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米大統領選まで100日。デジタルメディアがもたらす分断とテックプラットフォームの行方

コロナ禍で開催される米大統領選投票日まで残り100日、ということで改めて大統領選に向けての選挙戦略、特にデジタル戦略などに注目が集まっているようです。

今回取り上げてみたいと思ったのが以下の「分断のアメリカ」という一連の特集記事です。記事中に掲載されている写真を見て眼を疑い、つい2度見してしまったのが「Q」の文字が描かれている、米国で3年ほど前からいわゆる「陰謀論」として話題になっている「Qアノン」についてです。

「Qアノン」を止めよ――。ツイッターは7月21日、極右の陰謀論を主張するアカウントを永久に停止すると発表した。Qアノンはトランプ氏を熱狂的に支持する「Q」を名乗る人物とその信奉者を指す。「クリントン元大統領夫妻らが人身売買に関与した」といったデマを拡散する。

新型コロナウイルスの感染が世界的に広がり、社会が混乱する状況の中で、以前からトランプ支持者の間で信仰宗教のように広がっていたQアノン信奉者が一気に急増し、海外にも広がっているようです。「米国政府はオバマ元大統領やヒラリー・クリントン、ビジネス界の大物やセレブ、悪魔崇拝者らが所属する秘密組織ディープステートに操られ、小児性愛者向けの人身売買に加担している」、「コロナウィルスはワクチンを売りつけるためのビル・ゲイツの陰謀」、「新型コロナは5Gで感染」というような、にわかに信じられないような情報がフェイクニュースとして拡散しています。そうした背景には「政府が秘密の真実を隠している」という信念を共有しているユーザーの間に相関関係があることをツイッターやフェイスブックなどのSNSプラットフォームが推薦アルゴリズムとして認識している」ことが関係している、とも指摘されています

昨日公開されたBBC NewsのYouTubeでの「Qアノン〜コロナウィルスと陰謀論のカルト」と題した約12分間の解説動画の中でも詳しく紹介されていますが、パンデミック発生後のSNS上でのQアノンについての言及数やFacebookグループへの登録者数が急激に増えている点に驚きます。こうしたネット陰謀論は日本では関係ない、と思う人も多いかもしれませんが、日本語でのインターネット検索傾向からも同じように急上昇していることが伺えます[検索キーワード:Qアノン / 対象地域:すべての国]。

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YouTubeの投稿を見ているうちに気づいたら「ラビット・ホール」に転がり落ちるように信者になっていた、というような話もあちこちで聞かれます。BBCの動画の中では父親や親戚がある日突然Qアノン信者になり、家族が分断してしまったインタビューの様子なども紹介されています。かつてイスラム国の兵士を勧誘するためにSNSやYouTubeを駆使して若い人の心の気持ちに入り込む手法などが話題になっていたことがありましたが、同じような恐怖感すら感じます。

「言論の自由」を打ち出す、新しいSNS、「パーラー(Parler)」

冒頭触れたもう1つの記事「保守系SNSパーラー、トランプ支持者ら集う 規制に対抗」で紹介されているのが「言論の自由」を打ち出す新しいSNS、「パーラー(Parler)」です。人種差別や暴力を扇動する発言に対してツイッターやフェイスブックから規制が強まりつつあるとして、トランプ陣営や共和党幹部が相次いで乗り換えを呼びかけているSNSです。共和党のテッド・クルーズ上院議員もツイッターで動画メッセージを投稿し、パーラーを利用するよう、呼びかけています。

言論の自由を重視するパーラーとはどのようなものか、試しにアカウントを作成してみました。

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驚くのは、アカウント作成のプロセスでいきなりおすすめのアカウントとしてトランプ陣営のアカウントをフォローするように推奨された点です。

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アカウントを作成すると、すぐ直後に以下のようなトランプ陣営含む4件ものアカウントから「歓迎」のコメントが寄せられていることに更に驚きます。おすすめアカウントでその他に列挙されていたのはフォックスニュースのトランプ寄りの人気司会者ショーン・ハニティ氏、元ニューヨーク市長で現在はトランプ大統領の顧問弁護士のルディ・ジュリアー二氏など、明らかに保守系、トランプ大統領を支持している人ばかりです。

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すぐにアカウントを削除しようとも思いましたが、しばらくこのまま様子をみてみようと思います。現在はまだ利用者数280万人、トランプ陣営のアカウントのフォワー数も120万ほどですが、100日後の大統領選の投票日までにどのようなやり取りが行われるのか、注目してみたいと思います。

以上、今回はQアノンを巡る状況、そして「表現の自由」を打ち出す新しいSNSのパーラーを眺めてみましたが、大統領選に向けての残り約3ヶ月の間にはまだまだ想像できないようなことが起きるのではないかと感じます。

2016年の前回の選挙の後に露呈したケンブリッジ・アナリティカ問題、ロシア等の海外政府からの干渉、マケドニアの若者らによるお金目当てのフェイクニュースビジネスの実態などに、当時は世界中の多くの人が驚いていました。今回の大統領選挙を前にして、「今回の選挙戦では個人情報の活用はより深く、巧妙になっていると思う」と語る識者もいますが、4年前と同じような驚きはできれば体験したくないと願いつつ、引き続き注目していきたいと思います。

追記:フィナンシャル・タイムズの翻訳記事として「Qアノン」に関する記事が掲載されていました。大きな問題として今後更に注目が集まりそうです。[7/28] 

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Photo by Ravi Sharma on Unsplash



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