エンタープライズ営業の作り方"商談前"編
前職でエンタープライズセールスが多く輩出されたのは、振り返るとCOOが営業育成を最優先課題として相当な時間を投資したからです。
メソッド化やその浸透、時勢に合わせた新しい研修追加などが徹底されていました。その結果、新卒が3年で売れ出し、5年で独り立ち、売れる営業の層ができる。
それを思い出しながら、以下のようなツイートをしたところ、たくさんの反応を頂きました。
もう少し詳細を聞きたいというお声も頂戴したので、これから何記事かに分けて「新人をエンタープライズ営業として独り立ちさせるまでの育成メソッド」の一例をご紹介します。
最強の営業組織と言われるキーエンスでは「知の共有」が重要とされ、日々社内に蓄積されていることが一つの競争力になっていると言われています。
エンタープライズ営業も「知の共有」
何か参考になる点があればうれしいですし、あくまで一例なので「うちはこうやってるよ!」などのご意見があれば、ぜひ教えてください!
それでは今回はまず「商談の前まで」編です。
テレアポ一言の磨き込み
まずは「テレアポ一言の磨き込み」です。
お客様からすれば「知らない人から電話が来た」というのは、「なんだこの人は...」と、警戒心が強い状態ですよね。
そのため、さらに少しでも「これ、知らない人からの営業だ。勧誘だ。」とお客様が感じると、一瞬で心がシャットダウン。すぐに電話を切られてしまいかねません。
そこの「違和感、マイナス感情」を生まないような言葉遣いを磨きこむのが重要です。なので、電話をかけてすぐの最初の数秒~10秒の間で「警戒されない&信頼される」内容を詰め込む必要があります。
たった10秒です。新人には、一言一言にこだわるように伝えましょう。
ただ、そのトーク台本も、新人がいきなり全て最高のものを作ろうとするのは、現実的ではありません。
しつこいようですが「まずは最初の10秒」から改善をしてください。最初はテレアポの上手な人をマネさせるところからでも良いと思います。そのうえで個々人にとって最高の台本を作りあげてください。
顧客ターゲットの意識
次は「顧客ターゲットの意識」です。
まず新人には多くの場合「営業リスト」を配布するのではないでしょうか。
前職では新人に対して、そのリストからやみくもに営業するのではなく「このリストでは、特にどこが売りやすい?」と徹底的に考えるようにと指示されていました。
新人、特に新卒である場合は、まだ自社のサービスについて詳しくないことがほとんどですよね。そこで、特に自社を知るために、受注リストや具体的な事例記事を全部暗記するくらいに読み込む。
そして
「どういう部分が差別化要素なのか」
「どのような効果が出ているのか」
「だったら、こういうところに売れるのかも」
と考えてもらいましょう。
もし、ご自身が営業のマネージャーなどで「そもそも会社として、どう営業リストを作るか」を考えたい場合には、以下の画像が参考になると思います。
詳細については、以下のnoteでまとめていますのでご一読を。
マーケの費用対効果の徹底
前職では、新人でも「案件がないなら、自ら作る」という教えから、セミナーの企画を考えることがあり、そこから「費用対効果を徹底的に考えさせる」ということを実施していました。
このとき
こういった点を起案段階で新人でも上司から徹底的に問われます。どれだけコストが低くても、費用対効果の説明ができないと稟議を通してもらえません。
さらには、結果的にはどうだったかを効果測定をすることも必須でした。
それは、新人の営業であっても、自分で真剣にマーケティング施策を考えることで、「ターゲット」を真剣に考えられるようになるからだと解釈しています。
少し具体的なイメージをもとに、通して考えてみましょう。
とすると、お客様がセミナーに参加してでも知りたいと思えるような情報や、解決したい課題を本気で探さないといけません。
「本気」になる分、感度が高まりますし、積極的に自分から情報を取りに行くようにもなります。その結果、お客様に寄り添った営業になっていく、というわけです。
やりすぎな(初回)商談準備
前職において、新人の時は「とにかく商談準備をやりつくす」方針がありました。
もちろん、新人の場合は商談準備をどこまで行うべきかはわからないものです。基準がないため、仕方ありません。
そこで伝えられていた言葉が「調べつくして、1ミリ単位でこだわって、差別化せよ」でした。
などなど、可能な限りの情報収集を行い、そのうえで初回から「プチ提案」を作るところまで行われていました。
新人の初回商談であっても「自分なりに調べた情報から、自分なりに課題を考えて提案を作ってきました。」と言えるようにします。
なぜここまでするのか。
まず、お客様の具体的な課題・悩みを教えてもらうためには、お客様の信頼が必要です。
この点、プチ提案ができるくらいまで準備をするとお客さんにも本気度が伝わるので、それだけで信頼されやすくなります。さらには、背景をしっかり調べて作った提案であれば、的外れになることはほぼありません。
万が一、まったく当たらないとしても「ここまで調べてくれたから言うけど、実はね......」と教えてくれる場合も多いものです。
そして、この「現状の課題をちゃんと理解する姿勢。仮説を立ててもっていく姿勢」が、信頼・そして2回目の商談につながります。
もちろん、ここまで調べて作るからには、最初新卒だと10時間以上かかるなんてこともザラです。だからこそ、アポが多いわけでもない新人のうちに行うべきなんです。
さらには、全力で調べることで、どこまで調べるのが効率的なのか/非効率なのかを、体験できます。上司やお客さんからのFBがあるので、訪問を重ねるほど、事前準備のポイントがわかるようにもなる。
「無駄を知る」ことそのものが狙いなので、この過程に一切の "無駄" はありません。
商談の演出準備シート
商談は演出の準備が必要であり、前職では「スピルバーグせよ」という一見すると謎の言葉がありました。
これはどういうことか。以下のツイートでも紹介しています。
例えば、重要な商談がある場合、新人であっても会議の参加者にあわせて「演出依頼」を作ります。
演出といっても、セリフじみた内容を用意するわけではありません。以下のようなイメージで、一人一人で違うはずの目的や課題に合わせて、何をどこまでどう伝えるかを決めます。
このようにして、参加してもらうお客様ごとに
などを用意しておきます。
これを新人のうちから本気で考えることで「意思決定にかかわる人、一人ひとりにきちんと目を向ける」営業が育っていくわけです。
最初のうちは間違ってても構わないから本気で考えてみて、と伝えてみてください。
一言一句の議事録
新人のうちは先輩や同僚のスクリプト・営業トークを盗むことが売れる近道です。そのため、前職において会議での一言一句を漏らさずに議事録をとるよう指導されていました。
また、下記のような一言の違いも敏感に感じ取れるように。もはや変態とも呼べる領域かもしれませんが、そのくらい営業組織として言葉にこだわっていたんですね。
そして議事録は、ただの記録ではありません。事前準備とアクションプラン作りをし、受注につなぐための初めの一歩でもあります。
リモートワークで会社の同僚とすらコミュニケーションギャップは生まれやすい環境になっているので、議事録の綿密な準備は対顧客だけではなく、対社内でも活用できる優れモノでもあります。
そんな議事録マスターになるための具体的な手引きは以下で詳しくご紹介します。
終わりに(次回へ続く)
今回は営業の育成の中でも「商談前」までの部分について、ご紹介をしました。
正直、ここまでできるだけでも二歩も三歩も抜きんでた営業になれるとは思います。ただし「新卒が3年で売れ出し、5年で独り立ち、売れる営業の層ができる」 そんな営業組織が出来上がるにはまだこの先も重要です。
次回は「商談の進め方」についてご紹介するので、できればnoteやTwitterをフォローしてお待ちください。
RightTouchではまだまだ創業メンバーを募集中で、成長できるフィールドは山のようにあります。
エンタープライズ営業も含めて、こんな環境で少しでも働いてみたいと興味を持っていただいた方は、ぜひ応募をご覧いただき、カジュアルに話しましょう。