これから会社は社員に残ってもらうのに必死になるだろう。
「働かないおじさん」とか「逃げ切り世代」とか、シニア社員を揶揄する言葉が飛び交うようになったのは、いつ頃からだっただろう。しかしそれも無理はないことだ。若者たちは給料が伸び悩むなかで、年功序列というシステムで高い給与や退職金が保証されている。その一方で、その高い報酬が経営の足枷になりかねないと、多くの企業が早期退職や役職定年を導入してきた。
しかし今、その潮目が変わり始めている。
明治安田生命が定年を70歳に引き上げるという、先週のニュースを聞いた時に、「いよいよ始まったな」と思わずつぶやいた。
優秀な人材をどう確保するか。その争奪戦がこれからますます激化する。考えてみたら当たり前の話だ。少子化や高齢化がすすみ、日本の労働人口はますます減少しているのだから。
15歳から64歳の生産年齢人口は、ピーク時の1995年に8726万人だったが、2023年は7395万人と1300万人余減少し、今後もさらなる減少が見込まれているという。
つまり未曾有の人手不足だ。
この傾向は今後もさらに拍車がかかる。AIが発達しても、まだまだ代替可能な仕事は限られる。であれば、シニア社員を手放すのではなく、どのように残ってもらうのか、業績のよい会社ならそこに力を注ぐことにますますなるだろう。
しかしそうすると若手は窮屈になるのではないか、という懸念もある。
こうした疑問に対して、70歳定年を導入した明治安田生命の永島社長は、以下のように発言している。
若手も、シニアも、フラットに実力で判断される。つまり必ずしも年功序列を維持しようということではないのだ。
しかし一方で、コロナ禍をへて働き手の意識も変わり始めている。本当にひとつの会社で働き続けることがよいのだろうか。自分の実力をもっと評価してもらえる場所は他にあるのではないだろうか。これまで以上に多くの人たちが、フリーランスとなり、より広い世界で活躍を始めるだろう。
働くことのあり方は、これからも変わり続ける。
その時に、問われるのは会社での役職ではない。
あなたの実力だ。