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国民の健康をもっとも蝕んでいるものとは?

2021年頃は「孤独は悪だ」みたいなことを吹聴する輩が大勢でてきてうんざりしたものだが、そういう「孤独が何かをまったく理解していない」ような薄っぺらい奴らに対するカウンターとして上梓したのが、拙著「居場所がない人たち」でもある。

この本では、とにかく「孤独って寂しいことだよね、辛いことだよね、苦しいことだよね、だから孤独にならないようなしないとね」みたいなステレオタイプの論説を真っ向から否定し、「それってあなたの見方でしかないよね」と視点の多重化を提示したものである。

「孤独は死に至る病」だとかの言説に違和感がある人はぜひ拙著を手に取っていただきたい。その違和感を晴らすような言語化をしたつもりである。

そもそも論からいえば、国が英国の猿真似をして孤独担当大臣なんてポストを設置したことにも意味を感じない。

はるか以前に、2018年に孤独担当大臣が英国にできた際に「日本にも必要か?」という週刊プレイボーイの特集で取材を受けたことがあった。

結論からいえば「そんなものは必要ない」と一刀両断している。むしろ、変なポストを作って、そのために予算つけて、その予算に変な団体が公金チューチュー目当てに群がり、単なる利権構造を作るだけだからだ。案の定、そうなっている(これはこども家庭庁にも言えること)。

実際、大臣ポストができて、何か実績あげたか?といえば何もない。ひとつだけ成果をあげるとすれば、今までやってなかった孤独や孤立に関する実態調査をしたことくらいだ。

しかし、調査は3年間継続しているが、それを基に実際に何かを分析することもなく放置している(少なくとも分析結果などは政府のホームページには一切あがっていない)。

というわけで、私は勝手にローデータをベースに、いろいろと数字を検証してきたわけだが(1回目の調査結果をベースにした分析は「居場所がない人たち」に詳しく書いている)、今回最新の2022年の調査結果をベースに改めて、「孤独問題とは何か」について記事化した。

それが以下である。ぜひご一読いただきたい。

結論からいえば、孤独や孤立の問題を「同居人や友達がいない」とかの人のつながりやコミュニケーションの問題にしがちだが、調査から浮き彫りになるのはそんなことではなく、「孤独とは経済問題なのだ」という発見であるということだ。

客観的にデータを見ればそういう結論になる。

足りないのは、家族や友達や会話ではなくお金である。孤独だから貧困になるのではなく、経済的ゆとりがないことがすべての始まりであり、金がないから行動を抑制し、外出する機会も人と会う意欲も失っていくのだ。

「貧すれば鈍する」といわれるように、「金がない」という環境は、人間のあらゆる行動を委縮させる。何もしたいと思わなくなる。失敗したくないと思う。面倒くさいと思う。自分の姿形すらどうだっていい。そんなもの気にしていられないと思う。自分のことすら気にしない人間は他人のことを気にしたり、心配したりする余裕もなくなる。そうした状態に陥ってしまうと思考の視野が狭くなる。精神的にも閉じてくる、病んでくる。

https://president.jp/articles/-/84156?page=4

そうした状態を「孤独に苦しむ」ということだとするならば、それを解決するのは個々人のコミュニケーション力や性格など属人的な問題ではなく、人とのつながりがあればいいって話でもなく、せめて毎日を心配しなくていいお金という経済環境の話だったりするだろう、と。

金さえあれば何でも解決とかアホな事を言うつもりはない。また、「孤独に苦しむ人たちの助けになりたい」などと人とのつながりをお膳立てするNPO団体が何かやるのは結構なことだろう。否定はしない。そういう「人のつながり」を求めている人もいるだろうから。

しかし、「人とつながる場」を用意して、そこにアクセスできるという人は、少なくともまだ経済的にゆとりがある方なんだろう。そこに出かけていく気力があるのだから。
または、元々人とおしゃべりするのが大好きな人かもしれない。そういう人にとっては好ましいことだろう。

が、誰もが人としゃべりたいわけではない。誰もが外向的ではない。むしろ、対人関係があることが本人にとって物凄い精神的ストレスになる人だっている。
そういう人だって日々の社会的生活として仕事に行ったりはしている。が、一人の部屋に帰ってきい「ほっとする」って人だって大勢いる。
一人であること、孤独の時間があることがそもそも快適な人だっている。

言いたいのは「孤独という主観的なものを安易に悪者扱いにするのではなく、客観的に「苦しませているのは何か」という視点を持つことである。

今後間違いなく単身世帯化が進む中で(結婚しても最期は一人)、貧しくても家族や友達がいればいいよねというふわふわした話ではなくなってくる。

そもそも孤独なんてものは、人間生きていれば常に横にあるものである。病原菌ではない常在菌みたいなものだ。無菌室で生きていく事が大事なのではなく、常在菌として上手に付き合っていくものとしてとらえないといけない。

この本質を前提として議論を始めないとすべてが的外れになる(政府の少子化対策と一緒だ)。

百歩譲って「孤独がタバコやアルコールや肥満より健康をむしばんでいる」というのなら、その孤独の苦しみを生んでいるのは、「金がない」ことであり、だったら真の害悪は増税や国民負担率増や成長しない国内経済の方ではないか、ということになる。

意味のないバラマキや利権のポストや庁をやめて、減税すりゃいいのよ。配らなくていいから取るなという話。減税した方が消費が活性して税収増えるかもよ。

PB正常化とか言ってる間に国民の健康がむしばまれる。遺族年金の改悪とかしたがっているが、家族を失った人からさらに金を奪うような仕打ちは、かえって孤独死を増やすことになるだろう(もしかしたら国の狙いはそれか?)。

孤独と上手につきあいながら生きていくという視点を得るには三木清の「人生論ノート」をおすすめしたい。



長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。