言えば24時間をある程度自由に組み立てられるようになった、ということでもあった。それまでは夕方以降の時間は会食や会合・セミナー等が入ることも多く、その時間を他の用事に振り向けることは難しい場合が多かったが、今であれば、夕方から夜の時間を仕事の時間に充てる代わりに他の時間を休息に回したり、あるいは家族との時間に回すといったようなことも不可能ではない(もちろん家族がそれを許容するかという問題はあるのだが)。
このようにして、人に会うことを強いられない、どころか会わないことを強いられた今年の春から夏にかけて、自分なりにテレワークの活用を一層進めてきたけれども、最後まで克服できないとしみじみ思うのが時差の問題である。
海外とのやり取りをする場合、オンラインのコミュニケーションツールを使うことによって相手と自分がどこにいるかは、事実上問題にならない。しかし、時差の問題だけは、これだけはどうしても克服しがたい壁として立ちはだかっているということを痛感している。
簡単に日米欧の時差表を作ってみた。9時から17時までを仕事の時間、23時から翌6時までを睡眠時間として、それぞれをオレンジとブルーに塗り、地域ごとに重ねてある。
例えば、ヨーロッパであれば日本時間の夕方以降を仕事に充てることである程度「共通の仕事の時間」を作り出すことができる。一方、アメリカ、特に東海岸であるニューヨークやワシントンD.C.といった地域と仕事をしようとした場合には、先方に「残業」してもらうか日本側が早起きすることで「共通の仕事の時間」を作り出せる。しかし、いずれにしても、早朝や夕方以降の、本来であればプライベートな時間を犠牲にしなければならない。アメリカ西海岸にしても、程度の差はあれ同じことで、東海岸よりは少しマシかなという程度だ。
この時差の問題をリアルタイムのオンラインツールが埋めることは難しい。時差の違う色々な場所で時差表を作って眺めてみたが、なかなかアメリカともヨーロッパとも都合のいい時間帯にある場所というのは難しいようだ。
いずれにしても、24時間の使い方の自由度が増すことはテレワークの大きなメリットであるのだが、場合によっては、朝目覚め夜には寝るといった自然の摂理には、必ずしもなじまない働き方になってしまうのかもしれない。
そうであるならば、アメリカと仕事をするのであれば自分がアメリカに行き、ヨーロッパと仕事をするのであればヨーロッパに行って、そこに腰を落ち着けて仕事をするということが、結局は得策なのかもしれない。eメールがビジネスで普及した時に思っていたことがまさにそれで、普段から顔を合わせている人とはeメールでも意思疎通は何とかなるから、むしろ日ごろ遠くにいる相手のところに足を運んで仕事を進める、そのためにオンラインツールが活用出来る、と思ったし、今もそう思っている。実際には、オンラインツールがあるから相手のところに行かなくていい(その方がコストがかからないし)、という使い方が主流になってしまったことは残念だ。
今はまだ、業務渡航であってもなかなか自由に世界を動き回ることが難しい。
とはいえ、テレワークが広く市民権を得たことは、このコロナ問題によって生じた変化のひとつだ。人・組織・業種等それぞれに固有のハードルはあるし、時差のように乗り越えきれないものもあるけれど、せっかくのチャンスであることは間違いないので、今はそれを最大限活用しておきたい。そうすれば、コロナの問題が落ち着いたときに、私たちの働き方の選択肢は、さらに広がることになるはずだから。
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