選挙DX―政治は国民を映す鏡である
こんにちは。グローバルでDXの調査・支援をしている柿崎です。
本日10月31日の衆議院議員選挙の開票速報を見ながら、今回も「選挙DX」について書きます。
期日前あるいは今日、皆さんは投票所に行かれたことと思います。
「選挙DX」のゴールの一つにインターネット投票の実現が挙げられると思います。グローバルでは、インターネット投票を導入する国や地方があります。エストニアでは、2005年の地方議会選挙からネット投票が可能になり、2007年に世界で初めて国政選挙でネット投票が可能になリました。
日本でも、ネット投票の広がりが期待できる動きがあります。『総務省が2020年2月5日、海外に住む日本人がインターネットで投票できるようにするための実証実験を東京都世田谷区で実施した』と日本経済新聞が報じました。
また、日本において『コロナ禍の出口が見えない状況は変わらず、自宅にいながら選挙権を行使できるインターネット投票を実現しようとの機運が高まっている。政府の意見公募サイトでは最も高い人気を集め、野党は先の通常国会に、2025年の参院選から導入するための関連法案を提出した。不正投票への懸念などから政府・与党内には慎重論が根強いものの、推進を求める声も出始めている』と東京新聞が報じていました。
ここで、私が注目したのは、「野党が関連法案を提出し、与党内には慎重論が根強い」という点です。エストニアでは、ネット投票を開始したことで従来の選挙結果に影響を及ぼしたしたという例があります。
また、日本の選挙では、一般的に若年層の投票率が低く、高齢層の投票率が高い状況にあります。
昨年の都知事選では60~70代の投票率が20代の倍程度あり、過去の衆議院選挙でも同様です。日本の選挙では高齢層からいかに支持を得られるかが勝敗を左右してきました。与党が高齢者から指示を得てきたやり方を変えるのは慎重になるのは分かる気がします。
新型コロナワクチン接種は、なぜ若年層を含む働き世代ではなく、高齢者への接種が優先されたのでしょうか。厚生労働省は、Webサイトで『高齢者は、新型コロナウイルス感染症の重症化・死亡のリスクが高いため、接種が優先されています』と回答しています。
これ以降は、あくまで私の想像に過ぎませんが、ワクチン接種は、投票率の高い高齢層を優先し、投票率の低い若年層を後回しにしているようにも見えます。年代別ワクチン接種率と年代別投票率が相関するのは偶然でしょうか。これは良し悪しの問題ではありません。もし企業のマーケティングであれば当然のことでしょう。企業であれば、自社の商品に関心がある層を優先するのと同様です。政府は、政治に関心がある、つまり選挙に行く高齢層を優先するのではないでしょうか。
別の選択肢として、例えば、若年層を含む働き世代のワクチン接種を優先する選択肢があります。政府は、高齢者、特に働いていない高齢者にワクチン接種を我慢して家から出ないようにお願いすることもできます。
これが現在の選挙活動にもつながります。街頭演説や選挙カー中心のアナログの選挙活動になります。投票率の高い60〜70代をターゲットにする選挙活動では、オンラインで公約を伝えるのが難しいのはないでしょうか。
ただ、日経新聞によると、前衆議院議員の8割がツイッターを利用していたようです。また、今回の衆院選の候補者を見ると、SNSアカウントを開設していない候補者を見つけるのが難しいほど準備されています。有権者は、候補者からの一方的な声を聞くだけではなく、候補者とコミュニケーションできる状況にあるのです。
「政治は国民を映す鏡である」
これは、サミュエル・スマイルズが1858年に出した「自助論」でのくだりです。「政治が国民のレベルより進みすぎている時には、国民のレベルまで引きずり下ろされる。政治が国民のレベルより遅れている時には、政治のレベルが引き上げられる。」
候補者のWebサイトやSNSアカウントを通じて政策・公約を見ている有権者はどれくらいいるのでしょうか。有権者、特に若年層の政策に対する関心の低さが、選挙カーを走らせる状況をつくっているともいえます。選挙カーがうるさいと思う人は、やめるように候補者のSNSアカウントに提言することもできる状況です。
結局、選挙DXを実現するのは、有権者個人の行動からです。投票するのは当り前ですが、その前に、政治家・候補者のWebサイトやSNSで政策・公約を確認したり、SNSで質問や提言をすることが、「選挙DX」、すなわち新しい選挙スタイルを確立するきっかけになると考えています。
さて、今回の衆院選の年代別投票率に変化はあるのでしょうか。