生産者とフェアな関係を続けていくためには?
先日登壇させてもらたったイベントで「生産者とフェアな関係をつづけていくには何が必要ですか?」という問いをもらいました。情報の非対称性がなくなっていく21世紀において、ブランドや店舗には真にフェアな姿勢が求められる事は必然となってきました。今回は問いについて考えてみたいと思います。
生産者とフェアな関係とは?
急成長している中国発のアパレルブランドのSHEINが成り立つのは、スウェットショップ(“搾取”工場)を使っていることで、働く人は1日18時間労働しているなど大きな問題として反響を呼んでいます。
上記の例は、生産者側を奴隷のように労働させており、明らかに歪みが関係に思えます。
「生産者とフェアな関係をつづけていくには何が必要か?」という問いに手前にあるそもそもフェアな関係とは?と言う事から考えてみたいです。
僕が考えるフェアな関係とは、対等なパートナーであるいうこと。
これはビジネスにおいて対応なパートナーという意味です。
つまり価格交渉の交渉力を双方が持っている状態を意味しています。
僕らにとって生産者とはカカオ農家さん。
現状のチョコレート産業で設定されているカカオ豆の買付における市場価格が安いというのは事実です。
その結果として、市場価格が農家にとっては安すぎて、多くのカカオ農家さんが貧困層と言われる収入しか得れていない状態に陥っています。
この場合、生産者側に価格の決定権がないと言うこと大きな問題です。
これは生産者とのフェアな関係とは言い難い。
僕たちMinimalはフェアな関係を成立させるために、市場価格やフェアトレード価格よりも高い価格でカカオ農家さんからカカオ豆を買い付けしています。
2021年~22年において、僕らは市場価格の平均で約3倍程度の金額で買付を行っています。
しかし、これは現状カカオ農家さんが買い叩かれているから、ただボランティアで高い価格を払っているのではないと言うことはきちんと伝えたいと思っています。
僕らが市場価格よりも高く買うのは、自分達のビジネスのためであります。
高く買う理由は、「品質の良いカカオ豆」を買い付けるためです。
フェアな関係を考える上で、この点はとても大事です。
生産者が一方的に買い叩かれていても駄目だし、僕らがボランティアで高く買うということも同じように駄目だと思っています。
つまり、生産者と僕らのどちらかに偏ったバランスの関係でないことがフェアな関係だと思います。
なので、僕らは市場価格よりはもちろん高く買う事をしますが、品質が落ちればもちろん買付価格を下げるという交渉をします。
価格上げる事も、下げる事もあくまで交渉であり、双方が話し合いで納得をして価格を決めていくことが出来る事が、フェアな関係で対等なパートナーとしての条件であると思います。
「市場をつくる事」が、生産者とフェアな関係を続けていくために大切な事
生産者とフェアな関係を続けていくために必要なこととして、僕が考える事は「消費者市場をつくっていくこと」です。
生産者とフェアな関係を続けて行くには、生産者からの搾取構造にならない価格で市場に売れる事が重要です。
どういう事かというと、ブランドやお店は最終的に市場の消費者からお金をもらって活動が成り立ちます。例えば、チョコレートが100円で買えるのが当たり前の市場が成り立っていると、その100円の収入から自動的に生産者に払える金額が決まってしまうのです。これがその10倍の1000円で売れる市場が成り立てばその分生産者に支払える金額も大きくなります。
この点が非常に重要で、もし仮に生産者とフェアな関係が成り立っていないとすれば、企業が自社利益をとるためだけに生産者から搾取していること以外に、そもそもビジネスモデル上で、生産者にきちんと対価を払う利益がでない構造になっていることが多いと思います。
なので、「生産者とフェアな関係をつづけていくには何が必要ですか?」といわれると、僕は「そもそも生産者に正当な対価を払える市場をつくる事」であると答えます。
反例にはなりますが、冒頭で出したSHEINの例も、搾取構造が明確であるにかかわらず業績を伸ばしているのは、そういう市場が成り立ってしまっているためです。
ものをつくって売るという単純な商売の原理として、ものがいくらで売れる市場なのかということが、そこに関わる生産者のえられる収入を決めるのです。
生産者と一緒になって価値を高める努力を続けていく事が大事。
大前提として、インターネットの発達で情報の非対称性がなくなっていく21世紀においては消費者が賢くなっていきます。
これまでは目隠しされていた生産者側への搾取構造があるとするとそれがバレてしまいますし、そういう企業から買わなくなるという可能性があります。
ただ、冒頭のSHEINが成り立っているように、いかに情報を知っても、自分の実利(この場合は安い)を優先する人も多いのが事実でしょう。
生産者とフェアな関係を続けることができる市場をつくっていくために大事な事は「生産者と一緒になって市場の価値を高める努力を続けていく事」であると思います。
僕らが単にボランティアでカカオ豆の買付価格を高くしないという理由がココになります。
生産者とフェアな関係が成り立つ市場価格を実現するために、生産者であるカカオ農家さんに他と比べて美味しいチョコレートとつくるために品質の良いカカオ豆を作ってもらう必要があります。
例えばそのために、「美味しいカカオ豆をつくるために葉っぱの選定3ヶ月に1回やって下さい。」とお願いをして、それをやってくれたら、対価を上乗せするなど、一緒になって対等に努力できる関係を築く事がポイントです。
生産部分から付加価値を上げることができればこれまでの市場とは違った差別化した商品ができ、そこに価値があれば新しい市場として成立して、結果として価格を上げることができて、生産者側へも還元できる。
この正しい方向への努力を生産者と一緒にでき、対価を山分けするという関係をつくれることがフェアな関係を続けていくための第1歩です。
そのために、僕が常に意識していることは、生産者と消費者の距離を縮めることです。
例えば生産者を日本に連れてきて実際にお客さんの感想を聞いてもらう。逆も有効です。消費者を生産現場に連れていって現実を見てもらう。
方法は何でもよくて、生産者側と消費者側を近づける事は市場を新しく創っていく上でとても有効な手段だと思います。
きれい事だけでは消費者は買わないという現実から逃げない
生産者とフェアな関係を続けていくには、フェアな関係が成り立つ市場をつくらなければなりません。
そのために、きれい事をいうのではなく、泥臭く市場をつくるために、生産側からクオリティーを挙げる努力を一緒にすることが一つ解であると考えます。
僕が8年間Minimalを経営して知った事実は、消費者は賢いが故に、メリットがある商品であれば類似商品(と思われているもの)の価格よりも高い価格だったとしてもきちんと買ってくれるという事実です。
繰り返しますが、きちんとお客さんが価値を感じる事ができれば、の話です。
そして、その差別化の価値を磨くために、やはりビジネスモデルの川上である生産者側を巻き込むことが重要です。
このことに気づくことができたブランドは、安易な価格競争に巻き込まれることなく、自社ブランドの付加価値を高め続けて行く事ができると思います。
Minimalが創業以来大事にしてきた事は、生産者と対応なパートナーであるという事。そのために、良いカカオ豆を一緒につくり、良いチョコレートをつくり、お客さんに喜んでもらう事。
そして、喜んでいただけるお客さんが増えれば増えるほど、市場が形成されて、生産者への支払い対価が増えて、生産者とのフェアな関係を続けていくことができると信じています。
この原理原則を忘れず、常に生産者と一緒に価値を高める努力を続けていきたいと思います。
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